第154話 裁けない存在? 変人科学者アウト・レリック
(シミュレーションの設定を間違ったか? 反応がやたら鈍いぞ)
軽くアップしてから乗り込んだ
明らかに遅いってほどではないが、こっちの10の操作に対して9や8までしか追い付いてくれない感じだ。
《んー、記録を見る限り設定値も反応速度も、実機と同じくらいだよ。厳密にはシミュレーターのほうがちょっとだけ速いくらいかな。あくまでコンピューター側の計測上の数字で、人の神経で体感できるレベルじゃないケド》
(気のせいか。ゼッターの反応速度と機動力に体が慣れて、感覚がバカになっちまってるのかもしれん)
乗ったロボットの違いで挙動に違和感があるのはいつものことなんだがな。今日はとりわけおかしく感じる気がして変な気分だぜ。
《まあ
空をびゅんびゅん飛べる高機動ロボットと、まったく飛べないロボットでは移動できる距離が段違いだからなぁ。こりゃ感覚を戻すのにしばらく掛かりそうだ。
「リロード!」
両腕部に搭載されたスピードローダーを使い、撃ち切ってスィングアウトした2丁の
左右それぞれ6発の回転弾倉へと、腕部内側の装甲を開いて伸びてきた装填機構から1刺しで予備弾が送り込まれる。
側面に回り込まれていたスーパーハイドザウルスは、どうにかこちらを正面に捕らえようと旋回するが、旋回というものは敵の速度が自分より速いほど、そして近い距離にいるほど厄介なものだ。
旋回する際に苦し紛れに尻尾を振り回してくるが、その攻撃はもう実機相手に見ている。大質量をブン振すために踏ん張る予備動作が加わるから丸わかりだ。
初戦では金属の尻尾を用いた薙ぎ払いは見かけより早く強力だと思ったが、冷静に観察すると攻撃というより『
そしてどれほど強力な武装を施していても、撃ちたい砲門が相手を向いていなければなんの意味も無い。
リロードした全弾を固め撃ちして側面のミサイルポッドをノックする。これで2度目。すでにポッドは変形し、亀裂から中身が露出している。
あともう1回フルで撃ち込めば外殻が完全にひしゃげ、収まっているミサイルがヤツの首回りで誘爆するだろう。
《おっと、ここでリロードにトラブル。
(チッ、ただでさえ使える武器が少ないロボットだってのに。酷え縛りだ)
実際に使えなくなったわけじゃない。これはスーツちゃんが訓練のときたまにオレに課す課題だ。最初から縛りを入れたり、アクシデントと称して途中から追加することもある。
おかげさんでオレのトラブル対処訓練はバッチリだよ、チクショウ。
実体弾形式の大砲なため反動が強烈で、基本的に脚部を地面に固定してから放つ必要がある。
だがいくら旋回に難のあるこのトカゲ野郎でも、さすがに立ち止まったらマズイ。
こっちは腰の可動域を生かして横を向いたまま攻撃しつつ、チョロチョロ逃げ回っているから何とか躱せているだけであり、大砲を撃つためドッシリと構えたら向こうも旋回が追い付いて、1発くらいは撃てるくらいの隙が出来ちまう。
《さあどうする低ちゃん? 降参かニャ?》
(誰がっ)
ブーストジャンプを起動。脚部と背面に備えられた跳躍用のノズルを吹かして跳び上がる。
こいつ単体では合体シークエンス以外での
加えてロボットの操作モードをショートカットで
その隙間に
胴体ピタリ――――すなわち
「ファイヤ!」
<放送中>
「……
感嘆、もしくは呆れたような声を出した少女は槍先切子。身長のかさましのためにやや子供っぽい髪飾りで頭髪の一部をチョコンと立てている。
シスターズチームの中でもフィジカルに優れる彼女は、基礎訓練のノルマを早めに終えて休憩に入っていたことで、たまたま玉鍵のシミュレーションと時間が被り見学することが出来た。
エース目当ての対戦申請が殺到する中、久しぶりの
その内容はガンドールで初めて出撃し、スーパーハイドザウルスと対峙したときの再現である。
ただし今回は4機チームで出撃して最後はガンドールとなって戦った実戦時と違って、分離機の
10メートル級の分離機としては比較的戦闘能力の高い
実戦と違って不意打ちを受けなかったこともあるだろう。玉鍵は最初から相手のもっとも苦手とする間合いに素早く張り付き、機械の竜がどれほど暴れようと冷静に距離と立ち位置を維持して攻撃を行う。
思うように相手を捕らえられずに、ただただ右往左往する鋼鉄のテイラノサウルス。どれだけ砲門を動かしても相手は端にも引っかからず、強引にかみ砕こうと金属の牙を剥いてもするりと側面に回り込んでしまう。
向けられた者を絶望させるほどのその巨大なあぎとでさえ、もはやコミカル路線のカートゥーンのように滑稽であった。
「
横で切子の感嘆に言葉を付け加えた金髪の少女の名は、キャスリン・マクスウェル。
可変ロボットのワイルドワスプタイプのみで構成された、5機編隊で戦っているチームのリーダーである。
切子とは小学校時代にクラスメイトであったことがあり、気の合う友人とまではいかないが、多少は話す仲だった。
「なんであの距離で尻尾のスィングが分かるんだろ? あんまり近すぎると図体のデカい敵が相手だと、こっちのメインモニターが敵の胴体の映像で埋まっちまうのにさ」
シスターズチームは5人編成の合体ロボットで戦うチームだが、状況によっては分離機のまま戦うこともある。そして分離状態で切子の受け持つポジションは前衛。
玉鍵が使っている
どちらかと言えば前衛と言うより、機動力を生かした側面攻撃を担う機体とはいえ、近距離戦主体であることに変わりはない。
相手は群を抜くエースとはいえ、凡人の自分にも参考にできる部分があるのではないかと考えた切子は、自身の7倍もの巨体を誇る恐竜を翻弄する細身のロボットを観察していた。
「1度戦っているし、スーパーハイドザウルスのクセを見抜いているんじゃないかしら」
「初戦のときもあんな感じだったじゃん。結局1回もクリーンヒットを貰ってないんだぜ?」
玉鍵が実際にハイドザウルスタイプと戦ったのは2回。1度目はBULLDOGで50メートル級と。2度目はガンドールチームとしてハイドザウルスの強化型と思われる、70メートル級のスーパーハイドザウルスと。
初戦ではハイドザウルスの持つ最大威力の武器、大型ビームの照射に背中をカスられているものの、それ以外では一切の攻撃を受けていない。
2戦目のスーパーハイドザウルス戦においては、ビームの照射前に砲口を潰してさえいた。
「……そういえばタマは
過去にキャスリンは玉鍵たま、
戦闘後の軽い談笑の中で玉鍵が口にした事の中に、『恐竜型より虫型が厄介』という感想があった事をキャスリンは思い出した。
その後も玉鍵の取り巻きの隙間を縫うような短いタイミングでのみだが、彼女と2人きりで軽く談笑することはキャスリンのちょっとした楽しみになっていた。
今となっては玉鍵と比べることなど出来ないが、キャスリンもまた周囲に天才と言われるくらいの技量を訓練前から発揮していた才人である。
そんな自分が明確に
「やっぱり天才は見てるところが違うんだろうなぁ。切子は虫より固くてパワーのある恐竜のほうが怖いよ」
「シスター2の武装の相性もあるんじゃない? エナジー式のショットガンは硬い相手には不向きに思えるわ」
切子たちの機体のうち、リーダー星川マイムの乗るシスター1と、雪泉シズクの乗機シスター3以外は機体の体格と性能はあまり変わらない。
残りの機体、2、4、5の大きな差異は選択している武装にある。
前衛を担当する切子のシスター2は、エナジー照射にあえて拡散する調整をすることで散弾の特性を持たせたビームショットガンをメインに、ラッキーヒットで簡単に落とされないよう実体シールドを装備している。
どうにも射撃が不得意な切子にとって、とりあえず撃てば攻撃範囲の端に相手を引っかける可能性があるショットガンはマッチしていた。
また攻撃を当てることで多少なりとも相手の動きが鈍らせることが出来れば、シスターズの中で唯一の20メートル級で強力な火器を搭載したシスター3の狙撃を援護できるというメリットもあった。
「まーねー。集束調整して撃てば効くんだろうけど、相手に合わせて切り替えるのって、戦ってると忘れちゃうんだよ」
シミュレーションでは何とか思い出すものの、実戦の空気の中で眼前に敵を捕らえたままガチャガチャと戦っていると焦ってしまい、武器の切り替えどころではなかった。
これが仲間に守られた後衛であれば弾種変更などの余裕もあるのだろうが、前衛として常にこちらを攻撃してくる相手のプレッシャーを受けながら、有効打の最適解を選択するというのは中々に難しい。
その操作に気を取られている間に、ガードの隙間から致命打を受けるかもしれないのだから。
「うーん、ショットガンはビーム系より実体弾のほうがいいのかなぁ。ダメージだけでなく衝撃でも動きを鈍らせることが出来るし――――って、なんか急に荒っぽく?」
玉鍵のシミュレーションを映す大画面のモニター。そこで決められた演武のような動きで敵を完封していた
敵に取りついた玉鍵機はそのままハンドガンでダメージを与えていた敵のミサイルポッドに向けて、胴体の大砲を接射で放った。
「
ミサイルの爆発はスーパーハイドザウルスに致命的なダメージを与えたが、同じく至近距離でその爆風を貰った
玉鍵らしからぬ戦法にモニターを見ていた誰もが首を傾げて沈黙したとき、ポフポフという音の籠った小さな拍手がシミュレーションルームに響く。
「時間ピッタリだ。さすがだねぇ」
切子はモニターに注目していて気付かなかったが、切子とキャスリンの後ろに高身長・低身長のコンビが立っていた。
高身長のほうは首のチョーカーが目立つ、筋肉質な褐色の肌をしたクセ毛の少女。野伏ティコ。
低身長側は制服にタボタボの白衣を羽織い、笑みに不敵な気配がある少女。三島ミコト。
「……さすがってのはなんだよ?」
切子がその場の人間の感情を代表するように陰のある声を出す。
彼女らは味方撃ちの犯罪を犯した
この二人は一応ヒカルを止めた側であるため、周囲から面と向かって文句は言われていない。
だが身勝手な理由から玉鍵たまに襲い掛かったチームメイトが出たことは事実であり、その仲間である二人に対してもマイナスの感情が付いて回るのは仕方ないことだろう。
「ボクとの約束の時間だよ。あと23秒。あのペースで戦ってはさしもの玉鍵も時間を超過すると踏んだんだろう。それでさっさと切り上げるために多少の自爆には目を瞑ったんだろうね」
ミコトは周りの目線など気にすることなく、袖余りの白衣を振り子のように揺らして秒数をカウントしていく。
シミュレーターのカバーが開き、シートを降りた玉鍵は目を輝かせて順番待ちをしていた少女と軽く挨拶を交わすと、ゆっくりとタラップを降りてきた。
「――――4、3、2」
「待たせたか?」
「いいや? 驚くほどピッタリさ。急に持ち掛けたのはこっちだし、待っていても良かったくらいだよ」
戦闘で少し暑くなったのだろう、玉鍵は白いジャージの前を少し開けていた。
一見するとただのTシャツだが、見る者が見ればブランド物と分かるシャツを覗かせた玉鍵の胸元。その光景にキャスリンと切子は思わずミコトへの負の感情を忘れて顔を赤らめる。
同じく他のパイロットたちも所在なげに視線を彷徨わせたり、無意味に咳払いをして自分の気を落ち着かせていた。
その中にあって玉鍵の隙のある姿に特に動揺することなく、満面の笑顔を向けたミコトは『じゃあ行こうか』と右手を振って玉鍵を促し、シミュレーションルームを後にする。
「すまん、キャス。
「え、あ……あぁ、OK。またね、タマ」
同じく隣りの切子にも挨拶をすると、玉鍵はミコトに追従しているティコの後ろについていく。
「ちぇっ、振られたか。マイムたちに変な文句言われそうだなぁ」
玉鍵にゾッコンのチームメイト、星川マイムや湯ヶ島ゆたかは玉鍵と会うために自分の訓練ノルマを必死にこなしているだろう。しかし当の彼女はミコトに攫われてしまった。
頑張った先にあるはずだったご褒美が無いというのは、かなり堪えるもの。近くにいた者として『なんで引き留めなかったの』と八つ当たりされそうだと切子はゲンナリする。
「それにしてもあいつら、女のクセにガニ股で恥ずかしくないのかね?」
「自己紹介? あなたもそこそこ開いてるじゃない」
「サイクルマシンで股ズレしたんだよぉ……スパッツ、聞いたことないメーカーの安物はダメだな。買い直すしかないや」
「ちょっと、女が人前でスェットの股を引っ張らないでよ」
おー
ここでシミュレーターの順番が来たキャスリンは『軟膏でも塗っときなさいよ』とぞんざいに言うと、ヘルメットを片手に切子を置いてシミュレーターのボックスシートに消えた。
なお、キャスリン率いるワイルドワスプ小隊は玉鍵と同じ条件でスーパーハイドザウルスと対戦し、5機中3機を失いつつもギリギリで撃破に成功したのだった。
「まずは喉を潤してケーキを食べようか。もちろんこれはボクとティコからの奢りだ。遠慮なく食べてくれたまえ」
連れてこられたのはいつもの有料休憩所。三島もここの常連らしく、学生には場違いな高級感のある空間にあっても特に気負った感じは無い。
テーブルに乗せられているのは6種ものケーキ。それもすべてホール丸ごと。いずれもこの休憩所スペースに設けられたカフェが提供する高価な生菓子だ。
街じゃオーガニックを謳いながらフードパウダーが平気で混入しているクソ高いケーキ店があるなかで、ここのカフェは正真正銘のまともな材料だけで作った生菓子を扱っている。
良心的な店がいつも立ち寄る場所にあるってのは、移動の手間が無くて助かるぜ。
(ここまでドッカリ数があると目移りするなぁ。王道のショート、安定のチーズ、ずっしりのガナッシュ、大人の抹茶、瑞々しいベリー。ケーキとはちょっとベクトルが違うが、アップルパイも何気に好きなんだよ。特に焼きたては香りが良くてたまんねえ、うーん迷うなぁ)
《低ちゃんはケーキの事になると壊れるから困るナ》
(ケーキは菓子の中でも特別なんだよ。なんか良い記念の時に食うイメージがあってさ。ポジティブの塊っつーか)
《ライバルたちにクリスマス会のお知らせを送ってみたけど、誰もこなくて癇癪起こしたアニメの野球選手が飾ってたケーキは?》
(嫌すぎる例えはやめれ)
そもそも寮暮らしなのに他球団の選手を呼ぶ時点でどうかしてると思うぞ、あの主人公は。親に野球しか教えられていない弊害だろうな、ありゃ。
《ハッピバースデーを歌ってビームでジュッ》
(一瞬で死ねることを考えればまだマシなんかねぇ。って、鬱い鬱い。オレのケーキに抱いてる幸せ感を壊そうとすんな)
ええい、迷ってるといらんことばかり聞かされる。一番手前のベリーケーキを貰うか。酸味のあるクリームチーズと合わさった三種のベリーの食感がたまらねえ一品だ。
まあまずはよくわからん銘柄の紅茶を頂くか。そういや赤毛のねーちゃんがなんたらかんたらってSワールド産の希少な茶葉を自慢してたっけな。
あのねーちゃんは紅茶もコーヒーも拘りなく飲むタイプだが、仕事では主に薄っすいアメリカンコーヒーをガブガブ飲んで、プライベートではキッチリ淹れた紅茶を飲むらしい。
家事道具が壊滅していたあのマンションで、なぜが茶器関係だけはきれいだったのはそういう理由のようだ。趣味の面倒は苦にならないのは万人の性なんだろうな。
薫り高いルビー色の液体に口をつけると、三島と野伏ってモジャ毛の女は自分用に取ったショートケーキから苺を摘まんだ。揃って初めに食うタイプか。
「さて、くどくど礼の言葉を重ねても誠意が脂っこくなるだけだから簡潔に行こうか――――ありがとう、玉鍵たま。ヒカルを殺さないでいてくれて」
「ありがと」
いつも不敵というか、他人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべている三島が真顔になって頭を下げてきた。同じくいつもボヤーッとしている野伏が、キリッとした顔になって首を垂れる。
音の出所が少しおかしい理由は人から聞いている。失語症か、いろんなハンデがあるもんだ。
「別にいい。(相手はガキな上に女だしな)それに普通じゃなかった(んだろ、あいつ?)」
「そう言ってもらえると助かる。ヒカルは弱みに付け込まれて、素性のよろしくない天才にちょっとした脳改造をされてしまったんだ。あの行動は決して本心じゃない」
(脳改造って、戦闘中にも聞いたが穏やかじゃねえな。パイロットの話なのに『Fever!!』が動かないってのも奇妙な話だ)
《ミコっちゃんは弱みに付け込まれたって言ってるけど、本人の希望がかなり大きいんジャネ? それなら放っとくと思うナ》
(ケッ、未成年ってところを考慮してほしいもんだ。同意があっても未成年が相手なら犯罪なのが普通だろ)
「……戻りそうか?」
「いますぐ完全に、となると難しい。けど中学卒業前に九分通りなら十分戻す自信があるよ。ただしばらくは不安定になるから変な言動や態度を取るかもしれない。だから見かけても気にしないであげてくれ」
「ヒカル、感情、ぐちゃぐちゃ。でも、病気、みたいな、もの。許して、あげて」
「わかった」
「今後はボクがヒカルの責任者だ。彼女の事で何かあったら保護者のボクに言ってくれたまえ」
こいつに特権を保証していたのは大日本だが、引き続きサイタマが権利を担保している。赤毛ねーちゃんの目から見てもそれだけの価値がある人材ってことなんだろう。
「それで、
「名前はアウト・レリック。かなりエキセントリックな名前だがこれでも本名らしい。名前に負けず容姿も変わっているよ。恰幅の良いピエロ姿の中年女性だ。見たことはあるかい?」
「……いや」
(無いよな? 記憶力強者のスーツちゃんや)
《無いね。記憶力ヘナチョコの低ちゃんや》
(誰がヘナチョコだ、オレの記憶が怪しいのは人の名前だけですぅーっ)
「そうか。まあ元から滅多に外には出ない変人だしね。そんな相手にたまたま出会ってしまうヒカルは運が無い」
「そいつは裁かれないのか?」
「レリック、は、外交、特権、みたい、な、もの、を、持って、いる、の」
「多岐にわたる特許を持つ天才科学者でね。国際的にも希少な人材ということもあって、多少の犯罪行為では捕まりもしないんだ。元より法の正義なんか期待できないだろ? こちらの持っている権利を使って接触しないようにするのがせいぜいだったよ」
《急な革命だったし、法律関係はまだ手付かずだもんゲ》
(この辺は赤毛ねーちゃんの今後の統治に期待するしかねえな)
別に独裁=悪と決まってるわけじゃねえ。上の節度順守と末端の引き締めが出来てりゃなんとかやっていけるだろうさ。
「君なら大丈夫だろうが、念のため警告しておこう。アウト・レリックを殴り殺したりはしないほうがいい。さすがに国際問題になる。彼女がいないと今のこの世界は立ち往生しねないからね」
(? そんな重要なやつがなんで一般にいるんだ? というか人ひとりに大げさじゃねえか?)
《アウト・レリックを検索ぅーっ………あ、なるほど》
(何か分かったのかい? 勿体ぶらずに教えてくれや)
「彼女はSワールドの技術の根幹となる基礎部分をプリマテリアルで構築できる唯一の人間――――悔しいが、これはボクにもまだできない」
スーツちゃんからの返答より早く、ケーキのクリームだけをこそいで口いっぱいに含んだ三島が答える。甘いはずの口内にひどい苦みを感じた顔をして。
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