第48話第九章9-4引けない戦い

9-4引けない戦い



 オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。



 悪魔を名乗るアガシタという少女から受け取った「魔王」が作った最初の「鋼鉄の鎧騎士」の十二体。


 こいつは現存する世界各国の「鋼鉄の鎧騎士」の元祖となったもの。

 しかしその性能は後発の「鋼鉄の鎧騎士」をゆうに超え、現在の常識では考えられない程の性能を発揮する。


 それはどんな攻撃にも耐え、装備している武具は刃こぼれする事も無くあまたの「鋼鉄の鎧騎士」を葬ってもその切れ味を鈍らせることは無い。

 そしてその装甲はそれほどまでの破壊力を持つその剣でさえ受け止め、傷一つ付けない程強固なものだ。

 勿論対魔処理もされ、並の魔導士が使う魔術など全くと言って良いほど効かない。

 いや、大魔術でさえこの機体の装甲を貫ける物は無いだろう。


 そんな完璧とも呼べる「鋼鉄の鎧騎士」だが必ずしも完璧には届かない。



 「ぐはっ!」


 俺は「鋼鉄の鎧騎士」の内部で受けた攻撃の衝撃波により吐血していた。


 攻撃も魔法も全てはじき返すこのオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」だが衝撃波の伝達を防ぐ事は出来なかった。

 


 『しぶといな、これでもまだ中身が死なぬか? ならば!!』



 アルファードのオリジナルは地面に膝をついた俺の機体の首に手をかけ持ち上げる。

 そして俺の機体に掌を何度も打ち込む。



 どっ!


 どっ!


 どどっ!!



 機体には全く傷を負わせる事は出来ないその攻撃は、しかし確実に中にいる俺にダメージを与える。



 「ぐあっ! ぐっ! ぐおっ!!」



 『機体が壊れなくとも中身が持つまい! さあ、くたばるがいい!!』


 アルファードの奴は最後とばかりに俺の「鋼鉄の鎧騎士」を宙に放り投げる。



 『死ね! 三十六式が一つウォーハンマ―!!』



 奴が両の掌を俺に向けて打ち込んでくる。

 だがその動きが鈍る。



 どんっ!



 『なにっ!? なんだこれは!?』



 打ち込まれたのは片手の掌のみでそれだけだとたいした衝撃ではない。

 連続で両の掌を打ち込むことによって衝撃波を発生させるこの技は片方しか俺に打ち込まれなかった?



 何が起こった?



 ぼやける視界でそれを見ると奴の「鋼鉄の鎧騎士」に地面から生えた大量のツタが絡んでいた。



 『ええぇぃい、精霊魔法か! しかしこんなものでは!!』



 ぶちぶちぶちっ!



 アルファードの「鋼鉄の鎧騎士」は力任せにそのツタを引きちぎる。


 

 「アイン! しっかりしろ!!」


 聞こえたその声は正しくザシャだった。

 彼女は近くの建物の上で手をかざし更にアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」を拘束する為に精霊魔法を使っていた。



 『ぐっ、逃げろ‥‥‥ザシャ‥‥‥』


 何とか声に出し俺はそう言うがザシャはいまだアルファードに対して精霊魔法を使い続けている。


 「バカ者! しっかりせんか! 奴の足止めをしている今のうちに体制を整えろ!!」


 そう言いながら大地の精霊まで駆使して奴の足止めを始める。

 俺はどうにか機体のバランスを取り立ち上がらせる。



 『こざかしいわぁ!!』



 アルファードの奴が吠えオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」がうなりをあげて体に巻き付くツタや大地からせり上がっている土くれの腕を振り払う。


 そしてザシャに向かって走り出す。



 『見つけたぞ精霊使い!』


 『ザシャ!!』




 俺はその光景を見て叫ぶのだった。 

 

 

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