第71話 年上のお姉さまと朝チュン(プレイ内容、ロボ談義オンリー)

<放送中>


「うん……うん……分かった。こっちは大丈夫だから、うん。お休み」


 端末の通信を終えた初宮は、通話中に溜め続けた小さな溜息を、大きな大きな溜息にまとめて吐き出した。


「由香、玉鍵さんどうだって?」


 リビングのソファーで落ち着きなく足をプラプラさせていた友人は、不安気な声色で初宮に内容を聞いてくる。寝間着代わりにしているラフなトレーニングウェアは、細身で筋肉質な夏堀によく似合っていた。


 夕刻。玉鍵の同乗していた高屋敷長官専用の高級タクシーが何者かに襲撃を受けた。その規模と装備はとても素人犯行とは思えないもので、長官たち以外にも巻き添えを受けた民間人に重傷者が出ているらしい。


「怪我は無いって。高屋敷長官も軽い打ち身くらいで大丈夫。ただ今日のところは基地に戻って一泊するそうなの。もしかしたら玉鍵さんが襲われた可能性もあるから」


 この地下都市で災害、犯罪、いずれにおいても一番安全なのは基地内だ。特に犯罪に対しては国際的な取り決めで強力に守られている。たとえその基地の置かれている国でさえ、国際法を無視した強権は発動できないほどだ。


 犯罪組織を特定し安全を確保するまでの間だけでも、襲撃された二人が基地に身を置くのは正しい防御法だろう。


「もう、まだこんなことするヤツがいるなんて信じられない」


 ほっと安堵したのも束の間、夏堀は眉を強く寄せて愚かな犯罪者を批難した。


 パイロットに限らず基地関係者への犯罪は厳しく取り締まられる。何より『Fever!!』の介入があった場合、それは誰であろうと破滅が確定するのだから、まともな頭の持ち主なら関わる気にもならないはずである。


 だが、世の中には常に一定の例外が存在するのも事実。


 破滅をいとわぬ『異常者』ならばまだ理解できるほうで、中には独自の理論で『自分はこれをしても許される』と本気で考えている常人には理解できない『正常な異常者』も、やはり一定数存在しているのだ。


 そんな『正常な異常者』たちが基地関係者を害することは、自国他国を問わず度々報告されている。その規模は大小様々であり、中には国家規模で暴挙に出た例もあった。


 過去に国家命令の名の下に基地を強引に接収しようとしたとある国は、その国の指導者と背後で暗躍していた組織のトップがいた地域を中心として、『Fever!!』の力によって綺麗さっぱり吹き飛んでいる。


 それでもなお懲りることなく残党が動き続けた結果、大陸ごと天変地異によって破壊され尽くし、今や再生されたその大陸は元より、その地下にさえ人は誰も住んでいない。


 人口が激減した昨今、少なくない予算を投じてまであえて広い土地を利用する必要は無いのだ。


「……もし玉鍵さんを狙ったんだとしたら、そいつらは国どころか人類の敵だよ。絶対に許されない」


 風呂上がりに新緑色のシンプルなパジャマに着替えた初宮。その寝間着が実は玉鍵の使っているパジャマの色違いであることを、夏堀は目敏く見つけていた。単なる寝間着と考えればなかなかのお値段がする代物である。


 エースパイロット玉鍵たまの功績は、もはや国さえ超えて人類全体に貢献していると言っていいほどだ。そして彼女は今後も希少な戦利品をいくつも獲得し、人々の暮らしを良くしていくに違いない。


 つまり玉鍵を害するという事は、そのまま人類の未来に影を落とす行為に等しい。ならば犯人たちは個人への犯罪行為を超えて、人類そのものに対するテロリストと言って差し支えないだろう。


 もはやそれは『人類という国家』の命脈を断たんとする破滅主義者だ。


 ならば人として法で裁くのではなく、生物に害のある物体・・として排除するほうが正しいとさえ初宮は思った。


 人類の敵を相手にその人類側が更生の余地を与えてやるなど、それはあまりにも平和ボケした滑稽な話だろうと。


「―――あれ? ニュースになってる。前はこういうのアングラでしか出回らなかったのにね」


 玉鍵のいない寂しさと不安を紛らわせるため、何を見るでもなく公共放送をたれ流していたリビングに緊急ニュースが割り込んでくる。


 レポーターが紹介する現場には黒煙が燻る車両とその破片が未だ点在しており、公道は完全な通行止めとなっている事を伝えていた。


 近隣の住人の証言からは大きな銃撃が聞こえたという話も飛び出し、初宮たちの想像した以上に緊迫した様子が伺える。


「由香、ストップストップ」


「だ、だって……」


 思わず玉鍵の端末に掛け直そうとした初宮を夏堀が止める。くだんの少女は事情聴取なりで忙しいだろう。幸い怪我は無いというのだし、あまりこちらが騒いでは玉鍵のほうがこちらを心配して落ち着かないに違いない。


「明日には会えるって。それに明日は私たちの番だしね」


 星川たちとの秘密協定によって、玉鍵は一日交代で夏堀・初宮グループと星川たちのグループとで独占することになっている。


 今日は星川たちの番であったので、明日は自分たちの番だからと夏堀は親友を慰めた。


「……今日は一緒に寝よっか?」


「…うん。ありがと、マコちゃん」


 たった一人、玉鍵がいないだけでこの寮は広すぎて寂しい。彼女が放つ目に見えない包み込むような力強いオーラを感じないからだろう。初宮は無意識の中にも玉鍵に守られていたのだと改めて感じた。


 この寂しさにいずれ慣れなければならない。玉鍵は、あの強くて優しい少女はいずれ自分たちのいる一般層を去る事になるはず。


 その事実を共有することなく理解していた二人は、結局どちらも口に出さなかった。


 やってくる辛い未来の話をするには、まだ自分は強くないと思って。






(…………赤? 赤いレース?)


 なんだこりゃ? 女?


《デュフフフフッ》


(邪悪な気配ッ!)


《おはよう低ちゃん。仮眠室のベッドはどうだった?》


(あー……あーあー、ハイハイ。思い出した。敵をブッ転がしたあと基地にUターンして、昨日は仮眠室に泊まったんだっけか。いつまで経っても終わらねえ長官ねーちゃんの喋りダベリを聞き続けてよ。深夜あたりでギブアップして寝ちまったんだよな)


 義理で聞き続けたオレが馬鹿だった。こっちはもう寝たいのに延々とスーパーロボットの偉大さについて喋り続けやがって。平日で人のいないパイロット用の仮眠室で、わざわざ隣に陣取ってきた意味を警戒しとくべきだったぜ。


(底辺のカプセルベッドよりマシとはいえ、まあ良くはねえなぁ寝心地はよ。カーテン付きの2段ベッドのほうにそのまま寝るべきだった)


 何が少し・・お話しましょうだよ、こっちの気のない返事にもぜんぜん頓着せずに話を続けやがんの。

 大人なら空気を読めや。しかも普段は布団で寝てるとうっかり口を滑らせたら、ベッドから寝具を引っ張り出して床に敷きやがって。しかも隣り合わせでふたつ。


(なんで長官ねーちゃんと隣同士になって寝なきゃならんのだ? しかも寝間着も無しに派手な下着丸出しで寝そべりやがるし)


《赤くてスケスケの下着の上下とか、童顔でもそこは大人じゃノー》


 朝起きたら赤いレースの入ったのブラと、『だゆん』って感じにだらしない変形をした乳が目の前にあって何だと思ったわ。


(そりゃこの歳で猫のプリントパンツとか穿いてたら犯罪だろ。サイズとTPOは別問題だ)


 こんな生々しいモン思春期のガキが見たらトラウマってレベルじゃねえわ。あーヤメヤメ。話題にしてるだけでいたたまれねえ。


「……ん、はよう。たまちゃん」


 ありゃ、長官ねーちゃんも起きちまったか。これで眠りは浅いほうか? もしくはいつもの起床時間かね。


「おはようございます」


《草》


(うるせえ。まともな大人なら挨拶くらいちゃんとするわい)


 まだ半覚醒って感じの長官ねーちゃんにこれ以上絡まれないようさっさと寝具を出る。これ元のベッドに戻すのは使ったオレの仕事か? オレだろうなぁ。めんどくせえ。


「た、たまちゃん」


 あん?


 寝具を持ち上げたとき後ろから変な声が聞こえてきて振り返る。なんだよ?


「シャツの下からチラチラ見える下着がすっごいエロッ」


(ブチ転がすぞテメエ! 女が女を変な目で見てんじゃねえ!!)


《低ちゃん昨日はありがとう。スーツちゃん、法子ちゃんと気がメッチャ合うかも。逃げずに助けて良かったヨ。このチラリズムを分かってくれる人はイイヤツだ》


(ツッコミが追いつかないからボケるのは片方だけにしてくれ!)


 確かにあんたら言うこと似てるけどよッ! オモチャにされるこっちの身にもなれやッ。


 替えの下着は基地の売店で買ったが、一泊そこらでパジャマまで買うのもなぁと思ってたところにスーツちゃんがシャツを寝間着代わりにすればいい、なんて言ってきたのはそういう事かよ。


「……それはともかくとして、昨日の話は覚えてる?」


(あん? スーパーロボットに乗るなら専用スーツを着るべきだーとか、コックピットで掛け声の他にポーズを取って必殺技を使うべきだーとか、戦闘BGMを流せるようオーディオ装置をつけたいとか、アホな事しか聞いてねえぞ。どの馬鹿話だ?)


《口裏合わせの事じゃない? 一番初めに言ってたジャン》


 んー? …………大事な話が後から来た馬鹿話に押し流されたっつーの。言われてやっと思いだしたわ。


「殺したのは事実だ。それでいい」


「ダメ! 子供があんな連中の命なんて背負うことはないわ」


 いやぁ殺すに殺したり殺人総数14名。全リスタート含めても一度にこれだけ殺ったのは最高レコードだ。


 けど長官ねーちゃんはこれらの殺人のうち12人、つまりCARSの機銃で殺した分はCARSがやったことにするつもりらしい。その根回しなのか仮眠室に入ってくるまでに方々へ何か連絡を入れていた。


 ただしナイフで殺した分についてはさすがにCARSのスコアには出来ない。だからその分は高屋敷自分がやったことにすると言いだした。


「誤魔化したところでやったことは変わらない。そのほうが一生惨めだ」


 殺して何が悪い? お優しく武器だけ撃ち抜いて動くなホールドアップとでも言えってか? 15人の完全武装の犯罪者にパンチとキックで殺さないように立ち回れとでも?


 あんまりバカにすんなよ? オレはオレの命が大事なんでね。糞野郎どもを相手にして1ミリだって手加減なんてしてやるもんかよ。それで負けたらどうなると思ってやがる。


 たいしたケガもさせずに華麗に悪党を倒すヒーローなんて、現実にはいやしないんだよ!


 負けたヤツは好き勝手に殴られ蹴られ殺される。女は泣きながら犯され、ガキさえヘラヘラ笑いながら殺しやがる。それが犯罪者どものやり口だろうが! なんでそんな連中のために被害者のこっちが無駄にリスクを背負わにゃならん。


《低ちゃん、バイタル乱れてるよ。落ちついて》


 ……オレはそんな連中に情けかけてバカを見たくねえ。銃を向けてきたら殺す―――――いっそ殺す決断ができる事に誇りさえ感じてるよ。


 まず自分だろ? 守るべきはよ。決して犯罪者どもの命じゃねえって。


(チッ、白けたどっちらけた。着替えて飯にすんべ。トーストでも食おう)


「……やっぱりダメよ! たまちゃん、貴方はまだ守られていい年なの。お姉さんに任せなさい!」


 って、おい待て、下着で廊下に出るなバカ! 止まれぇーっ!! そこの猥褻物ぅ! 






<放送中>


「………おはよう」


 始業前、教室中がソワソワと落ち着きない空気の中に、待ちに待っていた鈴を転がすような声が聞こえた。


「「「「「「「玉鍵さん!」」」」」」」「無事か」


 わっと何人もの生徒が大挙して教室入口に集まる。その圧迫感のせいで当の玉鍵が教室に入るのを躊躇い一歩引いたほどだ。おそらく向井の言葉も彼女たちの大声量にかき消されて聞こえなかっただろう。


「ちょっと! 今日は私たちでしょ!」「何よ! こんなときくらいいいじゃない!」


 協定上、今日はブレイガーチームが玉鍵と過ごす予定だった事から、目を剥いて怒り出した夏堀に星川が同じく噛みついていく。


 一応夏堀側となっている向井ではあるが、今回に限っては星川の言い分が世間的な常識として正しいと思った。玉鍵は重火器まで持ち出した犯罪者に襲撃されたのだ。心配から声をかけるくらいは大目に見るべきだろう。


 ただし、それを実際に口にした場合のリスクを考えれば沈黙が正解であることも向井は知っている。コラテラルダメージは戦闘に付き物とはいえ、どんな兵士だって好きで切り捨てられる側になりたいわけではない。


「また犯罪組織に襲われたって聞いたヨ」「星天だっけ? 懲りないよなーっ、それで返り討ちにしたんだろ?」「…さすが」「本当に怪我は無い?」


 ファという女生徒が引き気味だった玉鍵の手を取って教室に誘導する。そのまま取り囲まれた状態で自分の席に来た彼女は、チラリと向井のほうを見て手を軽く上げて挨拶を返してきた。


「無事だ。おはよう」


(さすが耳が良い―――――む、この場合オレは挨拶していないのか? 無事か、というのは安否確認で挨拶とは言わないか?)


「お、おはよう」


 腕立て伏せがしたい。思わず喉が詰まり気味の声を出してしまった向井は、今ひたすらに懲罰の腕立て伏せがしたくて仕方がなかった。


「おはよう玉鍵さん、朝ご飯食べた? 簡単なサンドイッチだけど作ってきたの」


「おはよう……助かる………ひとつめの授業の後にもらえるか?」


 さすがに疲労が抜けなかったのだろう。玉鍵にしては声にキレがない。もしくは朝食を抜いてきたのが響いているのかもしれない。


「ふふっ、ひとつ食べちゃいなよ。大変だったのはみんな知ってるんだし、先生も玉鍵さんには目くじら立てないよ」


 机の横に持ち込んでいたバッグからいそいそとファンシーなランチボックスを取り出した初宮は、その中からスライスされたトマトの断面が見える野菜のサンドイッチを差し出した。これを受け取った玉鍵が改めてお礼を言うと、初宮は顔を赤らめて本当に幸せそうに笑った。


 カプカプという擬音が似合いそうな食べ方でサンドイッチを口にする玉鍵に、その場の誰もが庇護欲のようなものを掻き立てられてしまう。


 目を疑うような戦績を叩き出し、誰もが圧倒される容姿を持つこの少女。しかしそんな彼女とて、まだ成人には遠い学生なのだと気付かされるようだった。


 向井たちは授業開始を知らせるチャイムが鳴るまで、飽きもせずに玉鍵の食事風景を眺めていた。






「(あーしんどい、)おはよう(さん、とくらぁ)」


《オッサンかっ》


(オッサンだよ。中身はな)


 朝もはよから疲れたわ。目を覚ましたらデカい赤レースの二子山があるわ、その二子山が下着のまま基地の廊下を駆け抜けていくわで散々だった。2X才の痴女とか生々しすぎるだろ。危うくこっちまでシャツ一枚で追いかけそうになっちまったぜ。


 服を着て追っかけて行ったはいいがよ……初動を押さえるってのは大事だよな。その頃にはこっちの気持ちも冷めちまって、鼻息荒いねーちゃんの相手するのが面倒になっちまった。登校時間も迫ってたしよ。朝飯食い損ねちまったじゃねえか。


 まぁーいい。今日の放課後には決着つけないとな。どうせ誤魔化すには無理があるんだ。オレがやったと公言してりゃ隠したくてもどうにもできめえ。


「「「「「「「玉鍵さん!」」」」」」」「無事か」


 こわっ。檻の中の猛獣に一斉に気付かれたみたいだ。


《話はもう出回ってるみたいだね。細かいところは伏せられてるだろうけどサ》


(いっそここでぶちまけちまうか………『殺し』をやったとなりゃ、周りのうるせえ連中も離れるだろ)


《えー、中二病患者じゃあるまいし。『オレに近づくなよ、危険だぞ』とか言い出すのは超イタいのでは?》


(ぐぅ……事実なのに客観的に見ると確かにイタい。想像するとマジで鳥肌が立つ)


 転校生の女子で実は殺人者。やっすい設定のラノベに出てくる一山いくらのヒロイン枠でゴロゴロいそうなキャラクターだ。自分がソレになると思ったら吐き気まで感じそうだぜ。


「ちょっと! 今日は私たちでしょ!」「何よ! こんなときくらいいいじゃない!」


 なんか知らんが星川と夏堀が互いにメンチ切ってるな。相変わらず仲悪いようだが朝からケンカすんなよ? あと星川ズはオレを囲むノルマでもあるのか?


「また犯罪組織に襲われたって聞いたヨ」「星天だっけ? 懲りないよなーっ、それで返り討ちにしたんだろ?」「…さすが」「本当に怪我は無い?」


(……気付いたら腕を取られてたな。ファだったか? こいつ格闘技か何かの経験者かね)


ファ雨汐ユーシーって名前からすると拳法とか? アチョーっ》


(脳内に鞭髪の拳法家が暴れるイメージを送ってくんな。というかなんで額に『中』の字が書いてあるんだこの糸目)


《もしくは献身の果てに介護の境地を得たのかもしれヌ》


(無重力の世界でスゲーミニスカの衣装な。しかも黄色の軍服とかありえんだろ。いやだから変なイメージを送ってくんな。誰だよこの女)


 付き合いきれん。スーツちゃんとの会話や映像の脳内表示はオレのおつむの栄養を使うってのに。朝食抜いた状態で相棒のボケが大渋滞を起こしたら貧血になるわ。ああ、あと向井。おまえが悪いわけじゃないが挨拶が聞き取りづらかったぜ。無視したようで気持ち悪いしもう一回こっちから言ってやるよ。


「無事だ。おはよう」


「お、おはよう」


 朝っぱらで喉が開いてないのか? まあオレも朝から疲れてるがね。せめてスープでも飲みたいぜ。


「おはよう玉鍵さん、朝ご飯食べた? 簡単なサンドイッチだけど作ってきたの」


《おお、はっちゃん天使大明神》


(言いたい事は伝わるが、西洋なのか東洋なのかハッキリしろ)


「おはよう(マジ)助かる。(ってもボチボチ授業だな。)ひとつめの授業の後にもらえるか?」


「ふふっ、ひとつ食べちゃいなよ。大変だったのはみんな知ってるんだし、先生も玉鍵さんには目くじら立てないよ」


 机のラックに見慣れないバッグがあると思ったら飯用か。詰めてるのが野菜サンドとは女子だねえ。まあトマトで水気があるのはありがてえな。パン系を飲み物なしはちょっとキツいしよ。


「ありがとう、初宮」


 これでちょっとは栄養補給できる。もうチャイムも鳴っちまったな。なら急いで食ってもしょうがねえし、減量明けのボクサーみたいにかみ締めるとするか。


《でも本当はタマゴサンドが食べたい低ちゃんなのでしたー》


(そういう事は言わねえのが粋なんだよっ)

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