第13話 虎牢関の戦い
予想通り穴は存在した。虎牢関関門の上、五十メートル程だろうか。
「基地防空用SAMで先制する。アンジーはドッグファイトやりながらだと、ciws何基制御可能だ?」
「相手の力量にもよりますが本気の戦闘になると四基くらいでしょうか……」
「よし、ciws四基と基地防空用SAMで対空戦闘、地上戦はジャンヌと関羽さんで」
前回同様に、魔物が出てくる前に先制攻撃。
瘴気渦巻く不気味な穴に向かい、三戸は対空誘導弾を撃ち込む。言ってみればハチの巣を突くような行為だ。だが、ハチの巣駆除とは訳が違う。
四連装ランチャーから撃ち出される対空誘導弾が瘴気の穴の中へと吸い込まれて行く。そして穴から聞こえて来る爆発音。さらには魔物の絶叫。
「よし! アンジー。遠慮なしで行こう」
「はいっ!」
アンジーにより自動装填されるランチャーを休む事なく発射し続け、アンジー自身も飛び立ち、至近距離から穴に向かいミサイルを放つ。
炙り出され次々と湧き出る魔物は、アンジーの20mm機関砲にハチの巣にされ、逃れた者はciwsに撃ち落とされる。
攻撃を逃れ、地上に降り立った者は三戸達へ向かっていくが……
「ジャンヌ、関羽さん。もう少し出番は後だ。合図が有るまで待ってくれよ!」
三戸は5.56mm機関銃
敵を引き付ける。構える三戸の左右に、ジャンヌと関羽が控えている。歴史に名を残す英傑が共に戦ってくれる事に、今更ながら心強さを覚える三戸。
「っしゃー! くらえっ!」
十分敵を引き付けての斉射。無数の弾丸をその身に食らい、次々と倒れる魔物の群れ。しかし巣穴を奇襲された怒りで我を忘れているのか、はたまた元々そういう生き物なのか、怯む事なく向かってくる。
しかしアンジーのチートのおかげで弾数無限。負ける要素は無い。
「なるほど。これがミト殿の戦いか。となれば、ミト殿に敵を近付けないのが我らの仕事だな」
「関羽殿。ミトは接近戦もお強いんですよ?」
「ほう? それは是非拝見したいものだ」
「ジャンヌ、『軍神』にそんな事言うのはやめてくれ。俺はしがない一士官だったんだよ」
三戸は熱ダレを起こしたミニミを放置し、89式小銃での射撃に切り替えていた。弾数無限とは言っても、無限に使える程甘くは無かった訳だ。
同じ理由からか、上空のアンジーも20mm機関砲での攻撃は止めており、空中格闘戦をやらかしている。空中格闘戦と言っても戦闘機同士のドッグファイトの事ではない。文字通り、空で殴る蹴るの戦闘をしているのだ。
機動性、運動性、加速性、スピード、パワー。全てにおいてアンジーはファントムのそれなのである。加えて人型になっている事で柔軟性もあるし、ヘリコプターのようにホバリングもできる。翼を羽ばたかせながら飛んでいる魔物など、まるで問題にしていない。
「えいっ! えいっ!」
本人は気合を入れているのだが、周囲が気が抜ける声を出し、隙を見つけて手榴弾をポイポイと穴に投げ込んでいた。その姿はもはやコミカルですらある。その姿を見ていた三戸達は、戦闘中にも関わらずほっこりしてしまう。
「何とも愛くるしいですね、アンジーは」
ブリューナクで魔物を貫き、焼き付くしながらジャンヌが言えば、
「うむ。可憐な見た目とは裏腹に戦闘力はえげつないがな」
関羽も感心しながら青龍偃月刀を振るい、魔物の首と胴体を生き別れにしている。
「そうだろ? 何たって、俺が大事に大事に使ってきた相棒だからな!」
三戸も自慢げに、銃剣格闘で次々と魔物を仕留めていた。
「マスター!! 瘴気の濃度がグングン上がっています!!」
上空のアンジーから報告がくる。言われた通り、周囲の瘴気が濃くなり、身体に纏わりつく大気が重苦しくなってくる。
「アンジー! デーモンを引き摺り出したら地上に叩き落とせ! 飛ばれて巣穴に逃げ帰られても厄介だ! それから携帯用のロケランくれ!」
「
瘴気渦巻く穴から巨大な何かが這い出てくる。徐々に姿を現すその威容。
「鷲?」
「うむ、鷲だな」
「aigle!?」
擬人化した巨大な鷲。そう表現するのがピッタリな外見をしたデーモン。但し、翼が背中に生えており、腕はちゃんと別にある。そして悪魔の象徴とも言える二本の角。右手にはトライデントを携えている。
三戸は咄嗟にフランス語で叫んだジャンヌを見て、自分は一体何語を話しているのか気になったが、今はそんな場合ではないと自分の頬を張る。
「アンジー! 予定通りだ! 叩き落とせ!」
「はい! 地上はお任せします!」
「ジャンヌ! 関羽さん! 地上の雑魚は任せたぞ!」
「「承知!!」」
三戸は指示を出し終えると、後方の基地防空用SAMに駆けて行き、鷲型デーモンに集中砲火を浴びせるのだった。
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