第42話第八章8-3もう一つのオリジナル

8-3もう一つのオリジナル


 まるで悪夢を見ているようだった。

 銀色のその機体はイザンカ王国の「鋼鉄の鎧騎士」を易々と破壊していった。

 思わず叫ぶ俺。



 『やめろぉっ!!』



 俺が「操魔剣」を扱って一気に距離を縮め切り込むが俺と同じ大剣がその一撃を受け止める。



 がきぃいいいいぃぃんッ!



 『ふん、まさかその機体がオリジナルだったとは気づかなんだ。せっかくの機体をよくもそこまで汚したままにする。だが、貴様がオリジナルと知った以上こちらもやっと届いたこいつを使うしかあるまい!』


 その声は間違いなくガレントの手練れの「鋼鉄の鎧騎士」乗りだった。

 剣と剣がつばぜり合いになりギリギリと力押しをする。


 『くそっ! アガシタの奴め、裏切ったか!? オリジナルの封印を解きやがったか!? だから神なんざ信じられないんだ!!』



 がぎぃんっ!



 つばぜり合いから一旦剣を弾き、すぐにまた剣を叩き込む。

 しかし奴のオリジナル『鋼鉄の鎧騎士』は俺の打ち込んだ大剣を弾き飛ばす。


 すぐさま距離を取り剣を構え直す。

 すると奴はすぐには襲ってこずこちらを見ている様だ。



 『アガシタ? 何の事だ? この機体はガレントの誇り、宝物庫に残されたオリジナル最後の機体だぞ? この俺アルファード=ルド・シーナ・ガレントの駆る正当な機体だ!! 貴様こそその至高のオリジナル、何処で手に入れた!?』

 

 ジャキンっ!

 

 剣を俺に差し向け、その手練れはアルファード=ルド・シーナ・ガレントと名乗った。



 ガレントだと?

 その名は間違いなくガレント王国のモノ。

 するとこいつは王家の人間か!?



 どんっ!



 俺がその事実に驚いていると、そいつのオリジナルは俺と同様「操魔剣」を使ったかのように一気に切り込んできた。


 『くっ!!』


 すんでの所で左腕についているラウンドシールでその一撃をかわすも火花を散らしながら押し込まれる。

 俺はそのままアルファードと名乗ったこいつに答える。


 『こいつはアガシタってやつから譲り受けた! お前ら女神の秩序をぶっ壊す為にな!!』


 『なんと不遜な!! 女神様の教えは絶対! この世の至高ぞ!? それを壊すだと? 傭兵、確かアインとか言ったな? 貴様、悪魔にでも魂を売ったか!?』



 悪魔か、確かに俺にとっては神より悪魔の方が良い。

 俺はいつの間にか口元に笑みを張り付かせ言い切る。



 『その通り! 神なんざくそっくれぇだ!』



 俺はそう言い切りそいつのオリジナルに剣を叩き込む。

 しかし奴も同じく左手に付いたラウンドシールドで俺の剣を捌く。



 『この痴れ者めが!!』


 『うるせぇ! 神の犬が!!』



 がきぃぃいいいぃぃぃんっ!



 剣と剣がぶつかり合いその衝撃が砂埃を舞い上げる。


 そして俺は内心焦っていた。

 今までの「鋼鉄の鎧騎士」とは全く違う。

 この「鋼鉄の鎧騎士」同様オリジナルの奴の動きは他の「鋼鉄の鎧騎士」のように遅くは見えない。

 そしてその力も気を許せば押されるほど。

 初めて同じオリジナル同士の戦い。

 俺は思わずうなってしまう。


 『流石に同じオリジナルか! だがっ!』



 一旦間合いを取り下段からすくい上げるような一撃を叩き込む。

 鋭く大きく弧を書くように俺の大剣が振るわれる。

 しかし奴は大きく上体を逸らしその一撃を避ける。

 そしてあざ笑うかのように言う。 



 『甘いわっ!!』



 俺のすくい上げるような一撃が天をかざし一瞬動きを止めたそこへ奴の剣が迫る。

 カウンターを狙ったかのようなその一撃は鋭くそして早かった。

 だがそれが狙い。

 盾の付いた左腕は奴のその鋭い一撃を弾きながら左手の平を奴に向ける。

 この距離ならやつも逃げられない。

 そして俺は力ある言葉を口にする。


 『喰らえ! 【爆炎拳】!!』




 俺の必殺技が炸裂するのだった。  

 

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