第47話第九章9-3炎の中で
9-3炎の中で
それは突然爆発するかのように燃え上がった。
『なっ!?』
炎に包まれる教会に思わず足を止めそちらを見る。
そして俺の「鋼鉄の鎧騎士」が外部の音を拾う。
それはこの街の人々のうめき声だった。
『異教徒は滅する! 我らが女神様の名を騙り他の神を崇めるとは万死に値する!』
そう言って最後まで動かなかった銀色のオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」はゆっくりと立ち上がった。
『アルファード! 貴様なんて事しやがるんだ!!』
『ふん、傭兵風情が我らが高尚なる試練を理解などできまい。この戦いに勝利し今度こそ世界は女神様の名の下に真なる平定を掴むのだ!』
女神の名の下にだと?
ふざけるな!!
そんな理由で人々を焼き殺すのか?
街を一つ潰す気か!?
俺は喉元を駆け上がる怒りの言葉を吐き出す。
『ふざけるな! そんな女神くそくれぇだ!! 女神もガレントも俺が叩き潰してやる!!』
どんっ!
俺はその場で大きく踏み込み大剣をアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」に叩き込む。
がいぃぃいいんっ!
だが動き出していた奴のオリジナルも素早い動きで剣を引き抜きその一撃を受け止める。
すぐさま剣を引き次なる一撃を叩き込む。
がんっ!
がきぃいいぃんっ!
俺とアルファードの剣戟が交差する。
それは他の「鋼鉄の鎧騎士」たちを寄せ付けずこの広場どころか街中を縦横無尽に駆け回り剣と剣をぶつけ合う。
『くそっ!』
『ふん、野蛮な剣だ! 喰らうがいい!! ガレント流剣技一の型、牙突!!』
一旦間合いを取った奴のオリジナルが左手を差し出しその上に剣の腹を乗せる。
そして半身に構えていたのが爆発するかのように一気に踏み込んできた。
それは正しく一撃必殺。
俺が反応する頃にはその剣の切っ先が目の前にまで迫っていた。
『こなくそっ!』
かろうじて動いた左手のラウンドシールドでその鋭い突きを弾き軌跡をずらす。
そして剣を握ったままの拳で奴のオリジナルの頭をぶっ叩く!
がっ!
どがっ!
カウンターの様なその拳はしかし奴のオリジナルの顔で受け止められてしまった。
『無粋よ! 何と言う野蛮なのだ!! 美しさの欠片も無い。やはり傭兵風情がこの私に立ち向かう事こそ暴挙!』
俺は受け止められたその拳を慌てて引き戻そうとする。
『遅いわっ! ガレント流剣技二の型、二重の刃!!』
叫ぶと同時に奴の剣が振り下ろされる。
だが俺は目を疑う。
振り下ろされた剣が二本に見えるのだ。
『ちっ!』
両手で頭上をクロスさせその攻撃に備えるも奴の振り下ろされる剣の方が早かった。
ガッ、ガガンッっ!
オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」でなければ多分真っ二つになっていただろう。
その振り下ろされた剣は見事に同じ場所に打ち込まれた。
しかしこのオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」の装甲のお陰でその打ち込みは阻まれ事なきを得たかのように思った瞬間だった。
どんっ!
『ぐふっ!』
体全身にその衝撃波が襲って来た。
まるで大槌でぶん殴られたかのような衝撃。
確かにオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」は壊せないが中に乗っている人間はどうだ?
答えは今俺が味わっているこの苦痛だ。
『流石はオリジナル。これだけ見事に我が剣技を受けて傷一つ無いか? だがまだまだこれで終わりではないぞ! ガレント流無手三十六式が一つウォーハンマー!!』
俺がその衝撃に一瞬動きを止めた隙に奴は剣を地面に突き刺し無手の状態で俺の鋼鉄の鎧騎士に両の掌を重ねて打ち込んでくる。
どっ!
俺は避ける事も出来ずそれをまともに喰らう。
手の掌に更に掌を重ねたそれは俺の「鋼鉄の鎧騎士」の胸にもろに決まってしまった。
どどぉっ!
それは一気に俺にその衝撃を伝達してくる。
『ぐはぁっ!!!!』
目に見えないそれは俺の体を鉛の玉かコンクリートの塊でもぶつけたかのように痛めつける。
「がはっ!」
あまりの衝撃に吐いた息に血が混ざる。
そして俺の「鋼鉄の鎧騎士」は一瞬身震いをしてアルファードの奴の目の前に膝を落とすのだった。
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