第233話 つかの間のインターバル? 天才とナントカは高いところが好き
<放送中>
「なんだよこりゃあ……」
サイタマ基地は主要となる大型基地を中心に、中小基地を複数固めた
しかし扱う物の巨大さゆえに修理機にまで回すスペースはなく、大幅な修理を要する機体は基地区画にある専用の施設で一時的に修理を待つ形になる。
そんな人間で言えば病院の待合室にいる患者のようになっているスーパーロボットたちの中に、今日はひときわ異様な機体が並ぶことになった。
無意識におののく様に呟いた係員が見上げるそこには、50メートル級に分類される1機の異形のロボットが佇んでいた。
鋭利的で攻撃的なフォルム。腕から伸びた複数のカッターはまるで怪人の鱗のようで、どこかロボットらしからぬ生物めいたものにも思える。
悪魔。彼が一言でこのロボットを例えるとするならそう表現するだろう。
「ゼッタードラゴン、だったものだとよ」
もうひとり係員が上から流れてきた書類を眺めてこのロボットの正体を同僚に伝える。ただし、彼自身も書類の取り違えではないかと内心で訝しんでいる。
「ぜんぜん違うだろ。あっちはもっとこう、マント付けたヒーローというか」
彼はマントと称したが、セッタードラゴンの飛行能力を担保するゼッターウィングは翼の名を冠しているもののその形状は硬質な材質で出来たマントが近い。
それでもドラゴンは全体にどこか覆面レスラーのような雰囲気を持っており、人が変身するコミックヒーローが好きな彼は密かにゼッタードラゴンがお気に入りだった。
それだけに今の姿は受け入れがたいものがある。これではまるで怪人側ではないかと。
「第一、なんでこんな姿に?」
「敵の攻撃を無効化するために、一度装甲部分をすべて
ゼッター系列の機体は合体時に中枢機構はおろかボディそのものの形状を大幅に変化させ、装甲さえもそのつど形成するという異様な変形システムを採用している。
そのため3パターンある形態はいずれも似ても似つかないうえに、3機あわせた重量さえ形態によって大きく差があるほどだった。
それでも変形とは予め決められたプログラムによって行われるもの。ソフト・ハードいずれかに異常をきたして奇形になることはあっても、このような完全なデザイン変化などありえない。
事前に仕組まれたというならまだしもだが、それだって元のフォルムとあまりにも逸脱しては変化することなど不可能だろう。
「……見た感じ壊れてないよな?」
「分離機のパワーがありすぎて基地の汎用カタパルトが破損したそうだ。また壊されちゃかなわないから、空いてる04基地をこいつ専用にするまでここで立ちんぼにするんだと」
持っている電子書類を指で軽くスクロールさせている同僚から04と聞いて、彼はああと得心する。
サイタマの04基地はかつてジャリンガー・グナイゼナウ・マグネッタという、同じ開発者によって建造された50メートル級3機を担当していた基地である。
だが今の04はすべての専用ロボットを失って空の箱状態。
ロボットの開発者であり04の長官もしていた水瓶という博士も、銀河事件後に事故死している。
彼の開発したロボットの設計図は残っているものの、その機体の特異性からくるパイロット補充の目途が立たないこともあって、今日まで置物となっていた。
サイタマはこの04基地を改修し、暫定的にゼッター用としてカタパルトなど一部の設備を転用する計画である。
「グナイゼナウの連中はともかく、他のパイロットは病院送りだらけだったなぁ」
ジャリンガー4はパイロット4名のうち半数の2名が入院して、退院後も後遺症が残ると噂されている。
マグネッタに至っては全身サイボークのパイロットの両方が体の大部分を失って入院中であり、しかも彼らはおそらく長生きはできないと言われていた。
この話を知っている彼は若者たちの不幸に若干の哀れみを見せる。元気だった当時はいけ好かないクソガキであったとしても、さすがに症状が重すぎて茶化せるものではなかった。
「グナイゼナウのほうは全員憑き物が落ちたみたいに落ち着いたそうだ。ガンマンごっこも辞めたとよ」
04基地のパイロットの多くは奇行の目立つ水瓶博士の毒気に充てられたように性格や行動に問題があったが、彼が死に乗機も喪失すると急速に大人しくなっていた。
件のグナイゼナウのパイロットたちも例に盛れず、以前は無関係な人間に本格的なモデルガンを向けて、射的や早撃ちでからかう悪癖で迷惑がられていた。
かくいう彼もその被害に遭っており、そのときは弾こそ当たらなかったがむしろその事で『オレの腕はすごいだろっ』とでも言いたげな薄ら笑いをするパイロットの少年に気味が悪くなったものだった。
「このまま引退かねぇ。まあどのみち04はみんなヘボだったから、あいつらが辞めてもサイタマの収益に影響は無い」
「今週はどこも散々になりそうだがな。物資はしばらく平気だろうが、問題は
知らず2人は上を見る。簡易な屋根のあるそこでは空は見えない。
まして、衛星軌道は。
<放送中>
世界の都市に向けて発信された第二基地を中心とした異変は、終息した騒乱の片づけに追われる第二基地長官『高屋敷法子』に説明責任という新たな仕事を要求した。
「脳が辛い……」
法子の親友、サイタマのラングやサガに出張っている和美の協力でなんとか急場は凌いだが、今後も経過報告と合わせて対処の説明を続けねばならないことに憂鬱になってしまう。
世界的頭脳にして世界的犯罪者『アウト・レリック』の脱走。これは世界中の指導者たちが悲鳴を上げるほどの大事件である。
なにせアウトはこの閉じられた世界を運営していくために不可欠な技術、S技術の根幹となる部分を開発できる唯一の科学者なのだ。彼女がいなくなれば新技術の開発は不可能となる。
現行の技術は開示されているので、従来の技術だけで建造したロボットを継続運用することは可能だ。
だがこれまでの傾向から年々Sワールドの難易度が上昇している傾向が示唆されており、このままいくと遭遇する敵との戦力差に覆し難い差が出始める可能性があった。
(あくまで今日まで観測した傾向からの推測であって、難度が上がるという確信ではないけれど……)
これまでの少ない観測期間からの試算であり、統計と呼ぶには根拠は薄い。
星に自然と大規模の寒冷期が訪れるように、周期的に増減しているだけの可能性もあった。
しかし、だからといって備えないわけにもいかない。
敵が強くなったからと、向かった端から死んでを繰り返されたらパイロットが居なくなってしまう。
世界的な人口調整の計画は今後も継続されるとはいえ、あまりに死亡者が多いのは未来に差し障りがあった。
それに物資も問題だ。
戦利品は戦うだけでは出てこない。人類が生き残るためにはなにがなんでも敵を倒さなければならないのだ。
……自然環境が回復を見せている現代。現時点でも文明を捨てて古代のような暮らしをすれば人は生きていけるといわれている。
だがそれが出来る人間は少数だろう。
ある日突然、災害や戦争などで突然に文明を奪われて仕方なく技術を後退させる事はあるだろう。
しかしみずから文明の利便性を捨てるなど、極まった自然回帰を謳うカルト教団でもなければ不可能だ。
<高屋敷長官。S・国内対策課の
「あぁ、もうそんな時間かぁ。お通しして」
疲れていても事前にアポイントメントを取っている相手を断るわけにもいかない。せめて軽く身だしなみを整えると法子は長官室内にある応接用のテープルに向かう。
「……お疲れのところを失礼。ご要望の話を持ってきました」
見てくれを整えても法子の気配から疲労を察した
その苦笑はやはりいつもの爬虫類じみた凶相だが、今日は普段の迫力が無かった。
その事で法子もまた
「花鳥ノリアキと
S課によって調べられた地下都市の延長コード。すなわち本来の基地エリアから離れても『基地の区画』として判定されるよう緻密に計算された通路と設備は法子の想像をやや下回る程度の規模だった。
「少しでも中心から離れていればすぐ機能不全になる程度、ですね」
「はい。おそらく自分からはエリアから出ないように戦っていたかと。もしくはそうするよう機械側に誘導されていたんでしょう」
アウト側の繰り出してきたロボット『愚者王ガイサイガー』は元パイロットの法子が動きを分析すると、その行動にやや不自然な挙動が目立っていた。
その理由がこの延長コードの広がりで理解できる。ガイサイガーが十全に活動できるエリアが地下都市内で歪だったからだ。
基地区画の外にS技術製のロボットが出てしまうと途端にパワーダウンを起こし、最終的には停止してしまうという制約がある。
特に最終合体前の状態は顕著だ。
玉鍵の乗るCARSの車両を追いかける飛行ユニットを積んだロボットは、上空からの撃ち下ろしという最高のポジションにいてアタックの機会が何度もあったのに不自然に見逃している。
おそらくパワーの落ちるエリアに近づくのを嫌がったからだろう。
「あのアンドロイドがセントラルタワーや基地内部に気付かれず侵入できたのも、この狭い地下通路から伸びた穴を『物』として移動したからでしょうね」
配線用の穴といった人間ではあまりの狭さに発狂しそうな場所を機械らしく淡々と這ってきたのだと
アンドロイド。法子はその言葉に小さな引っ掛かりを覚えたものの、議論しても仕方ない事だと流した。
――――機械のパーツに人からクローンした脳を使っていたとして、それは人であるかなどここで討論しても無意味であるから。
「それで花鳥君について、てすが」
「
この事件を起こした花鳥ノリアキの動機をざっくりと言うならば、それはスネた子供の理論だと
好きになった異性に相手にされず。周りにも相手にされず。自分とは真逆で順風満帆の兄との差に勝手に傷つき、ひとりで劣等感を募らせた子供。
それが花鳥ノリアキという少年だった。
今の環境から逃げ出したくなったからと、何もかも自分の前からを『消す』事を選んだ身勝手な子供。思春期の少年らしい浅慮な動機。
自殺や失踪という『自分を消す』ことはせず、周りが悪い、社会が悪い、世間が悪いと責任転嫁して正当性をうそぶき、何もかも壊してしまおうと走り出した一種のテロリストだ。
それでもプライドだけは人一倍だから、敵わない相手に真っ向からケンカも売れない。たとえば自分より体格の良い兄と殴り合う勇気さえ無い。
子供、いや小物か。よく少年漫画に出てくる己の人生を嘆き、そんな目に合わせた世界を嘆いて勝手にすべてを破滅させようとする迷惑な愚者だ。
だが自分にそんな力が無いくらいは自覚していて、それでまた悶々と世の中を呪っている。花鳥はそんなどこにでもいる暗い少年だった。
そうして鬱屈していたところを、アウト・レリックという邪悪な大人に絡めとられるまでは。
サイタマと第二都市を巻き込んだこの騒動は、そんな十代の子供に起こりやすい動機と誘惑、そして与えられた力によって巻き起こされたのだ。
花鳥にとっても都市にとっても最悪だったのが、彼に目をつけてきた邪悪な大人がこの世界でとびきりの影響力を持つ魔物だったことだろう。
「悪いのはアウトです。あれは最悪の人格破綻者――――魔物ですよ」
魔物。あのピエロは魔物だと法子は怒りを募らせる。
(いえ、もっとね。もっと多くの事件にアウトは関わっている)
例えば法子が第二基地に着任する前に太陽桃花の起こした、ファイヤーアークの改造の件とてアウト・レリックが手掛けたもの。
その後に再びあの忌まわしいロボットを再建し、人の脳を搭載してパイロット以外が操れるようにした銀河の事件もアウト・レリックの仕業。
もしかしたら表面化していないだけで、あの狂人はもっともっと多くの恐ろしい事件に関わっているかもしれない。
「確かに。地下に隠されたラボのいくつかには正気を疑う光景がありました。脳だけ摘出したクローンの死体置き場など最たるものでしょう」
クローニングするにしても脳だけに限定するより、いっそ体まるごとのほうが調整の面倒が無いということだろう。
頭蓋を切開された少年のクローンの体は、発見されただけでもその数は10体にもなっていた。
すでに処分された死体があるとすれば、それ以上の数になるかもしれない。
「発見された予備らしいクローン脳は保管していますが……あまり長く持たないようです。個人的には起動させずに、このまま死なせてやったほうがいいと思っています。花鳥ノリアキの記憶を転写しただけなら大した情報は持っていないでしょうしね」
法子は目を瞑り、口を開かず小さく頷いた。
それはクローンを死なせる決断を
もっとも、その決断を法子がする法的責任が明確なわけではない。それを知っている
「それと高屋敷長官殿。S課として、いえ私個人を含めて謝らせていただきます。お預かりした少女の身柄を守れなかった事。言い訳のしようがありません。申し訳ありませんでした」
席を立ち深く腰を折った
「顔を上げてください
S課は地下の調査のために人手を欲し、つい拘束しているブリテンの少女に張り付ていた監視まで減らしてしまった。そこを掻っ攫われた形である。
思えば意図的に呼び込まれたのだろうと
同じく第二基地でも敵から鹵獲した機体が奪われた。こちらはS課よりはるかに簡単だったろう。保安の監視付きとはいえあのロボットの調査メンバーにはピエロもいたのだ。
「……アウト・レリックの件はどうでしたか?」
許可を得てソファに座り直した
「身柄の確保しか認められませんでした。生存に影響が無く、頭が正常に働くことが最低条件です」
殺害は論外。死なない程度の傷害には目を瞑るが科学者としての価値を落としてはならない。そういうこと。
「あんなのを生かしておかなきゃいけないなんて……」
人類社会という大きな視点で見ればこれは正しいのかもしれない。だがあのピエロの積み上げてきた罪を見ると、そんな判断に法子は反吐が出る思いだった。
「後の問題はアウト・レリックのいる場所に辿り着き、生きたまま捕らえて地球に帰還する手段ですねぇ」
S課の課長、
赤道にある打ち上げロケット施設を経由せず、掘り抜かれた岩盤を通ってサイタマの空へピエロは逃げた。
敵から鹵獲した巨大ロボット『エディオン』に乗って。
「どうやら敵のロボットは『基地の縛り』が無いようです。それだけでも厄介なのに――――あれは危険すぎます」
S技術を使ったロボットは強力無比。だがこちらの世界で動けるのは基地区画内のみという制限がある。
パワーダウンの仕方に多少のバラつきはあるもののサイズの大きい機体ほどこの制限は顕著であり、合体すると100メートルにもなるエディオンは分離機状態でも衛星軌道まで飛ぶことなど出来ないはずだった。
だがエディオンは重力を悠々と振り切り飛び去っている。あのロボットには人類側のルールは通用しないと見ていいだろう。
……つまりそれはSワールドで活動する戦闘力を持つ機体がアウト・レリックの戦力となったという事。
現行の技術で作られた兵器など、どれだけ送り込んでも物の数ではないだろう。まして宇宙では行使できる手段さえ限られる。
「これが単なる山城での籠城なら、そんなもの干上がるのを待つだけなんですけどねぇ。相手にはふたつの脅し文句があるのが厄介です」
どこぞの誘拐犯が建物に籠城した程度なら気にすることはない。こちらは24時間監視し続け、相手が疲労と栄養失調で参ったところを突入すればいい。
要人が人質なら食料の要求などされて長引くだろうが、それだって永遠にそんな状態は続けられない。いずれ犯人が隙を見せて鎮圧できるだろう。
だがアウト・レリックは自分自身が人質と同義。人質管理の手間さえない。
すでにあのピエロは自分を死なせたくないなら物資を送れと、各都市に厚顔な要求してきていた。
さらに相手にはこれまでSワールドで遭遇した敵の中でもとびきりの、とてつもない力を秘めたエディオンという動く大砲がある。もしその力の一端でも地上に向けられたら、都市は地獄絵図となるだろう。
しかしながら手に入れた力と価値に対し、ピエロの要求は淡泊なものであることが各都市の為政者たちを混乱させていた。
アウトの言い分は『研究の邪魔をするな』。それだけである。
後はせいぜい要求した物資を送るようにという命令くらいだろう。
これがもし世界征服や滅亡といった極端なものだったなら、もっとシンプルだったに違いない。
アウトを人々共通の敵として、都市間の思惑を超えて団結する事が出来たろう。
あるいは禁じ手とも言えるサイタマの切り札、『テイオウ』を使ってピンポイントで殺害するさえ満場一致で許可されるかもしれない。それを見越しての欺瞞だとしたら大した役者である。
ただ、テイオウの使用について誰からも話が出なかった事を法子は安堵していた。
あの決して動かすべきでない抑止力を使うということは、強くて優しいひとりの少女にまた殺人を犯せということだから。
「なんであれ、あのピエロの研究なんて碌なものじゃないでしょう。一刻も早く止めなければいけません」
その認識は
そしてそれは他の都市の権力者も同じであり……それでいて法子たちとは少しだけ異なると2人は確信している。
――――もし第二都市という地下の金庫から逃げ出したそれを、ひとつの都市が捕らえることができたなら。
アウト・レリックを自分の都市に確保できれば、S技術において世界的に優位に立てる。あのピエロは人格はともかく人材的な価値は計り知れない。
さらにアウトが持ち出したエディオンも確保できればどうなるか? なんの制限も無い人類を超える超戦力を、ひとつの都市が手にする意味は?
絶対的な強国の誕生だ。
それは過去から常々現れる、国の統一を謳う夢想家たちによっては悲願であるかもしれない。
だが、本当に人類はそれを求めるべきだろうか?
(私はそうは思わない。人がたくさんいて人種もたくさんいるのは、生き物として多様性が必要だからよ。何もかも力で塗り潰すような統一なんてバカバカしいわ)
この場で法子がどんな考えを持っていたとしても問題には関係は無い。共通認識はただひとつ。
アウト・レリックを止めなければならない。
あ゛ー首痛え。首っ
朝飯が少なかった事もあって戻ってきたら猛烈に腹が減った。都市の事やピエロの事、ゼッターの事はとりあえずうっちゃって飯だ飯。
……どうせ都市同士の駆け引きやら災害復旧やら色々あって、しばらく何もできないだろうしな。第二かサイタマに呼ばれるまでは好きにするわ。さすがに疲れたしよ。
「ミミィ、カイワレ残すなよ」
「えー」
それっぽっちを避けるな。カイワレとツナとダイコンをマヨで混ぜたサラダだ、1本1本みみっちく取り除こうとしてんじゃねえよ。むしろ一緒に食えば辛味が出てうまいぞ。
こいつもアスカと同じで食わず嫌いが多すぎる。一度食っちまえばわりと平気ってものばっかじゃねえか。
肉料理にダイコンサラダは相性がいい。ダイコンの消化酵素が肉の重たさを解消してくれる。
《未成年マミーは大変っスね》
(誰がマミーだ。こんなデカいガキこさえた記憶は無えよ)
クソ面倒な敵を倒してゲートから戻ってきたら、初宮たちから除け者にされたミミィがいじけてやがった。なんか厳しい事を言われたようだな。
まあ言いたい事を言えないほうが不健全ってもんだ。お客さん扱いから昇格したと思っとけと励ましたら、コロッと機嫌が直っちまったよ。メンタルが強いんだか弱いんだが。
「鍛え直すわよ……」
「うん……あ、マヨサラダおいしい」
「ダイコンサラダだ(。マヨラーはなんでもマヨ主体にしやがる)」
骨までクタクタって顔で昼飯を食う2人は老人みたいにプルプルしてる。ゼッターの加圧に耐えるために筋肉が疲れ切って痙攣してんだろう。
それでも初宮はまだ食欲があるから意外に体力あるな。アスカは好物の豚肉さえ箸が遅い。先に食べやすい大きさに切ってやって正解だった。
今日の昼はトンテキ。筋肉使ったらやっぱ肉だろ。豚は牛より安くてしかも疲労回復にいいんだ。トンカツと迷ったが今日は揚げ物はめんどくせえからパス。
―――――これから世界の決定がどうなるか知らねえ。だがあのピエロに落とし前だけはつけさせる。たとえそれで犯罪行為でも、もう知ったことかよ。
でも今日はもうダメだ。このまま暴れ続けるには体力が持たない。悔しいがちょいと休憩だ。
何をするにも体力がいる。そして体力が戻ったら行動開始だ。
ピエロ、オレがオまエを殺シテてやルよ。ソシてそノ次は――――
《いっそはっちゃんをもっと食べさせて、太ももムチムチにしようZE。どこにでもいる平凡な田舎娘設定なのに赤いホットパンツがパッツンパッツンでやたらエロい娘くらい》
(どこにでもいる平凡な田舎娘が赤いパッツンパッツンのホットパンツなんて穿かねえよ)
――――次は……次? ピエロで終わりだろ?
……オレは誰をこんなに憎んでるんだ?
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