02 殺戮病
この世界のどこかには、知らない病気の一つや二つくらいある。
子供じゃないんだから、未知の世界が在る事くらいは知っていた。
中学生にもなるんだから、と。
小さな世界で満足しているような万能感はすでに失われていて、広い世界と自分を比べては憂鬱になったりしていたけれど。
そんな事だから。
その病気を知った時も「ああ、そうなんだ」という感想しか浮かばなかった。
ただそれはまだ、噂の範囲。
極秘で機密。
不思議の域を出ない存在。
よくて人の話しの隅っこにあるような、そんな存在感だった。
それの名は、「殺戮病」。
中学生だった、その時はその程度の存在だった。
後に殺戮病は、ある時一斉に世界にひろがったのだけれど。
その話は、必要ないから語らないでおくよ。
僕が語るのは、まだくすぶっていた頃の、ほんの始まりの時期の話だ。
殺戮病。
それに感染するのは思春期の少女だけ、らしい。
原因は分からない。
のちの時代になっても、解明はまったくなされていない。
殺戮病の大きな特徴は、その名の通り「殺し」をせずにはいられなくなるという点だ。
血を見たくなって、あびたくなる。
一説によると、人の血液に含まれる成分を浴びる事で皮膚から摂取しているとかなんとか言われている。
殺戮病の存在を知った人々は怯え、後の時代でもずっと治療法を模索しているけれど、有効な方法は見つからないまま。
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