03 どうしてか



 偶然がつくりあげた出会い。


 夜の公園で、血まみれの少女と遭遇するという奇異な状況。


 けれど、それは僕に不思議な感情をもたらした。


 普通ではないことに、日常からかけ離れたその光景が、酷く美しくみえたのだ。


 その日から僕は、その少女と公園で会う様になった。


「また、来たんだね」


 彼女が、ずっとその公園に来ているから。


 僕は、その日から何日も通い続ける。


 死体が見つかったという立ち入り禁止になったその公園へ。


 その行為が、褒められた事ではないのは承知している。


 一般的な常識は持っていたから、おかしな行動をしているという事も分かっていた。


 人から、後ろ指刺されても仕方がないだろう。


 けれど、僕はどうしようもなく彼女に惹かれていたんだ。


 彼女と言う存在は、この醜い世界を照らす。


 唯一の光のように見えた。


 そう言ったら、彼女は「へんなの」と綺麗に笑った。


 かつて血にまみれていた顔で、綺麗に純粋に笑った。


 かざりけも、まざりけもない感情が透けてみえるかのようだった。


「私は人を殺したのに、おかしいよ」


 そうだね。


 でも。


 なんでか分からないけれど。


 僕の目に映る君は綺麗で、輝いて見えたんだ。


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