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 朝、ご飯を食べにリビングへ行くと、母は既に仕事に行っており、ご飯をよそってラップしてあるおかずで朝ごはんを済ませる。

 今日は何をしようか……

 そんなことを考えながら、朝やっている夏休みアニメを見てから、出かける準備をする。

 Tシャツにジーンズ。

 今日も暑そうだなと帽子をかぶり、ポケットに財布があるのを確認して家を出る。

 確か、昨日と逆方向の大型書店に、攻略本があったはずと日陰を選びながら歩いていると、何故か着いたのは昨日の古本屋。

「おかしいな……」

 踵を返して、行きたい本屋へ向かっているのに、また着いた先は古本屋!

「なんなんだよ……」

 一応、本屋だから置いてあるかもしれないと店内に足を踏み入れた瞬間、「いらっしゃぁーい」と昨日と同じ気だるそうな声で出迎える店主。

「あの、モンスターデイズの攻略本ありますか?」

「うーん、週間と月間の漫画はあるけど、うちは古本屋だからないっすねぇー」

「分かりました。ありがとうございます」

 よし、これでちゃんとした本屋に行けるだろう!

 そう思って店を出ようとするものの、またもや足が動かない。

 ゲームをやりまくってる俺の脳内では、魔法にでも掛かった気分だ!といくつものゲームの魔法が思い浮かぶが、これは現実だ!と無理やり足を前に出す。

 パリーン!

 頭の中で、何かが割れるような音が聞こえ、店主に目を向ける。

 ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる店主は、半紙に『合格』と書いた紙を見せてくる。

「ふざけんなっ!なんなんだ合格って!」

「まぁ、落ち着きなさいって」

 トン──とおでこを扇子でつつかれ、後ろのテーブルに腰掛ける形となってしまったが、落ち着くも何も無いだろう!

三住みすみ 悠一ゆういち 、16歳。空戸高校一年三組。成績は中の上、中学時代バスケ部。運動神経良し。趣味はゲーム。現在は暇人」

「えっ!?」

「その位はわかるよ。僕は死神だからね。なんなら、寿命も教えようかい?」

 フルフルと頭を横に降り、「し、死神なんているんけないじゃないか。暑さで頭おかしくなったんじゃないのかよ。その内道端で倒れても知らねーぞ!」

「昨日、ニュース見ましたぁ?」

「ニュースって……まさか」

「ご名答ー。お腹が空いたもんで、何か買いに行こうとしたんですけどねぇ、ほら、暑いでしょう?気がついたら運ばれてまして……。こりゃやばいと思ったんすよ。だって、死神ですから、脈とか心臓とか……意識があれば動かして誤魔化すことも出来たんですけどね?もう、暑くて暑くて」

「それで逃げたってこと?ニュースでは警察が探してるって……」

「それは大丈夫っす。朝のうちに皆さんの記憶消してきました。始末書ものですよ……」

「で、それと、俺となんの関係があるんだよ」

「この店は、妖……いわゆる、物の怪と言ったらわかりやすいですか?そんなモノ達の来る本屋なんすよ。なのに、君は二回もここに来て、僕と話をした」

「アンタがなにかしたんじゃ……」

 扇子を横にフリフリとしながらパッと広げて口元を隠してはいるが、目元は笑っているようにも見える。




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