だいにわ

 茜色した太陽が、黄金色した水平線に沈んでゆく。この惑星ヴィスパにおいて毎日飽きる事もなく繰り返される、いつもの光景だった。何故水平線が金色かといえば、海が金色だからである。なぜ海が金色かといえば、この星の海は塩を含んだ水ではなく、粘性の高い蜜で出来ているからである。いま目の前にあるこのルタバガの海だけではなく、この星のもう一つの海であるククルビタ海もそうだった。ルタバガの海とククルビタ海の他に、この星に海はない。そして、他にいくらか存在する湖や川も、淡水ではなくやはり蜜に満たされ、蜜が流れているのである。


 しかし、そんな惑星ヴィスパにおいても地球人類の視点から見て『生物』と見なされる種類のものは存在していた。植物があり、動物があった。そしてまた、文明種族だけでも二つあった。彼ら自身の言語は地球の言葉や文字によって表記することは不可能だが、広大な陸地に包まれたルタバガの海とククルビタ海にそれぞれ分かれて暮らすため、それぞれルタバガ族、ククルビタ族と呼称する。


 彼らの姿はよく似ていて、頭と胴体があり手足はなかった。大きく異なるのは頭の部分の色であり、ルタバガ族の顔は白く、そしてククルビタ族の顔は黄色かった。目鼻に相当するものはあったが、これは地球人の目で見ると、顔に穴が開いているようにしか見えない。ざっくばらんに説明すると、ルタバガ族はカブに彫られた人間の顔、ククルビタ族はカボチャに彫られた人間の顔に見えた。そして空洞上になったその頭の中心には灯火のように見える彼らの魂があり、要するに、彼らは二種類のジャック・オー・ランタンであった。

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