第57話 それぞれの思惑(今回は主人公パートありません)

<放送中>


「くっそぉぉぉぉぉッッッ!」


 被っていたヘルメットを何度も殴りつけた少女は、最後にダンッと座っているシートに振り下ろした。


 少女の名は綺羅星きらぼしヒカル。日本という細長い列島に3つだけ存在する地下都市出身らしい、いかにも・・・・な名前の中学生である。


 ただその容姿はどちらかといえば北欧にルーツを持つ白人種であり、磨けば美しくなるであろう素養を備えていた。


 他者の目を引くシルバーブロンドの髪は長めのショート。と言っても必然的にそうなっているというだけのぞんざいなもの。なにせセットと呼ぶにはあまりにも乱暴に切られている。

 髪型としてショートを選んだというより、単に伸びた端から切っているというだけ。これだけでも彼女が身だしなみに疎いということは丸わかりだった。


Z02.<おいおい、癇癪を起こして壊さないでくれよ。これを壊したら本当に間に合わなくなるんじゃないかな>


 モニターに映るワイプ画面にはいつもの調子のヒカルの友人。ヘルメットとパイロットスーツを身に着けた三島ミコトがいる。


 その隣に位置するワイプ画面には野伏ティコ。どちらもヒカルの友人であり、3機で合体するスーパーロボット『キングタイガー』を駆る仲間たちだった。


「!? おい、まだやるって!」


 聞こえてきた稼働音からシミュレーションシートが待機状態に戻ることを察知したヒカルは、これらの設備の制御を一手に受け持つ三島に呼びかける。


Z02.<そんな精神状態では荒れるだけだよ。甘いものでも食べて落ち着くんだね>


 ワイプ画面に見えるシートから三島が降りる映像が流れ、続いて03のシートから野伏が消えた。残されたのは空席になった02と03の操作席。そして主電源が落ちたヒカルの01シートもまた、『降りろ』と言うようにハッチが開口する。


「………くそ」


 掴んでいたヘルメットを外に投げ捨てて、ヒカルも降りるしかなかった。






<放送中>


 あれだけ意気込んで乗り込んだゼッターでのシミュレーションは、ヒカルに散々な結果で終わった。


 戦うどころか、合体さえできない。


 ゼッターワンへの合体変形はできた。だがこれはヒカルの技量による成果ではなかった。


 合体する順番の『先頭』を変更することで3種類の形態に変形することができるゼッター。その合体プロセスは言うなれば『衝突事故』に近い。前を飛ぶ戦闘機形態のパーツに対して突撃めいた速度で合体するのだ。


 より細かく言えば、パーツ同士の合体時に生じる『激突の衝撃』を機体の耐久力の許容範囲に抑えることが必要となる。加えて合体角度も重要で、わずか2.5度ズレれば脱着機構が働かずに機体同士が弾かれてしまう。


 ゼッターワンはヒカルの乗る1号機が先頭。次いで2号機が合体し、最後に3号機が入ればロボット形態へと変形することができる。つまりワンへの変形は落ち着いて真っすぐ飛んでいれば済むはずだった。


 しかしそれでも合体は難航した。2号機を操るキャスリン・マクスウェルが10回の合体のうち成功させたのはわずか2回。


 この基地に存在する桁の違うパイロットのせいで目立たないが、彼女もまた天才と呼ばれるに相応しい技量の持ち主。そんなキャスリンでさえ成功率は2割でしかなかった。


 それでもヒカルが彼女を笑うことなどできない――――


(1回、たった1回さえ出来ないなんて!)


 ――――1号機から合体することで完成するツースリーは、初めから派手に失敗して以後、まるで成功しなかった。


 速度が速すぎて破損する。角度が悪くて弾かれる。最後には激突による破損で完全に空中分解して、仲間を道連れにしての自爆と変わらぬ有様だった。


 ヒカルよりはマシだが、やはり思ったように行かないことに気落ちしたキャスリンと二人。すっかり顔色をなくしたヒカルは、動作を終えたシミュレーションシートの中で頭を抱え、しばらく降りることができなかった。


 ヒカルが普段使っている獣型ビーストタイプは、一般に他のスーパーロボット形態タイプより動きが激しいと言われている。


 その獣型ビーストタイプを大きく凌駕する負荷に面食らい、体がついていけずに目を回したということもある。だが、やはり失敗続きの精神的なショックが大きかった。


「これは難物だね。ボクとティコの02、03は疑似負荷をセーブして設定したけれど、それでもまだ頭がフラフラするよ」


 三島は冷蔵庫から出してきた自前で持ち込んだ有名店のホールケーキを、その白いキャンパスからゴッソリと生クリームだけを取って口いっぱいに頬張る。


 クリームまみれの口内を想像して胸やけしそうな気分になったヒカルは、顔を背けてギリギリと奥歯を鳴らした。


 ヒカルは別に甘い物が嫌いではないが、この風変りな友人の性格を表すような特異な食べ方を見ていると食欲が失せてしまう。


 ここは三島に国からあてがわれた基地にある研究室ラボラトリー。ここで彼女はその天才的な頭脳を発揮することを期待され、地下都市の全面援助という格段の好待遇を受けている。


 例えば設置に高額な費用を要求される最新鋭のシミュレーションシートを、彼女個人だけで3基も保有していた。そのうえこのシートには商業倫理を度外視した独自の改造を施しており、より実機に近い再現性を獲得させている高性能な代物である。


 無論、性能が良いからと言って現行のコストパフォーマンスではとても正規品として設置できる金額ではない。国家にその頭脳を買われた三島だからこその贅沢品だった。


「元より負荷を緩くしたシミュレーションでもこれではね。実機に乗ったらジョークでなく死ぬんじゃないかね?」


 誇張でも大げさでもなく、三島の手に入れた極秘扱いのプロトゼッターの経歴には忌まわしい記録がある。一部に公表されている合体事故の死者4名の他にも、確認できるだけでテスト中に5名のパイロットが死亡しているのだ。


 合体事故での4人。それを上回る5人の死者は、いずれも機体の高機動から生ずる極限の負荷を受けたことによる脳出血、内臓破裂、そして圧死である。


 最終的に耐G性能を引き上げたことで圧死することはなくなったが、それでもパイロットが失神して墜落する事故も相次いでいた。こちらは緊急の自動操縦装置が働いて死亡事故を免れているものの、未だ安全に人が乗れる機体とは言い難い。


 まだらにクリームの禿げたスポンジ生地を丁寧に切り分けて、嬉々として自分の皿に移していたティコが三島の言動にコクコクと頷く。


 野伏のぶしティコ。褐色の肌と黒髪のクセ毛を持つ高身長の少女。


 彼女は過去に強烈な体験をしたことで失語症を患い、6年が過ぎた今でも喋ることができない。それでもヒカルとミコトという温かい友人に囲まれて育った彼女は、決して塞ぎ込むことなく前向きに過ごしていた。


「あれは あぶない やめた ほうが いい」


 ティコの首にあるチョーカーは三島の製作した発声器。ティコの失語症は喉を通すことができないという特性があり、それよりも前の横隔膜の段階であれば音にできると突き止めた三島が友人のために作り上げたものだ。


 さすがに流暢とはいかないが、単語程度であればかなり自然な音を出せるよう工夫がされている。

 ただティコが肉体的に落ち着いていることが使用前提のため、激しい運動などの最中には使うことは出来ない。


 三島はこの欠点を解消するため、チョーカーの細かいアップデートを続けている。もっとも、ヒカルも三島もティコが喋れなくても大抵の事は理解できるのだが。


「………あいつは、玉鍵はやったんだよ」


 ポツリと呟くように悔しさを漏らしたヒカルは、それきり唇を噛んだ。


 三島とティコはどちらともなく顔を見合わせ、頑固で負けず嫌いの友人に溜息をつく。


 玉鍵たまの搭乗する機体は3号機。先ほどのシミュレーションではティコが受け持った戦闘機である。


 1号、2号と比べてやや大型のため鈍重で、その代わりにほかの2機に比べて頑丈で搭載されている火器の威力が高い。実際に乗ったティコの感想は『かなり つかい づらい』だった。


 特に合体において運動性の悪い3号機の扱いづらさは顕著で、ヒカルと違って設定を甘くしているはずのシミュレーションでもティコは一度も合体が成功しなかった。


 三島は3度成功させたものの、ハンデありきでの成功を誇るほどパイロットとしてのプライドは安くない。


 国から出撃免除を受けている三島だが、それでも戦うのは自分なりに生への刺激を求めて『楽しい』と感じたからだ。いわばパイロット稼業は天才なりの趣味であり、決して友人に付き合っているだけではない。


(翼の君も罪作りだね。新たな力を授かるべき虎がすっかり拗ねてしまってるじゃないか)


 綺羅星きらぼしヒカルという友人は、知恵が回りすぎて何もかもに執着の薄い三島にとって虎のように誇り高い存在。興味をそそられる獣だった。


 ただでさえ強い虎がもし翼を授かればどうなるだろう。それを考察することが三島にとって珍しい『予測のできない娯楽』となっている。


 とはいえ三島をしてもまるでモルモットのような扱いに思えるので、さすがに友人であるヒカルに明かすわけにはいかないが。


(いかな虎でも、己よりはるかに大きい翼では持て余す、か)


 三島の言う翼の君、玉鍵たまの事を彼女はついに『超人』だと結論する。次世代のヒューマンモデル人間種と言い換えてもいい。


 多くの者が彼女に感じた隔絶した生命としてのステージの違いは、正しく生物として立っている場所の違いであったと。


 玉鍵たまが優れているのではない。人間という種族を彼女ひとりが逸脱しているのだ。


(いくら優れているからと言って、10代半ばの少女が耐Gスーツも無しで10Gもの負荷に耐えられるわけがない――――つまり彼女は世間で定義された『人間』ではない可能性が高い)


 おそらくは遺伝子操作で生まれた強化人間。ならばあの圧倒的な美しい容姿も頷ける。どんな能力も容姿も『人が設定』できるなら思いのままだ。


 三島はこれまでの玉鍵たまというパイロットがこなした数々の戦闘、そのすべてを計測して確信を持って結論する。


 この予想が正しいならば『人間』のヒカルが張り合うなどバカらしい話だ。三島はスポーツにまるで興味がないが、これはリトルリーグの少年選手とプロ選手とでハンデ無しで競うようなもの。前提から公平性が破綻している。


(過去が追えないのも納得だ。エリート層に潜む何かしらの組織から送り込まれてきたんだろう)


 その目的も今となってはよく分かる。おそらくは一般層に蔓延っていたとある一族の横行を打ち砕くためだろう。そして目的は見事に果たされた。


(近いうちにエリートへ昇格、という名の帰還命令でも出るんじゃないかね)


 三島はこのカオスな階層を気に入っているが、エリート出身であるならこんな掃き溜めのような世界は我慢ならないだろう。ひとたび帰還命令が出ればさっさといなくなるに違いない。


(だからこそ、玉鍵が一般層にいるうちにボク・・の可愛い虎を鍛えて貰わないとね)


 三島はティコも好きだが従順すぎて物足りないとも思っている。やはりモノ・・にするなら歯ごたえのひとつも欲しいし、輝いて貰わねば自分とつり合いがとれない。


 人を育てるのも存外楽しいと三島は思った――――収穫が待ちきれないくらいに。


 幸か不幸か、ヒカルにとって三島は頼れる友人だった。どんな無茶な要求にもその知力と友情を駆使して応えてくれる。ヒカル側から見れば。


 常人より肥大化した知力を持たされた少女は、ただ自らの楽しみに忠実なだけである。そして天才は男女という太古から使い倒された旧式な枠組みに、さして意味を感じていないことをヒカルはまだ知らない。







<放送中>


 端末を操作して該当のシーンをもう一度再生する。そのシーンが近づくと一時停止し、可能な限りズームアップした状態で再び動画を走らせた星川はただ一点に集中する。


(やっぱり、わずかにスティックを動かして微調整してる)


 それは今基地で話題となっている新型ロボットのシミュレーション映像。ゼッターロボの合体変形シーンである。


 30回。3人のパイロットがそれぞれ10の合体を試行した。


 ゼッターの合体はこの機体のキモと言えるもので、他の合体機のような一度合体したらそのままということがない。


 あるときは強力なビームを放ち柔軟な近接戦闘能力で遠近スキの無い戦いができる形態に。またあるときは極めて高い移動速度を駆使し、カメラに残像を残すほどの機動形態に。


 そしてまたあるときは、超高温・超低温・超水圧に耐えるほどのあらゆる環境に適応した頑健な機体となる。


 戦闘機というパーツ形態ではひとつとして獲得していない能力が、合体することで機体に生じるというまさにSワールドの特性を象徴するようなスーパーロボット。それがゼッター。


 だが今の星川にそれはどうでもいい事。流れる動画の中で彼女の興味の対象はふたつだけ。


綺羅星きらぼしは成功ゼロよ。これは玉鍵さんが合体できるよう微調整した結果だわ」


 30回合体の前、玉鍵の話を聞かず最初に自分の1号機がメインパイロットになるゼッターワンへの合体を敢行した綺羅星きらぼし。キャスリンが流されて合体モードへ移行したため、しかたなく玉鍵も合体に付き合ってやっていた。


 合体は成功した。当然だ、その後に危なげなく自分の分の10回の合体を成功させた玉鍵がそっとアシストしたのだから。


 ゼッターワンへの合体は1号機にとってもっとも簡単だ。軸線を合わせて極力直進するだけでいい。


 ただし、気流の影響を受ける大気圏ではその真っすぐが意外に難しい。


 キャスリンの操る2号機との合体はどうにか出来た綺羅星きらぼし。しかし合体したことで操作権が1号機に移り、形状と重量が変わった機体は気流に嫌われ、3号機合体の直前によれた・・・


 それは綺羅星きらぼしのミスとまでは言えないかもしれない。だが合体のために直進するのが合体待ちの機体の役割でもある。


 たとえドッキングの最中に敵から攻撃を受けようが、合体機は覚悟を決めて微動だにしてはいけないのだ。それが起点となる機体に乗るパイロットの宿命である。


 星川も合体機であるイージスシスターを駆るパイロット。だからドッキングの起点となる胴体部『イージス03』に乗り、もっとも攻撃を受ける時間が長いチームメイト『雪泉シズク』を尊敬しているのだ。


 そして星川マイムが世界で一番尊敬している少女が、画面の中でアクシデントに直面した瞬間に動き出す。


 玉鍵は急すぎるアクシデントを物ともせずに、双方の機体の流れを微細なスティックコントロールで調整し、何事も無くドッキングを成功させた。その動きがあまりにも自然なために、1号機に起きた問題が一見した程度では分からないほどだ。


「これだね……うわぁ、よく気付いたねマイちゃん」


「え、ええ。なんとなく違和感があったのよ」


(……玉鍵さんの汗が滴るうなじを見るために何度も見返して気付いたとは言えない)


 普段は美しい長髪で隠れている玉鍵の首筋。しかし訓練のときには髪を上げてポニーテールにしたりシニョンにする。しかし玉鍵はジャージのジッパーを上まで上げていることが多いので、意外に生の首筋を目撃できる機会は少ないのだ。


(シャワーも更衣室も経験したけど、これはまた違った良さがあるんだもん)


 どうも肉眼であまりジロジロ見ると鋭い玉鍵は察知するらしく、すぐに振り返ってしまう。じっくり見るなら録画は必須、しかしさすがの星川もシャワーや更衣室そういった場所を盗撮してはいけないという、なけなしの倫理観は残っていた。


 最近、かなり怪しいが。


「逆にマクスウェルさんは素直にスゴイわね。訓練してれば何とかなりそう」


 キャスリンの成功は2回。目標としていた40パーセントを下回る結果だが、星川はこれをよくできたものだと評価する。何といっても彼女は玉鍵のアシスト無しで自力での合体を成功させているのだ。


 見ているだけでも難しいと分かるゼッターの合体を、初日にここまで出来ればむしろ上出来の部類だろう。


「うーん。天才マックスの名は伊達じゃないかぁ。玉鍵さんがいなかったらあいつがナンバーワンだったろうな」


 休憩室ではしたなく寝転んでいる槍先やりさきは、マックスことキャスリン・マクスウェルとは小学生時代のクラスメイトであったため、その才能の高さを知っていた。

 キャスリン本人も小学生高学年にしてパイロット稼業に意欲があり、いずれ基地でその名を轟かすだろうとクラス内で思われていたほどである。


「玉鍵サンと違う時代、せめて1年くらい前後すればエースだったんじゃナイ?」


 親が崩壊した中華圏から流れてきた異色のチームメイト、『ファ雨汐ユーシー』が飲みかけのサイダーからストローを抜き、ピコピコさせながら同意する。


「……ちょっと、飛ばさないで」


 それを窘める雪泉シズクは、これ以上は勘弁というようにサイダーの雫が掛かった自分の持ち帰りのカレーライスを膝から持ち上げて脇へと退避させた。


「もう、休憩室がカレー臭いじゃない……」


 テーブルの無い無料の休憩室では思い思いに間食をするパイロットで溢れている。


 もとより成長のための高カロリーを欲する若い体と訓練後の消耗のダブルパンチ。少年少女の身でパイロットとなった子供たちが、ついつい栄養補給をしたくなるのも無理はない。


 しかし持ち帰りのカレーライスという、なんともガッツリした食事をしているのは星川のチームメイトであるシズクくらいである。


 ただその匂いにつられて『夕食はカレーが食べたい』という欲望が、休憩所の利用者の間をじわじわと浸食しているのは間違いないだろう。


「玉鍵さんのカレー、美味しかったよねぇ」


 しみじみと言うのは湯ヶ島ゆたか。


 星川たちの間でゆっちゃんと呼ばれている少女は、学校に家で作ったカレーサンドなるホットサンドを持ち込んだ玉鍵から、多く作ったからとおすそ分けを貰って感激した事とその味の良さを思い出して唾を飲み込んだ。


(顔も良い、頭も良い。パイロットとして最強で、料理が得意で家事も出来る。誰より強くて優しい女の子……完璧か!)


 バカな男どもが『胸が無いのだけが残念』などと、本気で蹴りをいれたくなるような発言をしていたが、星川はあの男たちの情けない考えにちょっと共感する部分もある。


 そうとでも茶化さないと、玉鍵たまという完璧な少女を前にして凡人では冷静でいられない。そのどこか卑屈な気持ちは分からないではなかった。


『ここがこうだから私の趣味じゃないので狙ってません』。なんて理屈っぽく挑戦しない言い訳を嘯いているのと一緒。本当は気になって仕方ない。気を引きたくて仕方ないのに。


 あまりにも高嶺の花だから、諦めているだけで。


(まあ玉鍵さん自身が全然恋愛に興味が無さそうなんだよね。最初から男は眼中にないというか……百合っ気も無いみたいだけど)


 ――――それでも男よりは脈があるのではないか?


 星川マイムの頭の奥を掠めていった願望に、まだ自覚はない。

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