第17話 いざ、初の外仕事へ ウリクルの独白
せっかくの休みをある意味台無しにしてしまったけど、仲間がギルドからゲットした話が面白くなってきたんだよね。
あ、仲間っていうのは俺のパーティの凄腕剣士というべきか、戦士というべきか、ちょっと異常に強いやつのことなんだけどね。
こいつのちょっとおかしなところは、全く自分の強さに無自覚なところなんだよね。もうひとりの仲間の魔法使いのモリネロも、そいつについては同じように思っているに違いないけどさ、まだ1週間のダンジョン探索で、俺たちは第一層の中ほどまでしか行けてないから、現れる魔物もまぁ、そんなでも正直ないよ。それでもね、やつの強さは全然底が知れないのは感じるんだよ。
これまで俺たちが出遭った中で、一番の強敵はトロルだったけどね、あの時にその片鱗が垣間見えたよね。あれはヤバかった、本当に。今も鮮明に思い出せるけど、トロルの危険極まりない腕が迫ってくるのに合わせて刀を合わせてバッサリ、一刀両断だからね。普通、あんな風に斬れないから。あいつ、全然分かってないよな、どれだけ普通じゃないってことが。
とにかく、そいつがさ、この前の休みに外の
で、その仕事はさ、トロルを倒したことで、俺たちパーティが結構戦力ありってことをギルドが公式に認めたから回ってきた依頼って訳で、今回に限らず、これからも似たような
それで具体的に今回の依頼っていうのは、この街から馬車で街道まで出て、そこから3日ほど行った街まで、商人を護衛する仕事。うまくいけばただ、馬車に乗ってるだけで金が貰えるんだぜ。これは楽勝かもな。ただ、往復6日でひとり頭、金貨2枚というのがちょっとね、正直渋いとこだよ。ただ、同じ日数で同じだけダンジョンで稼げるかは分からないし、何より、俺は気分を変えたいっていうのが本音だったよ。
それに今回は、俺たちパーティだけじゃなくて、他にも護衛として雇われている冒険者がいるって話だし、そういう人たちと役に立ついろんな話がしたいし。俺たちはまだダンジョンのこと知らなすぎるし、ギルドも基本的にはダンジョンに挑む冒険者たちを積極的に支援するって感じでもないしね。この前のトロルの一件もそうだよな、こっちから言わなければ報奨金も貰えなかった訳だし、その意味でも俺たちはもっと知らなくちゃいけなくて、それは同じ冒険者から話を聞けたら手っ取り早いってこと。これについては、他のふたりは全然当てにできないんだよね。魔物との戦いでは頼りになるんだけどねぇ…。
とにかく、俺たちは必然的にあの酷い宿屋を出ることになったよ。一度はモリネロが1週間分の宿代を払っちまったから、それを取り戻すのはえらい苦労したけどね。そこはまあ、俺が頑張ったよ。あのおばちゃんはごねまくったし、えらい剣幕だったから、百歩譲って今日、1日分だけ払って済んだよ。ほんと、せいせいするね。これもあって、今回の依頼があって俺は良かったと思ってるんだよ。だって、そうだろ、丸々6日間いないのに宿代を出すってのもおかしいし、もちろん全額出せば、その部屋を俺たちのために取っておいてくれることはできたと思うよ、でも敢えてそこまでして俺たちがあの宿屋にいたいかって言ったらね…。さすがに他のふたりも異を唱えなかったよ、当然だけどね。
最後、今朝はあっさりしたもんだよ。朝起きて、部屋を出て、それでおしまい。そう、モリネロが魔法の鍵をかけなかったのを見て、ちょっとだけここも最後なんだって思ったかな。全然寂しいとかじゃないけどさ、良いところは本当にひとつもない宿だったけど、俺たちがこの街に来てから寝泊まりしたところだから、少しだけ、なんか、な。
俺たちはこうして初めての外仕事に向かうことになった。希望に胸を膨らませてって、感じじゃなかったけど、それでも1週間でひと区切りがついて、また何か新しいことが始まったのは間違いなよな。
でも、ふたりはぼそっと言ったよね。
「この仕事から帰ったら、またあの宿屋に泊まることになるかもですね」
「そうだな」
お前たち、頼むからそういうことを言うなよ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます