第51話 50話の節目を越えたので、ちょっと設定補足回
見切り発車で50回。誤字脱字でボロボロの書き物を、それでも読んでくださる皆様に感謝。
<放送中>
《どーも、この世界のありとあらゆる下等生物しょくーん。『Fever!!』ちゃんだよ? この呼び方はずっと後だけど》
《新しい世界は気に入ってくれたかな? これも後か、どうでもいいけど》
《
《具体的に言うとぉ――――――
ついに宇宙進出を果たした人類。だが、それでもまだ太陽系を手軽に脱出できるような技術もなく、汚い化石燃料を燃やしてチマチマと探索しては宇宙にゴミをまき散らす毎日。
地上から緑は減少し水は汚れ、自分たちにも有害な物質で着実に汚染しながら発展していると嘯く国家。獲得できる食料も生産される食料も日増しに減少していく中で、より安価で簡易にエネルギーが取れる代替え食品へと置き換わっていく食卓。
税は増え、所得は減り、横行する犯罪者は無償で暖と食事を得るために、出ては戻るを繰り返す。そんな世界に、ある暇な高次元存在がお節介を焼きに来た。
ある者は
《違いまーす。下等生物のためにいるんじゃないもーん。というかぁ、自分たち人を神様が作ったとか、バカじゃね? 偶然って知ってる?》
《違いまーす。下等生物を堕落させるためにいるんじゃないもーん。というかぁ、わざわざ堕落させなくてもキミら十分ボケナスでしょ?》
ある者は
《はいはーい、みなさーん。キミらの国の代表とぉ、後ろで操ってる下等生物のダイジェストムービーだよー》
ものの数秒で他人のこれまでの人生をすべて経験する事。それは常人に耐えられるものではなかった。
あるいは配役された者が穏やかな人生であったなら、まだ狂う者は少なかったかもしれない。
だが不幸にも
《ねえねえ、裏社会のボスとかってぇ、やってて人として恥ずかしくなーい?》
殺人、拷問、強姦を中心に、国の法では罪に問えないような権力者や犯罪者たちのやらせてきた事が、自らやってきた事が全人類の脳内で再現された。
それも、自分が
再現が終わるころには強烈すぎる体感に死亡者も多発した。生き残っても生々しい苦痛の記憶から逃れるために死を選ぶものが続出した。
――――あるいは、その記憶の元凶となった人間に強烈な怒りを向けた。
国を越えて人類という広義的な意味で争い出した人間たちだが、彼らはどんな立場であれ広域破壊兵器を使えなかった。
当時の人々が使えたのは、石と棒だけである。
《汚い物まき散らさないでくれる? 掃除もできないクセにー》
多くの権力者たちが居場所を突き止められ、殺意と棒と火を持つ原人が如き人々に襲撃された。彼ら権力者を守るはずの兵もまた主人を見限り、狩りに参加する猟犬となった。
でなければ彼等兵士もまた、怒り狂った人々に殺されるからである。
一通りの嵐が過ぎ、世界に暴力後の虚脱が訪れると
なんの代償も不要で物資を吐き出す、不思議な像である。
そして再び人類は争いだす。自分たちがより良い生活を得るために。
――――今少し細かく言うならば、良い生活をしたい新たな権力者たちの欲求のためであったが。
激動を耐え抜いた組織が、新たな秩序の元に纏まった者たちが、中途半端に寄り集まった団体が、その像を独占するために他の派閥へとありとあらゆる正当性を訴えた。
ある指導者は傲慢に語った。それは自由と平等を旨とする我が国で管理するべきだと。
ある独裁者は平然と嘘をついた。それは過去から自分たちの持ち物であることが証明されていると。
ある代表者は必死に抵抗した。それを託されたのは像の置かれた我が国だと。
三つ巴の争いが最高潮に達したとき、彼らの住まう陸地は諸共に粉々となった。
《いやいや、キミらのじゃねーし。もー『Fever!!』ちゃんボランティア疲れたんでぇ。欲しい物は自分で戦って稼いでね》
そうしてこの星は謎の世界と7日に一度繋がることになった。
謎の世界から送られてくる超技術を学び、その技術を巨大ロボットという力に変えて、人類が存続するための資源を得るために謎の世界に赴き、そこで戦う。
ある意味、人間はどんな生活よりも不安定で命のやり取りに真摯だった『狩猟時代』へと逆行したのだった。
それでも新しい生活サイクルと並行して、
犠牲を出してなお別の道を模索したがるのは、やはり生物の
違う世界に移住を試み、戦わずに資源の採取だけを試み、橋頭保を築くことを試み、すべてが無駄に終わった。
手に入れた技術をこちらで転用しようとして失敗し、手に入れた装備をこちらで運用しようとして失敗した。
それでもなお、どこまでが可能かを模索する。やがて犠牲と執念は小さな成果を残した。
巨大ロボット関連だけはこちらでもある程度扱える――――分かったのはそれくらいである。
そして世界は種の生存のために適応する。既に分類されつつあった階級を明確に分け、底辺・一般・エリートに区分し、生き残った国家共通で『多すぎる人口』の間引き政策が施行された。
それは飽和した社会にとってもっとも多く、コンパクトな社会ではもっとも不要な存在を狙い撃ちした政策。
『底辺消費法』
食糧危機、環境汚染、安価に動かす労働力。人類の積み上げてきた多くの負債を、一身に受け止めさせる人身御供。それが底辺。
まともな食糧は与えられず、まともな水は与えられず、ただひたすらに戦闘とそれに伴う命の損耗を強いられる存在。それが底辺。
政策は順調に進み、『一般以上』の人々の望む社会を目指して地球人口は減り続ける。すべての『一般人以上』が文化的な最低限度の生活を営める
《――――という事なのだ!》
「いや、突然どうしたよスーツちゃん」
気分よく唐揚げ作ってたら急になんだよ。鳥料理で満足度ナンバーワンの唐揚げ様だぞ。今日の晩飯のメインだぞ。
《ザックリ解説したい衝動に駆られてしもうたんや、低ちゃん》
解説? 別に聞こえてこなかったからわっかんねえ。まあオレの思考もスーツちゃんに読ませてるものと読ませないものがあるからな。その解説はオレに『読ませない』思考だったんだろう。
「誰に向けてか知らんけど揚げ物作ってるときに叫ばんでくれ、危ない」
なんせ180度の油を使ってるんだ。弾けた油が普通に熱いぜ。
揚げない唐揚げの作り方ってのもあるらしいが、今回は初めてって事で古典的にフライヤーで揚げてみた。食べ比べないと違いがわかんねえしな。
《陳謝。ちなみに低ちゃんの低ちゃん呼びは、『底辺の底』じゃなくて、『最低スペック』な人材だったから低ちゃんゾ》
「だからさっきから誰に解説してるんだ?」
底辺の中の底辺。最下層のゴミ溜め這ってた低能がオレの出発地点だからな。何を今さら。っあ゛ー嫌だ嫌だ、飯の前だってのに。ひたすら暗かったのとあちこち痛いのと、クッセえ臭いしか覚えてねえや。
それと、ええと――――そういやオレッテ、アノコロはなんてナマエだったッケ?
「玉鍵さーん? 誰かいるの?」
「――――ん? ああ、いや」
キッチンに顔を出してきた初宮がキョロキョロと見回してくる。ヤベエ、声に出してスーツちゃんと
《発声練習。好きなキャラクターのセリフを真似ていた》
「発声練習。好きなキャラクターのセリフを真似ていた」
(助かるぜスーツちゃん)
《もう少しアドリブを利かせたまい。出したセリフまんまジャン》
(咄嗟に俳優みてえにはいかねえよッ)
「なーんだ。でもスゴイね、まるでホントにもうひとり傍にいるみたいだったよ」
《うむ。スーツちゃんは低ちゃんと一心同体ドッキングOKであるからして。おはようからおやすみまで、部屋の隙間から息を殺してじっと覗いているのだ》
(都市伝説か。なんか恐いわ)
「うぅ、それにしても……ダメ、これはダメだよ。メチャクチャ良い匂い過ぎてお腹にダイレクトに来るよぉ。本物の揚げ物ってこんなに美味しそうな匂いがするんだね」
パウダー入りは衣から死ぬほど嘘くさい匂いがするからな。揚げ物の匂いなのは間違いないんだが、どうにもうまそうには思えない匂いっつーか。モロに香料なんだよなぁ。匂い付きの消しゴムみてえな感じでよ。
「そろそろ揚がる。 席に(着けや)」
「はーい。あ、お風呂洗いは終わったよ」
「助かる」
浴場がデカいから洗うのも一苦労なんだよな。でも個室内のシャワーじゃ味気ねえし、せっかくある設備を使わない手は
「次は料理も一緒にやらせてほしいな。これでもお弁当くらいは作ってたんだよ? 使ってた食材はもっとずっと下のグレードだったけど」
この2人分のトータルで一般家庭4人分の食費の7倍から8倍は余裕で掛かってるからな。肉も高いが食用の植物油とかも中々の値段がしたぜ。調味料とか複数回使えるものを差っ引くともう少し下がるがよ。
「出来ることは何でも言ってね? 今の私って居候状態なんだから。いっぱいこき使ってね」
《いっぱいコキ
(飯時にエロトークを持ち込むな)
《はっちゃんは起伏が多くて盛り付けは難しそうじゃのう。やはり乗せるなら低ちゃんのようにぺったんこじゃないと》
(人体を皿扱いするな)
《低ちゃん、世の中には女体盛りという立派な文化があるのだよ?》
(それは立派どころか文化でさえねえよ! 行き着いたエロ親父の変態接待プレイじゃねえか!)
《うむ。こんなスーツちゃんに一言だけ言わせてほしい》
(なんで自信満々なんだ……嫌な予感しかしねえが、どうぞ)
《盛り付けるなら雉森のおねーさんに器を頼もう。もりだけに》
(頼まねえよ?)
楽しいんだけどよぉ、もう少しエロ方面は加減してくれやスーツちゃん。
《唐揚げのレモンってさー、指に逆剥けあるとき絞ると痛くない?》
(話が飛び過ぎじゃね?)
《あ、
(だからわっかんねえって。なんの話だよ)
《ウヒョヒョ、今回の低ちゃんには長生きしてほしいってコトさ♪》
たまに変な事言うんだよな、この無機物。オレにとってこれが
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