第23話 絶体絶命!? 取り残されたパイロット、命のカウントダウン開始!

「やーれやれ、鼻血程度の出血でオタついたもんだぜ」


《低ちゃんはかなり軽い方だよ。重い子は1日に生理用品が何個も必要だったり、辛くて動けなかったりするんだから》


「へい、恵まれた体に感謝します」


 よく分かんねえが星川って女の主導で後は任せろって話になって、ゲンも悪いし今日は無理せずマンションに戻ってきた。


 なんつーか腹が重くて股がむず痒い。症状の重いヤツは気分が悪くなったり貧血起こしたりもするらしいから、それよかだいぶマシなんだろうな。けど、これから毎月2、3日は同じ思いをすると考えると憂鬱だ。出撃の日と重なったら薬でも使うしかねえや。


《性別の差には徐々に慣れていくしかないねー。今後もマスタースーツちゃんが逐次サポートしてやるぞよ》


「頼んます師匠」


 女の体なんてマジで未知の世界だからなぁ。あの時はあんときゃほぼパニックだったわ。


 パニックと言えば最初の最初、一回目のスタートの時もパニくってたなぁ。訳が分からないうちに『ロボットで戦闘しないと生きていけない』なんて言われてよ。あー、具体的には『視聴率』が稼げないとだったっけ? 随分前だから曖昧だ。あれは、ええっと――


 ―――――――――そもそも、オレって誰だっけ? あれ?


《低ちゃん、焦げてる焦げてるっ》


「うおっ!?」


 うわっちゃあ、オレの初のパンケーキが……。あーダメだ、限りなく黒に近い焦げ茶色になっちまった。横着せず素直に余熱で火を通せばよかったな。まあ食えないことはねえけどよ。炭化してようがフードパウダーよりはマシだ。


《ホットプレートの火加減強いんじゃない? ベーコン焼く前に調節しなよ》


「だな。せっかくのベーコン様が台無しになったら泣くに泣けねえ」


《薄く切ってカリカリに焼いたベーコンの蜂蜜掛けなんて、ずいぶんニッチな食べ方じゃのう》


「ベーコンの塩気に蜂蜜のクセのある風味がけっこう合うんだよ、うまいぜ?」


《スーツちゃんは栄養摂取に他者の命を奪う事を必要としない、完全なる知生体なので興味にゃい》


「さようで。あ゛ー、肉の油のうま味がー、甘さと塩気で最高になるんじゃー」


 ハムにソーセージにベーコン。加工食品は怪しい物が多いから市販品は食いたくねえが、Sワールド産の代物なら大歓迎だ。


《うーん、夕飯としてはどうだろ。パンケーキにベーコンにフルーツとサラダ。どっちかというと朝食じゃない?》


「食えりゃジャンルは問わねえよ。朝にカレーでもラーメンでも本物・・ならな」


《それ言えるの若いうちだけゾ》


 まあオレだって朝の起き抜けにゴロゴロ揚げ物出されたら、いくら本物でもうんざりするとは思うがな。


「……揚げ物、揚げ物か。そういや失敗作コロッケ係の向……あー、えー………井?」


《正解。やっと覚えたねえ。クラスメイトの向井君がどうしたの》


「あいつを見た感じのカン・・なんだがよ、引き際しくじるタイプには見えなかったんだよな。どんな口車に乗ったら転戦なんてバカな事をしちまうんだか」


 あのオペレーターが何を言ってきたとしても、気難しそうな陰キャ君がハイハイ聞くとはどうしても思えねえ。


《今回は単機と複座の三人でチームを組んで出撃してたんだけど、気の弱い単機のひとりが断り切れなかったみたい。それで『見捨てられない』って感じになし崩し》


 ……バカが、放っておけばいいだろうに。そういうヤツこそ戦場の死神なんだぞ。巻き添えじゃねえか。


「転戦要請が来るってことは厳しい戦地だったみてえだな。その場のヤツだけで済めば援軍なんざ要らねえし」


《厳しいというか、殿しんがりにされちゃったんだよ。元からいたパイロットは敵を押し付けてさっさと脱出しちゃったのさ》


「ケッ! つまりお偉方のガキを助けるための生贄かよ!」


 転戦や再出撃が嫌がられる理由のひとつがコレだ。


 たまに貴重な出撃枠をあえていくらか空けてあることがある。それは再出撃を可能にするためだ。不測の事態に備えてとか基地の広報は宣ってるが、それなら毎回空けてなきゃ不自然だし、空けてあるときは決まってごく一部・・・・のパイロットが出撃するときだ。


 どう考えたって不自然だろ、お偉方のクソガキパイロットが出るときだけなんだぜ?


 再出撃だけじゃねえ、戦地が近いヤツもターゲットにされる。うっかりその日に転戦なんてしようものなら、ビビリ散らしたお偉方のガキを逃がすための囮にされるのだ。たとえ生き残っても碌に戦っていないガキにまで戦果が入る形にするために、勝手に共同撃破扱いにされたりする。


 基地側はなんのかんの理由をつけて、そんな事実はありませんと否定するがな。実情に言い訳の余地なんざねえよ。変則的だが前回のファイヤーアークの一件もお偉方のクソガキがらみじゃねぇか。


 そんな大抵のパイロットが嫌がる交渉を捻じ込むのがオペレーターって業の深い連中だ。あいつらは引き受けさせるだけでボーナスが入るから、そりゃもう死ぬほどしつこいらしい。実際にガンドールで戦った時に出てきたオペレーターもしつこかったよな。碌なもんじゃねえ。


「オレはホント運がいいぜ。スーツちゃんがいるからクソオペレーターなんざいらねえし、転戦要請もコール画面だけでヤベーかどうか教えてくれるからな」


《ウヒョヒョヒョ。唐突なバッドエンドは打ち切りみたいで最悪だからねー》


「あーあ、あいつら死んでも死にきれねえだろうなぁ……」


《? 三人ともまだ生きてるけど?》


 ――――は?




<放送中>


 S・国内対策課の仕事は足を動かすものが多いが、情報統制など電子戦を行うものも少なくない。その中には『Fever!!』が配信していると思われる映像の編集もある。


 パイロットが撃破した『敵』によって出現する資源が極めて貴重なものであった場合、他国からのコンタクトが裏表問わず激増して厄介なため、こちらの状況を整えてから公式に流すのだ。でなければ最悪、自国を除いた連合が組まれたのち、取り分を強引に決めて大量の資源を端金で持って行ってしまう。


 『Fever!!』はパイロットの妨害となる者を許さない。しかし、それ以外はほぼ放置でありパイロットの手を離れた案件は今も昔も権力者たちの好き勝手が横行しているのだ。


 それを防ぐための手段を講じる時間を稼ぐためにも、戦闘映像の編集は必須の作業である。


釣鐘つりがね。これはちょっと難しいぞ」


 彼の同僚でありサイバー関連を任せている冬季とうき。彼が眉毛をひん曲げて釣鐘つりがねの名を呼ぶのは本当に困っているときであり、そのことを知る釣鐘つりがねはデスクから顔を上げ同僚のほうを向いた。


 彼に任せているもので困るとすれば、それは例の映像しかない。そう結論した釣鐘つりがねは埃を被った無数のモニターが並ぶ、同僚の雑多な机に歩み寄る。


「この戦闘記録は誤魔化しようがない」


 流されている映像では10メートル級の小型機で70メートルもの巨体と互角に戦う死闘が行われていた。


「スーパーハイドザウルス。こいつをハイドザウルスに見せかけるってのがまず無理だ、映像いじってもすぐバレる。それにこっちの機体はスーパーハイドザウルスと因縁のある有名なヤツだ。記憶に紐づけられてるからみんな思い出す。そして――」


「ああ、いえ、あなたが無理と判断するならそれでいいんです。我々の役目は『可能な限り』ですから。『不可能を可能』にすることはありません。次の作業に移ってください」


 ボサ毛の同僚は釣鐘つりがねの言葉を聞いて「そうか」と短く納得すると、再び己の作業に没頭した。


 役職上は釣鐘つりがねのほうが大きく上であるにも関わらず、敬語を使わず行動も唐突で、身だしなみに至ってはフケが肩についている有様の同僚、名は冬季とうきケイロン。


 能力を優先し、数々のマイナスを委細承知で使っている釣鐘つりがねはともかく、他の者たちから遠巻きにされている男はそんなことなどまるで気にしていない。正確には生まれつきの障害で気が付かない。


 世の中には万能の才を見せる天才もいれば、欠けているからこそ突出した才能を発揮する天才もいる。彼は典型的な後者であり、その才能を発揮するには他者の理解と忍耐が不可欠である。


 多くの場合こういったクセの強い人材は自分も周囲も不幸な邂逅となり、日の目を見ることなく埋もれてしまう。だが双方にとって運が良いことに、二人は互いの要求と拘るポイントが合致していた。


 発掘した釣鐘つりがねは成果主義者であり、犯罪歴が無く反政府的な思想を持たなければ敬語も身だしなみもとやかく言わない。もちろん要求された成果を出す前提でだが。


 拾われた冬季とうきは個人本位であり、興味のある好きな事なら体力の続く限り何十時間でものめり込む。興味の無い話を聞かされたり、意味の分からない社会常識で怒鳴られるのが我慢ならないだけで、請け負ったひとつひとつのシンプルな仕事ならいくらでもこなす。


 彼は釣鐘つりがねが組み上げたスケジュール通りの作業を行っている限りは有能な人材であり、お互いにそれ以上は求めていなかった。


「ふむ……」


 釣鐘つりがねはデスクに差し戻された映像データを改めて眺める。


 獅子奮迅の活躍をするのは『ガンドール』と呼称される合体機のパーツにして、38サーティエイトなる分離機。その機体に搭乗するのは出撃二回目の新米パイロットであり、最近彼の仕事に関わりのあった少女『玉鍵たま』であった。


(やはり高額納税者になってくれました。非常によろしい)


 彼女の撃破したスーパーハイドザウルスは世界中で完全に枯渇している資源『金』を出現させた。現存品をリサイクルして回収を行っているが、どうしても徐々に目減りしていく資源であり、これがなくては小さな電子機器ひとつ作れない。


 国にとって回収場所にキロ単位で現れた純度の高い金塊は、所有しているというだけで今後重さ以上の価値が生じることだろう。


(しかし……この基地は問題が多いようですね)


 最終的に基地の広報が世間に流す切り貼りした映像からは影も形も見えないが、これまでも無編集の映像内ではパイロットを『無駄に消費』しかねない無茶な要求が行われる場面がたびたびあった。


(特に今回は未帰還者が多い。『誤魔化し』の効かないほどは困りますね)


 パイロットの親には『高額納税者』もいる。そういった『国にとって優良な人的資源』は『間引き』から守らねばならない。そのためであれば他のパイロットを『消費』するのは緊急措置として暗に認められている。


 ただし、多すぎては困る。それでは結局のところ財政上は損になってしまうのだから。


 さらに露骨なやり方はその他大勢の強い不満を生む。それもまた国にとってトータルではよろしくない。このあたりのさじ加減を出来るだけ自然にすることも基地長官には求められる。


(まったく出来ていません。火山という男、無能なパイロットを飼い殺す程度も出来ないのですか)


 『高額納税者』の子供だからとてパイロットとして有能とは限らない。才能の無い者は比較的敵の弱い昼の時間帯に適当に戦わせて、さっさと終わるよう誘導してやる程度のケアができないのか。もしくはこれに加えて合体機の中で『合体後に操作しない機体』にでも放りこんでおけばいいものを。


 中でも今回の出撃において突出して酷い、見ている側が恥ずかしくなる映像に注目する。


 雪原地帯が続く白い画面。その中で無様にも恐慌状態に陥った40メートル級が、碌に狙いをつけずに火器を乱射しながら数機の小型機から逃げ回る姿があった。


 機体名は『正義鋼人ジャスティーン3』。記載された性能を見る限り、同格よりも高性能とされる優良機らしい。通常であれば10メートル程度の小型機など物の数ではないと思われた。


 映像を戻して戦闘の初めから見たとき、釣鐘つりがねは『才能が無い』という言葉の意味を反芻した気分になった。


 攻撃を当てるとか避けるとか、そんな技術以前の問題。


(最初は強気……いえ、恐怖の裏返しですねコレは。有効射程に捉える前から撃っている。画面表示が見えていないんでしょうか。ああ、相手に気付かれてから合体するから撃たれまくってますね。せめて高度を上げなさい)


 妨害の中やっと合体したジャスティーンはすでにダメージが見て取れる。地上に降りたら降りたでまともに状況分析もできないのか、散開した敵の真ん中に居座って四方八方から撃たれ、ストレスから無駄な攻撃を繰り返していた。


(雪原に足を取られて動きが鈍いとはいえ、それなら割り切って一機に集中して撃てばいいものを。いちいち撃たれては振り返って……。そこまで全体の相手がしたければ、いっそ合体前の飛行形態に戻って爆撃でもすればいいでしょうに)


 このパイロットは根本的に知性が無い。本当に試験に合格しているのか? そこまで疑わしくなってくるほどの力量だった。


(技術も戦術選択も、何よりメンタル面でパイロットの適性が無い気がします)


 そして機体の計器から生じる警報や警告表示、撃たれたさいに伝わってくる衝撃が、いよいよパイロットの恐怖を頂点へと追い込んだ。


 後は酷いものだ。もう戦いではなく、暴れるジャスティーンを包囲した敵の小型機による一方的な狩りである。


 そこに援軍要請を受けてやってきた二機の味方が現れたとき、釣鐘つりがねはその後の一部始終を見て珍しく眉間に深いシワをよせた。


 ジャスティーンは援軍に来た味方と共闘することなく、一目散に逃走した。それまでの無様な右往左往が嘘のような鮮やかさ、躊躇いの無さで。


 残された二機は性能的に厳しいのだろう、敵を振り切ることが出来ず、なし崩しに殿しんがりとして戦うハメになっていた。


 結末は相打ち。最後の敵二機をなんとか同時に仕留めたものの、もはや自走できないほどのダメージを負った援軍は立ち往生。


 そこで映像は途切れた。


(不快、という感情を呼び覚ます教材になりそうですね)


 皮肉で締めくくり、釣鐘つりがねはジャスティーンのパイロットについて火山に釘を刺す事を決めた。


釣鐘つりがね、匿名のヤツの名前が分かった」


 どの件の誰の事か、などといちいち言っても仕方ないと知っている釣鐘つりがねは黙って冬季とうきのデスクに歩み寄る。データの送信はさせない。


 『整理してから送れ』。この一言を付けずにデータを送信させると、冬季とうきだけが把握できる生データで寄こしてくるため、端末に整理されていない英数字の羅列を使った件名がゴチャゴチャと表示されてしまう。整理好きの釣鐘つりがねには掃除したデスクにコーヒーを零されるようでたまらないのだ。


 かと言ってスケジュールを無視して『整理してから送れ』の優先順位上げろと言えば、冬季とうきという欠けた天才は混乱してしばらく使い物にならなくなる。


 結局、不測の事態に対しては周囲が動いてやるのが一番早いのだ。


「木之元トトリ……、生徒。やはり学校関係者でしたか」


 ガスの爆発事故で収めた一件を蒸し返し、事実を明るみにしようとする者が現れたのを把握するのは簡単な事だった。この国で使われているネットワークは予め指定したキーワードを拾い揚げ、危険度を予測するシステムを構築している。


 プライバシーへの配慮、という上っ面の言葉から一定の匿名性こそあるが、組織的に本腰をいれて捜査すれば暴くことが可能な程度でしかない。


 ましてこちらには天才、冬季とうきがいる。彼ひとりいれば人海戦術さえ必要とせず、一般人程度なら数分で特定が可能となっていた。


「玉鍵たまの暴力事件、という感じで話を広げようとしていますね。ふむ………強い嫉妬があるようです」


 ピックアップされたワードから彼女の発信した内容が時系列順に並べられる。それを読み解いていけば木之元という少女の意図や思考は釣鐘つりがねには丸わかりだ。


 暴力的なクラスメイトを嫌うという形での流言だが、事実を過剰に解釈したものや事実無根の話も信ぴょう性が高いかのように流している。


 特に玉鍵がスラム街の住人と男女の付き合いがある、武器を所持しているという嘘はいただけない。


 文字から透けて見えてくるのは優秀な同性への強烈な劣等感だ。確かに恐怖もあるようだが、その比率は比べるまでも無い。


「こちらも釘……いえ、頭を撫でて・・・おいたほうがよさそうですね。自分の身の丈を分かっていないようだ」


 すでに一般の社会人が払う数十年分の税金を、たった一回の所得税で収めた玉鍵は『高額納税者』。釣鐘つりがねにとって守るべき大切な『将来性のある市民』である。木之元トトリの親も高額納税者ではあるが玉鍵の比ではなく、トトリ自身はまだ親のすねかじり。国にとってどちらが大切かなど決まり切っている。


「まずは話し合ってみましょう。彼女のご両親もまた、納税義務を果たす立派な市民ですからね」





《えーと、操縦席を除いて3人分は収容スペースがあって、できれば治療機能があって、ひとりで動かせるロボット……んー、解釈を広げてギリ該当しそうなものは……ヒット》


「さすがスーツちゃん。どんなんだ?」


《レスキューサンダー。緊急戦隊マシンサンダーの構成パーツの1機で、20メートル近い巨大救急車のフォルム。担当は『足パーツ』だね。低ちゃんの嫌いな》


 スーツちゃんの秘密機能のひとつ、網膜投射機能でオレの目に大まかなロボットの性能やプロフィールが表示される。


 50メートル級スーパーロボット『緊急戦隊マシンサンダー』。五機合体のロボットで、合体前の特徴は『現実の車両を模している』事だ。

 パトカー、消防車、救急車、ダンプ。これに各部の強化パーツ的な役割のトレインが分離合体して『マシンサンダー』になるらしい。


 救急車は左足担当で名前は『レスキューサンダー』。どこの道路を通れるのかって大きさデカさの、クソデカマシンだ。車両の全長が20メートル級だもんな、横幅もそりゃデカいだろうよ。人命のためなら街を踏み潰しながら出動するのかコイツは。


《戦闘用の装備は貧弱だけど、低ちゃんが要求した機能は全部あるよん》


「ならこいつだ。倉庫で埃被ってるなら文句は出ねえだろ」


《チームはまだ二名生き残ってるから、そっちに話を通さないとシトラブルになるかも》


「シトラブルってナンダ」


《死・トラブル!》


「やかましいわ」


《こんなスーツちゃんに一言言わせてほしい》


「どうぞ」


《死と、ラブると書くと、ラブコメ風味の昭和ヤンキー漫画っぽくなる!》


「ホントにどうでもいいわッ、……はぁ、ナシつけとかにゃならんな。メンドクセェ」


《でもいいの? ―――次の出撃までに死んでるかもよ?》


「……取り残された気持ちは嫌ってほど分かるからな。一回くらい、誰か助けに行くヤツがいてもいいだろ」


《二度、三度とお願いされなきゃいいねー》


 はっ、オレは泣いてお願いされようが断る事が平気なんでな。取り残された原因のアホとは違うさ。


《GARNETちゃんカワイソス。また振られちゃって》


 それを言うな……ちょっとは悪いと思ってんだからっ。オメーは悪いロボットじゃねえよGARNET。


「ま、視聴率のためだ。こっち・・・のが良いんだろ?」


《ひとつくらいは救助エピソードもほしいからねー》


 ガラじゃねえのはオレが一番分かってる。面倒くせえし、コレ一回こっきりだ。レスキューの真似事なんざ金輪際しねえぞ。


 ―――だからガキども、なんとか次の出撃まで生きてろよ。

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