第6話 ジャンヌ・ダルクとブリューナク
「なるほど。そうでしたか……このままでは将来こちらの人類が滅亡する可能性が高いと」
「そうだ。それが影響を及ぼし、俺達の世界の人類が滅亡する。そうさせない為に、俺は神の口車に乗ってここに来た」
三戸、アンジー、ジャンヌの三人は互いの持っている情報をすり合わせ、今後の行動方針を決めようとしていた。どうやらジャンヌは、並行世界で人間を救えば救う程百年戦争の被害が小さくなる、と言われて並行世界に来る決意をしたらしい。
この時点で、あの神様は嘘は言っていないが本当の事も言っていない事は確定だ。ジャンヌには限定的な情報しか与えていない。やはり自分とアンジー無くして並行世界の救済は不可能なのかも知れない。
三戸は苦々しい思いで空を見上げる。見上げた先にあるのはただの天井だが、三戸が見ようとしたのは神のいる次元だ。
「ではミト殿は、共に戦う仲間を求めているのですね?」
「ミトでいい。俺は君と違って六百年も前の時間軸に飛ばされた。しかも近くに君がいる。これは君を仲間にしなければ話が進まない、そんな気がする。そして俺は君以外の
三戸は己の考えを包み隠さず伝えた。
「分かりました。私は魔物の脅威がなくなるまでフランスを離れないでしょう。それでもよろしければ、こちらからお願いしたいです、ミト」
「なら話は決まりだな。コイツは俺の相棒のアンジーだ。宜しく頼む」
「マスターのアシストをさせていただいております。アンジーと申します。宜しくお願い致します。ジャンヌ様」
マスターである三戸と同格のジャンヌに対して、謙る態度のアンジーにジャンヌは苦笑する。
「アンジー、私は元々農民の娘。そんなに丁寧にしなくてもいいのよ? 歳も同じくらいの様だし、友達になってくれたら嬉しいわ」
「はいっ!お友達ですね、ジャンヌ様! 私もお友達が欲しかったです!」
ファントムが就役したのは四十年以上前なのだが、それを口に出さない位には空気が読める三戸だった。
「そうだ、私のパートナーを紹介しますね、ミト。私のパートナーはこの槍です。生前使っていた時は、質は良いのですが普通の槍でした。ですが戦場を共に駆け巡ると愛着が湧くもので……私はこの槍にブリューナクと名付けました。ミトがアンジーと名付けたのと同じですね」
ジャンヌがブリューナクをテーブルの上にゴトリと置くと、ブリューナクがキイイィィンと鳴いた。音叉を叩いた様な共鳴音に近い。特にジャンヌはブリューナクを叩いたりはしていない。ブリューナクが自分で鳴いたのだろう。
「マスター、ブリューナクさんが宜しくと言っていますよ?」
アンジーが通訳 (?)をする。武器同士、意思疎通ができるのかと妙に感心する三戸。
「そうか。こちらこそ、お前とお前の主人には世話になる。宜しく頼むよ」
槍に挨拶するのも何とも妙な感じがするが、ジャンヌは凄く嬉しそうだ。ブリューナクがまた鳴いたが、今度はジャンヌが三戸に通訳をした。
「私の事を宜しく頼むと言っています。ブリューナクも話し相手ができて喜んでいますよ?」
「ブリューナクの能力はあの炎なのかい?」
今後共闘するにあたって知っておかなければならない事である。全ての能力を聞き出すつもりは三戸には無かったが、それでも仲間が何を出来るかは把握しておかなければならない。
「はい。恐らく私が火刑に処された事が要因と思われますが、経過はどうあれ、ブリューナクは敵を焼き尽くします。そしてブリューナクを持った私の身体能力は、人間の限界を超えます」
「ありがとう。心強い仲間ができて嬉しいよ。それじゃあ、俺とアンジーが出来る事なんだが……」
当然の事だが、ジャンヌの時代には飛行機が存在しない。アンジーの事を説明するのも一苦労した三戸だったが、細かく説明するより大雑把な説明の方が真理を突く事もあるらしい。アンジーの説明でジャンヌはイメージ出来たようだった。
「大きな鉄の鳥がアンジーで、ミトを乗せて空で戦っていたのですね! 凄いです!」
概ね正解なので良しとした三戸。
ある程度だが互いの能力も把握し、今度は魔物の情報収集をしなければならない。どうやら魔物はドーバー海峡の方からやってくるらしいのだが、陸上戦力もいるのでイングランドから海峡を越えて来るとは考えにくい。
「ブリテン島では魔物の被害は出ていないのか?」
「分かりません。海を越えて来る者がいないので……」
行ってみるしかない。三戸の決断は早かった。神様は並行世界と魔界の空間が繋がったと言っていた。ならば海峡に魔界に繋がる空間がある可能性もある。
「行こうか、ドーバー海峡へ」
並行世界の人類衰退を止めるべく、三戸とアンジーは、
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