第24話 仲間とのイザコザは友情パート
《各種機能チェック。倉庫で半年くらい寝てた子だから念入りにイクゾー、デッデッデデデデッ!》
(カーン。オレは立ち上げするが左手もいるなコレ。片手でも動かせるようにしとけよ設計者よぉ……)
ハンドル操作のロボット、もといスーパーロボットのパーツだからロボットとは言わねえのか?
車両っ
操縦席の天井と左右、どこもかしこもレバーだらけなのがレトロな感じだな。左側にある流行りを意識して急遽くっ付けました、って感じのタッチパネルが完全にミスマッチだ。
正面の計器群の中にはサイドミラーやバックミラー代わりの小せえモニターがあって、なんつーかゴチャゴチャしてる。まあサイズ的に横のミラー見るなんて現実的じゃねえからな。どう取り繕ったって20メートル級のクソデカ救急車だ。つーか、このサイズで四輪とか頭が悪いとしか思えねえわ。
それでもSワールド由来なら現実に機能する。自重で破損したりもしないし、基地の床も崩壊しないってんだからスゴイ。タイヤひとつにどれだけの重量が掛かってんのかね? 大昔の戦車の最大クラスは100トンだっけ?
まあいいか、Sワールドだし。カッケーロボットに関わるなら何でも
(思ったよりあっさり借りられたな。
《あっさりでは無かったんじゃない? 5機は倒してこい、出来なきゃ土下座だって騒いでたじゃん》
生き残りの連中はなんつーか、どっちも負け犬って感じの気配が染みついているタコどもだった。ジジイ経由で話を持ち掛けたが最初は門前払い。次にコンタクトしたら長々と前任のパイロットと自分たちの活躍を語って陶酔してたのがウザかったわ。
昔はよかった話なんざ10代で言うこっちゃねーぞ、見っともねえ。語りが代わり映えしねえから記憶が無限リピートでもしてんのかと思ったわ。
あんまりウザいからつい『負け犬』と呟いちまったら見事に聞かれて乱闘になっちまった。語りに酔ってるヤツって、自分が呆れられてるのには気が付かねえのに相手が聞いて無い事には敏感だよな。
ま、両方ぶちのめしたがよ。スーツちゃんのいるオレじゃなくたって、腐って訓練してねえタコなんざ現役パイロットなら簡単に
(借りちまえばこっちのもんだ。敵がどれだけ出てくるかなんざ分かんねえんだし、ガキどもがひとりでも生きてれば1機倒してさっさと帰還しても周りが怒らせねえよ。人命優先ってな)
それでもうるせえなら鼻血じゃすまさねえ。大義名分はこっちにありだ。生き残った仲間と傷を舐め合ってるようなクソパイロットに遠慮なんざねえぞ。パイロットは戦ってこそパイロットなんだよ。降りたら只の一般人だろうが。
《はーいチェックOK。問題なーし》
(ありがとさん。最後
《全周位カバーできる中口径エナジー兵器『レスキューカノン』が一門。ホイール全輪に敵車両の走行妨害装置かつミサイルの『ドリルラッシャー』が一発づつ。計4発。以上になりまーす》
(レスキューカノンって名前、だいぶパワーワードだな。助けたいのか殺したいのか分からん)
《スーパーロボットのネーミングセンスは音の響き優先の物が多いからねー》
(それより問題なのはドリルだな。走行妨害ってナンダ? 誰とレースで並走するつもりなんだ救急車よぉ……)
《昔のロボはタイヤとドリルがワンセットってトコあるから。とりあえず付けとけって感じ?》
考えてみたらあれも変な話だよな。走ってる最中のタイヤに何か突き刺そうとしたら自分も跳ね飛ばされるぞ。走ってる自転車のスポークに足を巻き込むのと同じ理屈でよ。
<嬢ちゃん! ここまで来たらもう四の五の言わん。いけるな!?>
「いける、(ぜ爺)まかせとけ」
何がここまで来たらだ、クソジジイめ。機種変更依頼してから今日の今まで反対しやがって。この爺もうるさいったらなかったわ。シミュレーション中まで声かけてきやがってよぉ。突貫で機種転換してんだから集中させろっての。車の運転はともかく装輪式の車両は火器の狙いがつけ辛いから困るんだよ。
人型ロボットの数少ない利点は『腰と腕と手首』のおかげで全般に射界が広く柔軟なことだ。そして地形走破で起きる振動は足腰のサスペンションが結構カバーしてくれる。
一方で車は極端に言うと
元の土台が地形に合わせてギッコンバッタン揺れるわけだからな、そりゃ当ったんねえわ。細かい起伏はサスペンションでなんとかなりゃあまだしも、ちょっと高い所はどこ通っても腹なんて擦りまくりだもんよ。
普通の車なら火器を撃つ撃たない以前に、あっと言う間に内部機構イカれるか、腹が乗り上げてスタックしちまうだろう。
一応、射撃制御はソフトウェアがカバーしてくれるんだが、いかんせんスーパーロボットの射撃ってヤツはSワールド由来の技術傾向としてパイロット任せの面が大きい。中には簡素過ぎる
超技術の塊のクセに、照準装置はレシプロ時代の戦闘機が積んでた光学照準以下、なんてとんでもねえのもあるらしい。
乗ってるロボットのサイズがデカいんだから交戦距離は相対的に遠くなるのによ。数キロ先を
まあそういうロボットは肉弾戦で無駄に強いんだがな。何故か投げると戻ってくる斧とか装甲とかをブーメランにして飛ばすタイプは。パイロットは選ばれたフィジカル人外レベルの超人しか乗れないらしいけど。
《それじゃあシャトルとのタイミング合わせ開始ぃー。カウント20から》
(あいよ。カウント20、19、18―――)
……最後にガキどもの生存を確認したのは、不定期に放送される『スーパーチャンネル』の19時間前の映像。あいつらは疲弊しながらもまだ生きていた。
一週間。スーツちゃんのいるオレが取り残されて生きていられたのが五日で、それを雪原で一週間。
ははっ、スゲエぜ。おまえら、生きてるだけで大戦果だ。
操縦席に珍しく積んだのは三人分の食事と温めた真水と、新品の毛布。後部のオートメーション式の医療台に乗っけるから必要ねえかもしれねえが、まあオレの気分の問題だ。
―――帰れなかった前のオレの、欲しかったもの。
電磁カタパルトで浮き上がった車両が加速する。車らしいシートベルトなんて安っすい緩衝装置がミチリと肩に食い込んだ。
<放送中>
「これはまた派手に殴られたね、センパイ?」
「花鳥」
ついさっき一波乱あったらしい食堂に入った弟が、今日も余計な軽口を叩く。その一言があるから玉鍵も嫌がっていたというのに。
雉森は床に倒れている先輩としゃがみこんでいる先輩、パイロットとしての先達のひとりにハンカチを差し出した。
彼は口から結構な血を滲ませており、口内をザックリ切っていることが伺える。もうひとりは鳩尾がひどく傷むのだろう、体がくの字のままで動けないようだった。
「HEHE、TAMAのPUNCHは効いたろう? あれはきっと生まれつきのヘビィパンチャーだ」
兄が場を混ぜっ返す。ただしこっちは弟のせいで険悪になった雰囲気を散らすためのフォローであり、自分たちの中で一番兄弟思いのサンダーバードの優しさである。
「うるせえよサンダーッ! あのガキ、ゴツいメリケンサック持ってたぞ!?」
どうやら倒れているひとりはそのメリケンサックで腹を殴られたようだ。
口から床にベッと血を吐き出した彼はマシンサンダーチームのリーダーであり、合体後のメイン機となるパトサンダーのパイロットである。半年前までは。
かつては基地でも指折りの華々しい戦果を上げたマシンサンダー。それが半年前に三人のチームメイトと共に打ち砕かれた。
生き残った彼らは基地から離れることこそしなかったが、かといって出撃もしないという亡霊のような存在になっていた。最初は気を遣われて憐れまれていた彼らも、今では新人に絡む基地の厄介者と呼ばれている状態。
腐る前の彼らに薫陶を受けたことのあるガンドールチームは、それを歯がゆく思っていたものだ。
「あんな凶器で遠慮なく殴ってくる女、初めて見たっての!」
リーダーの彼はずいぶん驚いたようだが、玉鍵と同じ女の身としてはとても理解できる話。年上の男ふたりと、それも穏便とはいかない対峙をするというなら自分だって武装のひとつもするだろうと雉森は結論していた。
これがまともな相手ならまだしも、いかにも捨て鉢になっている陰気なオーラを纏った男たちと会うと言うのはそれだけで怖いだろう。まして思春期に入った14歳の少女には。それは
「殴られるような事を言ったんでしょ? あいつ意外と怒りっぽいですから」
だからまた余計な事を。弟は玉鍵に気があるようだが、こんな調子では一生相手にされないだろう。
(まあ……玉鍵さんが家族になるなら大歓迎なんだけど。サンダーのほうがまだ可能性があるでしょうねぇ)
あの一般人とは別格のオーラを纏った少女が恋愛で一喜一憂する場面など、そもそも想像できない。たったひとりで世界に君臨する、孤高の独裁者にでもなるほうがよほどありそうだ。彼女に支配された国はとても良い国になりそうである。
「チッ! ケンカ売ってきたのはあいつのほうだぞ! 人を負け犬呼ばわりしやがって……」
「事実でしょ?」
「ッ、てめえ……」
これはさすがにマズいと、止めようとした雉森の前にサンダーバードの大きな背中が割って入ってくる。口を出すなというように。
「分かんないかなぁ。
玉鍵はパイロットという在り方に拘りがある。短い付き合いだがそんな気配は雉森も感じていた。メインパイロットに固執していたのもそのひとつだろう。自らが自らの力で戦う事を責務というように。
(……代表挨拶のときに言っていたわね。『今日この日『Fever!!』法の名のもとに。
「――腐ってるならやめちまえ。でも、もしもそうじゃないなら、もう一度自分の足で立ってみろ。ってところかしら」
「アツいな! TAMAなら言いそうだ!」
思わず出た言葉に待ってましたとばかりに兄が乗っかる。
あの少女は言葉こそ少ないが、それだけに一言が『熱い』。ひとつひとつの行動がまるで計算づくのようでいて、けれど本当はいつも必死で。
だから嫌味が無い。余裕のようでいてどこか
「ボクたちも半分腐ってましたから人の事は言い難いですけどね。けど、玉鍵じゃなくても見ててイラっときますよ、今のセンパイたちは」
「そうそう、オレたちも腐ってるところをSIMULATIONで叩きのめされたもんな! 特にBROTHERはっ」
「ボクだけじゃないでしょう!?」
(……そっか、そうだったんだ。
思えば最初からガンドールチーム、いや、生き残りの雉森たちは腑抜けてしまった自分自身を突き付けられていたのかもしれない。
こんなシミュレーション程度で自信を喪失してしまうようなヤツでは無理だぞ、しっかりしろと。
戦う覚悟が本当にあるのか。死に場所を求めているだけじゃないのか。おまえたちに『
自分たちもケツを叩かれていたのだ。いい加減にしろ、戦えるコンディションに持って行けと。
(何度感謝すればいいのかしらね……まったく、年上なのに情けないわ)
「…………やっぱすげえヤツなんだな。あのガキは」
ボクシングで世界ランカーにまでなった彼を殴り倒すくらいだ。14歳の女というハンデを考えれば、たとえメリケンサックを使っていても敗北の言い訳にはならないだろう。
(――むしろ、武器を使う事で
もしハンディ無しで倒されたら、彼には男としてもボクサーとしても本当に立つ瀬がない。彼女はそれを
「おい、さっさと立てよ。後輩どもにバカにされんぞ」
ひとりのパイロットが仲間を急かして床から立ち上がる。おそらくはふたつの意味で。
その足はまだフラついているけれど、体の芯に気合だけは入ったと雉森は感じた。
玉鍵たまという世間の常識からかけ離れた少女は、一般の者ではとても足並みを合わせられない。だからこそ彼女の気遣いは周囲に判り難く、誤解を生んでしまうタイプなのだろう。
天才は孤独。それでも決して無情な訳ではないのだ、少なくとも雉森たちが知るあの少女は。
誰となしに食堂の時計を見る。この場の全員に関わったひとりのパイロットが、多くの願いを受けて出撃する時刻だった。
《被撃破地点から動けてないなら、後だいたい10分くらい走ったところだねー》
(思ったより遠くに降りちまったなぁ。これで三度シャトルから降りる前に撃たれたわけか。マジでお祓いしたほうがいいかもしれん。オレの今回のLUCの値、マジでバグってねえか? 低くはねえはずなのに)
いつも頼りになるスーツちゃんの強力な索敵能力も、『本星』からガッツリSワールドに入ってからじゃねえと利かねえみてえだからな。不意の遭遇戦はどうしようもねえわ。
まあレスキューカノンの試し打ちにはなった。ビームの分類だがレーザーともまた違う『光より遅いビーム』兵器っ
いやシミュレーションでも使ったけどよ、正直実砲はもっと
だって『ビビビビッ』て感じに実弾よりおっせえビームが空中を飛んでいくんだぜ? 我ながらよく当たったわ。向こうも遭遇戦でビックリしてたんかね。敵は情報処理の問題なのか、想定外の事が起きると数秒固まる事があるんだよな。
《でもこれで最低限シャトルを呼べる権利はできたよ。そういう意味ではラッキーじゃない?》
(フラフラ飛んでる単機に襲われて損耗なく倒せた。あー、まあラッキーか)
こんなクソ遅ビームじゃ空中の敵なんて100撃っても当たるわけがねえもんな。たった4発しかねえドリル型の頭悪いマルチミサイル撃つしかねえ。対地対空兼用のマルチミサイルはレスキューサンダーの虎の子だ。頭悪そうなドリルだけど。
《走破性は思ったよりいいね。スキーも標準装備されてるから雪原も楽なもんだじぇい》
(カタログ
《海中も潜れるみたい。深度は400メートル程度だけどスゲー》
(どうせ火器がワリ食ってる分だろ? どこでも戦える万能性より、得意な戦地選んで行くほうがいいわ)
万能機はよほど高性能じゃねーと戦えても苦戦するからなぁ。使う側が得意分野を選んで戦うべきだろ。
《短時間なら空も飛べる未来の車。まさに夢の車だ》
(そこまで行ったら素直に飛行機にしろや。なんでよりによって救急車なんだ……)
そのよりによった代物を選ぶこの展開がおかしいだけで、オレの感性はおかしくないよな? 雪原爆走する武装した巨大救急車はおかしいよな? 自分の感性に自信が無くなってきたわ。
《正面に反応3。地上型、虫系だね》
(チッ、さっきの爆発聞いて索敵範囲を広げやがったな)
《遮蔽の無い場所は音が遠くまで響くからねー。下手したらもっとくるよ》
戦えば戦うほど敵が来るパターンは御免だぜ。特にこっちのロボット? いや、乗ってる車両が貧弱じゃな。
―――ホント、オレはなんでロボットに乗らずに救急車に乗ってんだろう。どこで間違った? いやまあ今は目の前の敵だ、生きてたらガキどもに高い飯でもオゴらせてやる。
(小型ならこっちから接近してビーム叩き込むしかねえな。体当たり覚悟で
このビームは絶対に中距離以降じゃ当ったんねえ。敵が遅いビームの残滓に飛び込む可能性の方があるくらいだろう。ならこっちから近づくっきゃねえ。
《小型……小型じゃない!? うわ、後ろにすごく長いよ。ワームタイプだ。正面が小さいから騙された!》
(早速で虫系の嫌な面だな! あいつら絶対生物兵器的なエイリアンだろ!)
正面の面積が小さいほど攻撃が当たり辛い。この当たり前の理屈を生まれた時から持ってやがるのが虫だ。それを模して戦闘機にするのは理に叶ってるぜクソ。
《間を突っ切ると途中で長い胴体に跳ねられるかもよ!?》
(もう車体が速度に乗ってる! ここで変に曲がったら横転しちまわぁ!!)
足つきと違って横っ飛びなんて出来ねえんだよ車はよ! 接近、接近、さあ、火器は何が出てくる!?
《レーザー! 小口径だけど数が多いナ! 虫の足みたいにゾロゾロあるじょ》
(ブツブツとゾロゾロは嫌いなんだよクッソがぁ!! 見たくねえけど弱点は何処だコイツっ!? とにかく撃つ!)
怪盗を阻む金庫前の警報レーザー群みてえな使い方するヤロウだな! 何とか走り抜けられたが装甲周りがちょいと黒くなったじゃねえか。白くねえ救急車は救急車じゃねえんだぞコラ!
《うわぁ、マズいよ低ちゃん。ほとんど効いてない。あの鏡面みたいなツルツルの外装、ホントにビームを弾けるんだ》
マジか。鏡でレーザーとか弾けるなんて創作の話だぞ。普通はほんのわずかでも傷や歪みがある場所に熱が入って簡単に溶けちまうもんだ。熱は深海の水圧と同じでちょっとした脆さを見逃さない。
《外装の節目にはなんとかダメージが入るみたい。でも現実的じゃないなぁ。虫系はブツ切りにしても撃破できない事があるし》
(虫の嫌な所その2だな。パーツは壊せるが簡単に
《あ、反転した。メッチャ追ってくるよ。しかも速い》
(虫の嫌なパターン! しつっこいんだよテメーらは!!)
苦労してビーム当てても倒せない。何度も隙間を走り抜けられる可能性は低い。地形特化の連中には足で負ける。
(……何が何でもここで仕留めるしかねえな。救助中にウネウネされたらたまんねえ)
《三体だからタイミングが難しいね。それと念のために4発全部撃とう》
(あいよっ)
虎の子のミサイルだがしょうがねえ。頼むぞ、頭悪そうなドリ――――
(―――って、ロックオンしねえ!? どうなってる!?)
照準器のマーカーが酔っ払って全然ハマらねえじゃんよ!
《鏡面だ低ちゃん、アレのせいでミサイル誘導のレーダー波も画像認識もうまく機能してない。熱源探知もこの雪原であいつらはヒエヒエ、下手に撃ったら暖かいこっち来るよ!》
理にかなった連中だなオイ!! 雪原仕様の特別機かよ!
(これだからミサイルは! スーツちゃん、誘導無しで撃てるようにプログラムを弄ってくれ!)
《もうやってる……上手にデキマシター》
(ありがとよ! やっぱ最後に頼りになるのはスーツちゃんとロケット弾だぜ!!)
《でもこの発射方式だと側面向けないといけないよ。ホイールからバシュッと出るんだから。コケないよう大回りだと左右どっちかの一匹に追いつかれるかも》
側面向けるためにカーブすると、それ分相手は距離を詰めるわけだからな。ここは雪原、車道と違って曲がった相手を道の通りに追う必要もねえ。ショートカットで斜めに追いかけていけばいいだけだから曲がっただけ距離が詰まっちまう。
かと言って急カーブしたら横転だ。慣性のままに箱形の物体が転がることになる。
(なら、
《お、なーる。でも一度に撃てるのは2発になるから、もっと難しいゾ?》
(スーツちゃんってジョーカー加えて、配られたカードでなんとかすんのはこっちの仕事だ。まかせとけ)
《ウヒョヒョ♪ じゃあこっちは索敵をまかせとけ。タイミングカウント3、2》
(1!)
中坊にはデカいハンドルを思い切り切って、車体下部のスキー板を90度回転させてタイヤをロック! 雪原をドリフトに入った車両にかまわず照準だけに集中する。
ロケット弾は発射の時点で加速している銃弾と違って、撃ってからモーターに点火、そこから加速して
ロケット弾は飛んでる最中もフラフラで、動く的にはまず当たらねえ。だから普通は数を出して飽和攻撃で包み込む。性質上ほとんど動かない固定目標用だ。偏差射撃なんて出来る代物じゃない。
これがミサイルになると追尾性能や誘導もできるので動く的も狙える。が、逆に対策も多いからこっちはこっちで当たらねえんだわ。特にSワールドのミサイルは『画面の賑やかし』なんて言われるくらい無駄弾が多い。ロケット弾より高いのにな。
だが、どっちも爆発だけはどうもできねえ。至近で火薬の塊が吹き飛べば近くのヤツにはダメージが入る。そして真正面から向かってくるヤツには、タイミングさえ間違えなければ針の孔通すような射撃は必要無い。
で、オレにはタイミング完璧のスーツちゃんがいる。
「《ドリルラッシャー!!》」
発射されたドリル型ミサイル、改めドリル型ロケット弾が左右のワームに突き刺さる。爆発。即座に車体を滑らせて180回頭。もう2発オマケだ、もってけやクソワーム!!
「《ドリルフィニッシュ!!》」
左右の爆圧に煽られて長い長い胴体を上に持ち上げた中央の頭を、最後のドリルが粉砕した。
まるで三頭の頭を持つ蛇のようだった虫は、そのまま仰向けに倒れて導火線のような流れで胴体が爆発。真っ赤な火と、ドス黒い煙を噴いていった。
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