第41話第八章8-2目覚める者
8-2目覚める者
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を起動させながら先程の反応が気になっていた。
今までそんな事は無かったからだ。
「なんだこの感じは‥‥‥ あの鼓動のようなモノは?」
そうつぶやいても誰も答える者はいない。
『アイン、始めるぞ! 前に出る!』
イグニバルの「鋼鉄の鎧騎士」が前に出る。
ガイジもお荷物のベルギラート、イターシャも動き始める。
俺は中央のポジションの為急ぎ隊列の一番前に繰り出す。
そして俺たちはこの戦場に立った。
向こうも動き出したようだ。
見ればガレントの「鋼鉄の鎧騎士」がどんどんと隊列を成して前に出始めた。
両軍の兵士たちは俺たち「鋼鉄の鎧騎士」に道を開け、戦いの舞台を広げる。
どちらにせよここから先は「鋼鉄の鎧騎士」同士の戦いだ。
魔法援護が何処まで効くかは分からないが普通の魔術では足かせにもならない。
普通の魔法では対魔法処理をされた「鋼鉄の鎧騎士」に対して全く役に立たないからだ。
大魔導士か大精霊魔法使いクラスが出てきたやっとだろう。
その点こちらにはザシャがいる。
彼女の精霊魔法は大精霊魔法使いクラスだ。
『ザシャ、俺たち先攻隊が突撃したら左右からの攻撃を阻止する為に足止めを頼む』
何処にいるか分からないがそう呼びかけると俺の鋼鉄の鎧騎士の肩にザシャは飛び乗って来た。
「足止めをすればいいのだな?」
『ああ、中央が崩れればそこから敵陣の内部を食い破るかのように引っ掻き回してやる。連携が取れなくなればイザンカの【鋼鉄の鎧騎士】でも戦いようはある。派手に暴れまわってやるさ!』
俺がそう言うとザシャは「分かった」とだけ言って肩から飛び降りまた姿を消す。
俺は大剣を引き抜き中央の位置に立つ。
『いよいよか、アイン任せるぞ!』
『ベルギラート殿、イターシャ殿は俺たちが突っ込んで取りこぼしたのを始末してくれ、中央突破できれば後方から本陣の【鋼鉄の鎧騎士】十三機が一気に躍り込む。そうしたら本陣と一緒に左右に分かれたガレントの【鋼鉄の鎧騎士】を撃破してもらう。良いか?』
『了解した!』
『ベルギラート、良いのか? 我らも手前に出てガレントに鉄槌を下すべきでは?』
イグニバルの指示にベルギラートの坊ちゃんは大人しく言う事を聞いてくれそうだがイターシャの嬢ちゃんは不満があるようだ。
イザンカの「鋼鉄の鎧騎士」では軽すぎて正面からの攻撃で押し切れないというのに。
『イターシャ殿にはもっと働いてもらう。俺たち傭兵部隊が中央突破をすれば左右から残りの【鋼鉄の鎧騎士】が群がり俺たちをつぶそうとするだろう。本陣が来るまでそれを押さえるのも重要な役割。本陣が来たらそのまま本陣と合流してもらい大いにその力発揮してもらいますぞ? やってもらえますな、イターシャ殿?』
だがイグニバルが上手くイターシャを口車に乗せる。
本当は足手まといになりそうだから突破して倒した「鋼鉄の鎧騎士」のとどめを刺してもらう訳だが。
『そ、そう言う事なら了解した‥‥‥』
俺は誰にも見られていないので口元にあからさまな笑みを作る。
これで邪魔にはならないな。
さて‥‥‥
『始めようか、このくそったれの戦いを!!』
俺の「鋼鉄の鎧騎士」が大剣を頭上にかかげたのを合図に両軍の笛が鳴り響き開戦が始まるのであった。
* * *
戦場は完全に「鋼鉄の鎧騎士」の為だけに開かれていた。
すぐ後ろに両陣営とも魔導士を配置して支援魔法をかける所までセオリーどうりだった。
ガレント軍の「鋼鉄の鎧騎士」は三角型の配置で横一線に並んでいる。そして情報通り十三機すべてがそろっていた。
『あいつもあの中にいるのか?』
『アイン、行くぞ!!』
俺は一瞬あの手練れがあの中にいるかどうか気になったが今は目の前の事に集中だ。
俺の「鋼鉄の鎧騎士」を中央に左右にイグニバルとガイジが着く。
そしてそのすぐ後ろにベルギラートとイターシャの機体が構える。
既にガレントの「鋼鉄の鎧騎士」たちは陣形を崩さず前進を始めた。
俺は軽く大剣を振ってから先攻隊を引き連れ走り出す。
それを合図にイザンカ王国側の「鋼鉄の鎧騎士」が一斉に走り出し始める。
そしてガレントの方も同じく剣や槍を振り上げながら早足になり駆けだす。
『うぉぉおおおぉっ!』
気合一閃俺は衝突する寸前に強い踏み込みをして「操魔剣」を使いながら素早い動きで剣を振り上げた正面の「鋼鉄の鎧騎士」を切り裂く。
出鼻でいきなり一機倒されたガレント側は驚き慌てすぐに俺の「鋼鉄の鎧騎士」に群がろうとする。
しかしすぐ左右をイグニバルとガイジがガードして俺もすぐに次の「鋼鉄の鎧騎士」に剣を叩き込む。
『うらぁっ! つぶれろぉっ!!』
『こなくそぉっ!!』
イグニバルもガイジも奮戦している。
俺たち先攻隊のお陰でガレント側はその動きを止めここで戦闘を始めようとした。
先行で突っ込んだ俺たちに左右からガレントの「鋼鉄の鎧騎士」が取り囲もうとするがその動きが鈍る。
ちらっと見れば大地から土の手が沢山伸びてガレントの「鋼鉄の鎧騎士」の足元を掴んでいる。
ザシャの精霊魔法だ。
流石にその程度では完全には動きを止められないが動きを鈍くする事は出来る。
俺たちにとってはそれだけでも助かる。
俺はガイジの後ろに迫るガレントの「鋼鉄の鎧騎士」に切り込みその首を落としながら地面に倒す。
『イターシャ! やれっ!!』
ガイジの後ろに控えていたイターシャにすぐに指示を出しすぐにイグニバルと切り結んでいる相手に切りつける。
そいつはほどなく俺たちに倒され後ろに控えていたベルギラートがとどめを刺す。
『これで三つ!』
俺はそう言いながら向かい来る次のガレントの「鋼鉄の鎧騎士」に剣を向けた。
と、その時だった。
がしゃぁんっ!!
イザンカの「鋼鉄の鎧騎士」が俺たちの近くにまで飛ばされてきた。
何事かと思ってそちらに目を向けると正規の「鋼鉄の鎧騎士」隊が右往左往しながら一体の銀色の「鋼鉄の鎧騎士」を倒そうとしている?
いやあれは!!
『ちくしょぉおおおぉぉぉっ!!』
俺は目の前のガレントの「鋼鉄の鎧騎士」を倒しながら叫ぶのだった。
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