第19話 38、孤独な闘い

<放送中>


 38サーティエイトスペシャルの銃口が火を噴くたびにスクラップが量産される。


 かつて国家の警察を自称した国において、警察の訓練学校で使われていた銃を模した38サーティエイトスペシャル。地味ながらも頑丈で扱いやすい信頼性の高さを持ち、その特徴をそのまま戦闘ロボット用に落とし込んだハンドガンタイプの火器である。


 スーパーロボットの使う火器としては決して強力とは言えないその銃で仕留めた数、実に21体。内訳は小型機18と中型機3。


 現れた敵全体の半分以上を玉鍵の駆る38サーティエイトが一機で片づけてしまった。


 サンダーバードの500ファイブハンドレッドが小型機2、45フォーティファイブの花鳥が小型機3、自身のナインが同じく3で撃破は合計8機。これまでの戦績でいえば悪く無い。むしろかなり好調だ。


 つまり玉鍵が圧倒的であり、それに引っ張られる形の戦果なのだろう。降下の時点で14機、さらに味方の着地をフォローしつつ中型を含む7機をひとりで撃破しているのだから。


 こちらの戦果は言わばおこぼれだ。脅威として優先的に狙われた彼女はそれを逆用し、敵を他のメンバーの攻撃し易い位置へと誘導しながら立ち回り、生まれたスキを自分たちが刈り取っていったからに過ぎない。


(基地の撃破レコードはとんでもないことになっているだろうなぁ)


 50メートル級スーパーロボットでも一回の出撃でダブルスコアは稀だ。それがもう一回りしてしまっているのだから、今頃基地のラウンジはあまりの異常事態にギャラリーが沸いているだろう。


500.<AMAZING! もうメチャクチャだぜ>


45.<すごい数で死ぬかと思ったら終わってた>


 撃破が多いということは出てきた敵の数が尋常ではないという事。もし三人だけだったら絶望している大群を相手にあっさり倒し切れてしまったことに雉森も兄弟たちも驚きを隠せない。


(ひとり強い人が入るだけでこうも違うのね……)


 これまで自分たちもソロでそれなりに活躍してきたはずで、だからこそガンドールのパイロットに選ばれたと自負している。しかし玉鍵との隔絶した実力差を見せつけられてしまうと、持っていたなけなしの自信が消え失せてしまいそうだ。


 彼女は、玉鍵は劇薬、あるいは毒だ。本人にその気はなくとも周囲が勝手に影響を受けてしまう。この戦果を自分たちの当たり前と勘違いするようでは仲間パイロットがおかしくなるだろう。あるいは実力差にコンプレックスを抱えて自滅しかねない。


(玉鍵さんがいつもひとりでいるのは、もしかしたらそういうこと?)


 周囲が彼女の力にあてられてどんどんおかしくなる。悪い形に変わっていく知り合いの姿を見せられた玉鍵はどう思うだろうか。


 もしかしたら彼女は、他人を避けることで少しでも悪化を防ごうとしていたのかもしれない。それで自分がひとりぼっちになっても。


(天才は孤独、か)


 周囲との落差に苦しみ他者を嫌悪する者もいれば、周囲のためにあえて孤高となる者もいる。齢14歳にして巨大な才能を背負った少女は、決して周囲に嘆くことなくひとりとなる道を選んだ。たぶん、そういうことなのだろう。


 そんな彼女が自分たちに付き合ってくれているのは同情だろうか、あるいは知り合いの顔を立てたからか。いずれにせよこの大きすぎる当たりくじのお陰で自分たちの望みは実現に王手をかけたと感じる。


38.<ひと段落。次の指示を>


 玉鍵機からの通信に思考を引き戻して、雉森は周囲の探索に入るようチームメイトたちに指示を出す。いくら何でもこれ以上は出ないだろう、しばらくの間は。


 事前の取り決めとして、敵を発見したら種類を問わず戦闘には入らず合流してから戦うと決めている。早く弟のかたきを見つけたい気持ちはあるが、それで焦って死んだら元も子もないし、合体機であるガンドールには一機でも欠けたら合体できない。


 あの忌々しい強敵はガンドールにならなければ太刀打ちできないだろう。さすがの玉鍵でも機体の根本的な火力不足はどうしようもないのだから。


 自重したギリギリがこの『分離機のまま戦わずに索敵』作戦だ。契約前に玉鍵から戦力分散の危険について苦言を貰ってしまったが、彼女はこちらの事象を理解しており、それ以上は言われなかった。


OP.<雉森さん。建造物内を調査願います>


 不意に通信を入れてきたオペレーターに雉森は眉を寄せた。基本的にオペレーターは撃破報告や近くの味方への誤射予防で警告をいれるくらいしか仕事は無い。周辺の詳細な地形マップや確認されている敵の種類など情報は有料であり、パイロットが要求しない限りは開示されない。こんな指示をしてくるなど普通は無い事だ。


「どういう事? こっちにはやることがあるんだけど」


 嫌な予感が頭の中を渦巻いている。その予感の形は翼を広げた鷲のような髪型の、ヒゲを生やした男の姿をしていた。


OP.<長官の指示です。報酬は別途支払うと>


「お断りよ!」


 忌まわしい記憶を掘り起こされた雉森は反射的にそう叫んだ。


 あいつのしつこい要求のせいで弟は死んだ。その事実が強烈な嫌悪感となって拒絶の言葉になり吐き出された。


 それでもオペレーターとのやり取りは続く。何度断ってもしつこく言い募る相手に雉森は辟易とした。


(こいつ、自分が別口で報酬を貰えるからって!)


 パイロットの意志が最優先と謳う『Fever!!』の目が光る手前、基地の長官だろうとパイロットに『命令』はできない。あくまで指示、もしくは要求が限界だ。


 そしてそんなパイロットへの『交渉』を行うのがオペレーターのもうひとつの仕事である。


 出撃時、パイロットが指定した戦域以外の区域に変更させて送り込んだり、ごく一部・・・・の味方の救援として既に戦闘を終えたパイロットを再び戦闘区に送り込む交渉もオペレーターが行う。そういった指示は基地側からの要求であり、これを飲ませたオペレーターには基地から報酬があるのだ。


「いい加減にして! あんたの小遣い稼ぎのために戦ってるんじゃないわよ!!」


 通信を切れたならとっくに切っている。残念ながらガンドールチームは雉森が代表してオペレーターとのやり取りを行っているので簡単に切るわけにはいかない。それを知っているからこそオペレーターもしつこいのだ。


 オペレーターは契約制でありパイロットごとに個人契約を結んでいる。合体機の場合は全員がオペレーターと契約するのは無駄が多いため、節約のためにひとりが契約してやり取りを受け持ってもらうパターンが多い。ガンドールチームはこの典型でサブリーダーである雉森が担当していた。


OP.<怒鳴らないでください。こちらは長官の指示を伝えているだけなんです>


 モニター越しに薄笑いを浮かべる女オペレーターに雉森は殺意を覚えた。


38.<雉森、音声を拾った。こっちの通信をオペレーターに聞こえるくらいの音量にして>


 急に割り込んできた玉鍵の不可解な要求に雉森は眉を顰める。しかし、どこか頼もしい彼女の提案に乗ることにした。


 音量を大きくする。それはちょっとした裏技で、オペレーターの通信を契約していないチームメイトに伝える手段としてしばしば行われる行為だ。ただしそれはオペレーターの通信に対してであり、パイロット側が音量を大きくして情報を要求しても無契約のオペレーターは質問に答えないのが普通だ。


38.<クソオペレーター、おまえは卑怯者だ>


OP.<雉森さん? これはどういうことですか?>


38.<おまえは伝えているだけじゃないだろう>


OP.<契約外の方と話すことはありません>


38.<伝えるだけなら拒否されて、それで終わり。なのにあんたは何だ? いつまでもグタグタと>


OP.<繰り返します。話すことはありません>


38.<小遣い稼ぎしてないで契約した仕事してろッ! クソオペレーター!!>


OP.<!? つ、通信終わりますッ>


 音声越しにも伝わってきた玉鍵の怒りに気押されるように、オペレーターのほうから通信が切られる。


(私にはあれだけしつこかったのに……)


38.<しつこく言えば言う事を聞くと思われてる。もう・・舐められるな>


 もう舐められるな。その言葉を聞いた瞬間、玉鍵の辛辣なほどの苦言は雉森の頭の中を一気に駆け巡った。


(そうよ……あの時も私がちゃんと断らなかったからこんな事になった。こんな事になるような人間だから、あのヒゲやオペレーターがしつこい。どうせ最後は言う事を聞くと、そう思われている!)


 グツグツとした怒りが沸いてくる。無遠慮な長官に、無礼なオペレーターに、情けない自分自身に。いつまでこのままでいるつもりかと。弟まで死なせてまだ懲りていないのかと。


OP.<雉森くん。火山だ>


 通信機越しに聞こえてきた声に、さらなる煮え立つマグマが湧き上がる。不発に終わった交渉に埒が明かないと踏んで当人が出張ってきたと雉森は直感し無意識に奥歯がギリっと軋んだ。


OP.<この建造物の調査は極めて重要なことなのだ。改めて調査を指示する、やってくれたまえ>


「嫌です」


OP.<……相応の報酬は払う。ここは私の顔を立ててくれたまえ>


「嫌です」


OP.<雉森くん! これは必要な事なのだ!>


「嫌です」


OP.<やらねばならんのだ雉森くん! 私のカンに――>


「うるせぇぇぇぇぇッッッ!! 嫌だっつってんだろーが!!! 通信終わり! 死ねクソ長官!! 弟返せ人でなし!!」


 タッチパネル目掛けて拳を叩きつけるようにぶつけ、基地からの通信を完全にシャットアウトする。


 ナインのわずかな稼働音だけになったコクピットで、雉森は鬱陶うっとうしいヘルメットを脱ぎ、鼻をすすりながらも不思議な解放感に包まれていた。


(……そっか、私はずっとコレが言いたかったんだ)


 雉森は今日までお行儀よく自分だけを責めていた。しかし、心の奥底では事の発端である長官を罵りたくてしょうがなかったのだ。頭の中でどれだけ悪態をついても言葉にはしなかった事が、こんなにも解放感を感じるほど辛かったのだ。


 悪口を言ってはいけない。他人を責めてはいけない。子供の頃から受けてきた母親の躾は確かに素晴らしいものだし、愛情を感じるものだった。


 けれど、それで我慢するには家族の死は重すぎる。


 まだ10代の自分が感情のままに怒鳴って何故いけない。嫌いなヤツを嫌いと言って、心の底から腹の立つ相手を罵って何故いけない。弟の死の間接的な原因相手にまで、腸が煮えくり返るほどのこの気持ちを押し殺さなければいけないというなら、いっそ存分に嫌って完全に関係を断ったほうがマシだ。


 今なら分かる。我慢を拗らせ波風立てない態度がつけ込まれた原因だと。つい自分が我慢すればと考え出し、思考停止してしまう性格をあの長官やオペレーターのような利己的な連中は利用してくるのだと。


(もうやめ、やーめた。大鷹、お姉ちゃん強くなるね)


 母親の躾は間違っていない。自分が時と場合を弁えなかっただけ。だから今後は利己的な人間に利用されるような節度や我慢をしない。それでも寄ってくるようなヤツには思い知らせる。伊達に何度も命張ってパイロットしてるわけじゃないのだから。





9.《うるせぇぇぇぇぇッッッ!! 嫌だっつってんだろーが!!! 通信終わり! 死ねクソ長官!! 弟返せ人でなし!!》


(うわ恐……、鬱憤溜まってる感じだな。盗み聞きしてるのが居た堪れねえや)


《しつこいナンパ男に面倒になって持ち帰られるタイプから、ガチでビンタするタイプになったみたい。良きかな良きかな》


(まー気持ちはスゲー分かる。ホントあのヒゲしつけえわ)


《それでもあのヒゲ、カンのほうはニアピンでそこそこ良いみたい。狙ってる獲物はあの研究所の中っぽいよ?》


(HYDE ZAURUSが? それにしちゃ建物のサイズが小さくねえか?)


《相手も機械だから修理や整備なんかはするでしょ。たぶん見た目と違って格納庫になってるんだよ》


 一部のスーパーロボットみてえに研究所がそのまま格納庫になってるパターンかよ。あれか、プールが割れて下から戦闘ロボがせり上がってきたり、岩礁に空いた穴から飛び出してくるのか?


(となりゃあ動き出す前に格納庫ごとぶっとばすのが楽でいいな。けど、さすがに38サーティエイトの火器じゃ厳しいか? さっさとガンドールに合体するにはこいつらどう誘導すりゃいいかねぇ)


《建物の調査を拒否しちゃったからのう。今さら調査しますはナイじゃろう》


 なぜ急に婆さん口調? 言い分には同意するけどよ。建物を撃ってりゃそのうち出てくるとは思うが、それじゃ意味ねえしなぁ。


《振動検知。ちょっと遅かったね。向こうも準備『デキちゃった(ハート)っ』みたい》


(言い方がおかしいッ、って突っ込んでる場合じゃねえや)


「(おい、)建物から何か出てくる(ぞ)!」


 スーツちゃーんッ、さっきは汚い言葉OKだったろーが!? また縛りが戻りやがったクソッ。


45.<やっぱり廃墟じゃなかった!? さっきまでの敵もここから出てきてたんだな!>


500.<BAD! またかよ。次は何機だ?>


「合体 (すんぞ)! 早く(しろ)!!」


9.<え!? ちょ、ちょっと待って!>


《熱量増大! ブレイクブレイク!》


「逃げろ!!」


 フットペダルを蹴っ飛ばしてブーストを全開で吹かす。38サーティエイト細身のボディで地面を擦るように横っ飛び。転がりながら銃を撃つ銃撃戦定番のアクションと違う点は全力で逃げたところだ。


 分かる、これはヤバイ。1秒たりとも同じところにいたくねえ!


 廃墟の壁と50メートル級のロボットが通れるほどの扉が一瞬赤熱化し、迸るビームの光のラインが荒れ狂う。


「《あっぶ》!」


 照射された無数のビームは全方位に向けて放たれただけでは飽き足らず、そのまま酔っ払いの蛇行運転のように周囲を飛び回った。その一部は38サーティエイトのいた場所をガッツリ抉っている。


 急速に熱せられた着弾地点が爆発するように弾けた感じ、これは熱線砲ブラスターの類か? 38サーティエイトみてえな細身のロボットには相性の悪い広範囲系のエナジー兵器じゃねえか。厄介な火器もん持ってやがる。


 エナジー兵器はだいたいビーム系に分類される。だが一纏めにビームと言っても色々だ。粒子を加速する加速器から放たれるエネルギーもビーム扱いだし、光の波形を揃えるレーザーもビームと呼ばれることがある。中性子を利用した物騒な代物なんて誰が考え付いたやら。粒子加速砲も現実なら放射能撒き散らす最悪兵器だがよ。


 そんな混合甚だしいビーム系のひとつが熱線砲ブラスターだ。同じく高熱で焼き切るレーザーとは微妙に違い、有効射程は短いが広い照射範囲を持ち、大気中に拡散せずに着弾まで熱量を保ったまま直進する熱線、という訳わからんビームである。


 普通は熱なんて出した端から拡散する。デカすぎる火炎放射と同じで言っちまえば出した本人が真っ先に熱の被害を喰らうはずの代物だ。


 それなのにSワールドはこれを現実の定番兵器にしちまった。その名も熱線砲ブラスター、ちょっとカッコイイぜ。自分テメエで喰らうんじゃなきゃな!


「生きてる (か)!?」


500.<No Problem! ギリギリだったぜ>


9.<平気よ!>


45.<クソ、足掠めた。でも中枢は無事だ>


 比較的建物の近くにいた45フォーティファイブがビームの照射範囲に入っちまったようだ。ロックオン無しでブッ放してきやがったから警報も鳴らなかったろう。オレも近かったがスーツちゃんが知らせてくれたからコンマ何秒の差で何とか無傷で逃げられたぜ。


 元々半壊していた研究所跡がいよいよ瓦礫の山に成り下がる。その瓦礫を吹き飛ばして地の底から這い上がるように現れたのはあまりにも醜い鋼鉄の恐竜。


9.<SUPER HYDE ZAURUS……>


 雉森の声には怯えがあるな。死人が出た相手だ、無理もねえか。他の面子も大なり小なり怖気ビビりが出ている。それも問題だがこりゃ困ったぞ。


(参ったな、簡単に合体させてくれそうにねえや)


《50メートル級より鈍いとは思うけど直線の脚力は健在っぽいね。距離取って合体とは行きそうにないよ》


 相手の追い足考慮に入れると厳しいな。こっちは瓦礫をいちいち避けにゃならんのに、向こうは巨体に任せて瓦礫なんざ蹴散らして追ってくるだろう。逃げるだけなら全員がバラバラに逃げりゃいいが、こっちは全員揃わないと肝心の合体ができねえ。


(……しゃあねえ。いっちょ気張るか)


《おつ。頑張れ低ちゃん。サポートは任せろ、バリバリー》


「こっちで引き付ける。その間に3機で『ダブルアクション』して (くれや)」


9.<無茶よ!? こんな――>


「問答してる場合じゃない。走れ!」


 早速撃ちたそうに動かした脚部から突き出た内蔵式の砲身に向けて、右の38サーティエイトスペシャルを叩き込む。6発ブチ込んでやっと破損ってトコか。比較的脆そうな箇所でこれじゃ、どれだけ撃っても本体中枢に損傷はいかねえぞこりゃ。


 足元の露払い用についているらしいティラノなんとかの小せえ腕代わりのガトリングや、マシンガンの雨をジグザグで躱す。さすがにこの機動は38サーティエイトでも負荷がキッツイな。耳から変な汁が出そうだぜ!


500.<MORI! Hurry Up!! 急げ!>


9.<でも!>


(まだそこにいたのかよ! 殺す気か!!)


《味方を置いてく葛藤に苦しむヒロインの描写入りまーす》


(ああもう! 命懸けの真っ最中に不謹慎な無機物め!!)


《ガーンバレ♪ ガーンバレ♪》


 この野郎! 他人事だと思いやがって!


45.<玉鍵に賭けよう! このままじゃ本当に全滅だ!>


9.<~~~~!!ッ、20秒! 20秒持たせて玉鍵さん!>


「(うるせえ早よ)行けぇ!」


 やっと行きやがったか! 手のかかるガキ共が、こっちはちゃんと仕事してんだからそっちもさっさとしろや!!


《20秒と言ってたけど最低50秒はかかると思うよ変形バンクだし》


 なんのこっちゃ? だが20秒以上掛かるのは確実だろうよ。最低限の安全圏まで退避してからの合体だ。行って戻ってでも40秒近くは掛かるだろうさ。


(つまりはありがたいぜ! このデカブツの主要な火器を潰しておかにゃあオレが合体できねえからな!! 制限時間が増えたって事さ!)


 最低でも肩周りにある大型のビーム砲は壊しておきてえ。それにHYDE ZAURUSと同じような装備とすると口の中のメガビームが心配だ。

 出来れば口の中の砲身を潰すか、さっさと無駄撃ちさせてえところだ。そうすりゃ前回みてえに恐さが半減する。奥の手は切るまでの時間も有効打だからな。撃てるってだけでおっかねえ。


2段回合体ダブルアクションで合体してきた3機に、最後のパーツとして飛び込む形で合体するからねー。目の前で悠長に合体するより早いけど、1回くらいは撃たれると思うよ?》


 ガンドールの合体形式には数種類ある。ひとつは全機そろってオーソドックスに胴体に右足、左足と順次合体して最後に頭がくっ付く『1段回合体シングルアクション』。


 もうひとつは一部パーツが先に別の場所で合体して合流するパターン『2段回合体ダブルアクション』だ。


 直前まで牽制するヤツがいないと合体できねえって時に使う手らしい。ただし、いつもは45フォーティファイブナインの役割みてえだがな。というのも頭パーツが胴体に合体出来ればガンドールの上半身として変形でき、そのまま飛行しつつある程度の攻撃力が発揮できるのだ。


 となりゃ後は『ガンドール上半身』の援護を受けて、順次残りも足として合体すりゃあいいって寸法である。飾りか何かかよ足。やっぱ足担当ロボはダメだな!


 で、せっかくの頭パーツなのにスゲー過重労働することになったわけだが、これはしょうがねえ。ナイン45フォーティファイブもこのデカブツの相手は無理だろうからな。スーツちゃんって奥の手があるオレが何とかするしかねえや。500ファイブハンドレッド? あれはどんなパターンの合体でも起点だから動けねえんだよ。


 怒るって感情があるのかしらねえが、こっちにチマチマ攻撃されてまるで元ネタの恐竜みたいな動きや咆哮を上げるHYDE ZAURUS。もち本物モノホンの恐竜は見た事ねえけどな。暴れるさまがいかにもそれっぽいって話だ。


 ……怒るなよ。もうちょいオレと遊ぼうぜ?

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