第18話 再始動・ガンドールチーム!
《今回は詳しく調べるから、立ち上げは低ちゃんだけでヨロ》
(おう。頼んます)
<嬢ちゃん、不具合があればすぐに言え。ちょっとスティックが太いとかでもだ>
「大丈夫 (だ)」
前任は男だったが同年代の14歳で、それも比較的小柄なガキだったみてえだな。座席や操縦棹は微調整程度で済んだ。これがオレの前の体だったら操縦棹のグリップにテーピングでもするところだぜ。……マジでちっちぇな今の体は。身長が150台だもんなぁ。
ロボットの状態はオレの見た感じは上々だ。スーツちゃんの報告待ちだが、たぶん平気だろ。これもBULLDOGみてえにスクラップ寸前とかなら今度こそ格納庫で殺戮ショーの始まりだぜ? 整備どもよぉ。
おーおー、ツナギ着た若人どもが忙しくチョロチョロしてる。10メートル上から見下ろす人のサイズ、ちょっと懐かしい目線だな。
信じられるか? ガンドールは分離機のロボットからして、拳銃に手足つけたみてえなフォルムなのだ。胴体なんざ、まんま
もしかしたら巨乳の女はこんな感じの視界なのかねえ? 正面のメインモニターからじゃ全然下が見えん。
<整備のほうで慣らしは終わっとるが内装は新品だ、ハードスイッチ周りが固いかもしれん。押すときはしっかり押せよ>
「分かった」
前任の死因は操縦席周りを損傷したさいに飛び込んできた破片に、主に腹部を傷つけられての出血多量。帰ってきたときは席周りが飛び散った血でヒデエもんだったらしい。
ジジイの指示で洗浄だけでは不具合が出るかもしれないと、内装の多くを新品に取っ換えたとか整備のガキたちが言っていたっけか。
周りの装甲が熔解して脆くなるほどのビームを受けているからな。実際、内部機構にも潜在的なダメージはあっただろうさ。
パイロットとしちゃとりあえず平気だろうで、不安な部品をそのままにされちゃかなわねえ。戦ってる最中に壊れられたらたまんねえからな。新品万歳だ。
いいよな、こういうカチカチ言うスイッチ。タッチパネルで大体は出来る時代だが、こういう
整備士は大変だろうがな。血とか肉とか飛び散るとスイッチの隙間に入っちまうから、掃除はさぞ面倒だろうよ。
……この席で死んだ前任の中坊は
大鷹よぉ、失血死も苦しかったろうが蒸し焼きよりかはまだマシだと思うぜ? 家族に見せる死に顔はまだ見れるものだったろうさ。
操縦席にあんたを感じるものはもう何もないが、あんたを殺したヤツの首くらいは、いずれ向こうの空に掲げてやるよ。
《フルスキャンしゅーりょー。問題なーし》
(おつ)
《見た目はキワモノだけど結構いいロボットだね。何ならそのまま居座って、抜けたパイロットの枠を別に勧誘してもいいくらいだヨ?》
(まあ考えちゃいる。あいつらが辞めてもロボットが無くなるわけじゃないからな)
パイロットの引退したロボットは戦果を挙げたものなら一定期間保管される。その間に別のパイロットが適性を示せば斡旋されることもある。ガンドールは戦果を挙げたロボットと認識されているからかなりの期間保管されるだろう。
逆にあまり戦果の無かったロボットは解体されて、
物の話じゃ建造と解体は大まかな部分をエリート層でやって、組み立て出来るくらいのパーツ工程になったら一般に下りてくるらしい。プラモデルか何かかよ、スーパーロボット。
廃棄の方は乱暴なもんで、碌に修理もせずにロボット用のエレベーターで底辺層に下げられる。
ただし、出てくるのは技術データと資材だけ。その技術を理解して、習得して、加工したり組み立てるのは人側がやらにゃならん。ロボットによっては建造に必要な専用設備から作ることになるって話だ。
『Fever!!』の配信してるらしい映像で、たまにその基地専用のスーパーロボットが発進していくときに映るあの珍妙なデザインの基地。アレって、元はスーパーロボットを建造するための設備を流用してるとか聞いたことあるんだよな。マジかいな?
9.<玉鍵さん、実際に
雉森、から通信が来た。モニター越しの通信は画面に名前が表示されるから助かるぜ。なーんか名前をド忘れするんだよなぁ。脳も新品になってるとはいえリスタートで何回分も詰め込んでるから新しい情報が入んねえのかな? でもなー、他の事はスゲー覚えるんだよなこの体。
「悪くない」
このサイズのロボットとして考えれば全部の分野で及第点以上はいってる。それもかなりの分野で20メートル級と
500.<今日はTRAININGのつもりで行こうぜTAMA>
「よろしく」
サンダーバード、何度見てもすげえ名前だなこの色黒マッチョ。こいつが乗る
45.<玉鍵、今日はどんな敵が出ると思う?>
「知らん」
花鳥、このインテリっぽい眼鏡はなんか変な質問をしてくるな。
それに比べてなんで胴体のデカい弾の周りがスカスカなんだよ
45.<……そうだね、簡単には明かせるわけないか>
9.≪やめなさい。その話はもう終わったでしょ≫
500.≪今更だぞ花鳥。オレたちが欲しいのは強いってところだけだろ?≫
9.≪パイロットの技量でも予知能力でも、玉鍵さんに私たちが求める強さがあればそれでいい。そう決めたはずよ≫
(これスーツちゃんの仕業か? 兄弟の内緒話が漏れてんぜ)
《ちょっと設定を弄ってみましたぁ。向こうには低ちゃんの操縦席周りの音は拾えないから気付かれないヨン》
(ほーん。にしても予知能力ねえ、スーツちゃんはそんなケチな力よりもっとスゲー隠し玉だよ、花鳥さんよ)
《どうも、ほどよく消える魔球28号デス》
(隠し玉ってのは球種じゃねえよ。それより装備の最終確認、頼んます)
《ウィ。火器は腰のホルスター型ラックに
BULLDOGに比べてスゲーシンプルだな。遠近ほぼ二丁拳銃だけで何とかしていくスタイルだ。
胴体の大砲はいわゆる必殺技枠で威力はあるが使うのはかなり難しい。反動に耐えるために強制で射撃姿勢を取らなきゃいけないので動きが止まっちまうしよ。
ま、これはキャノン系火器の仕様だ。よほどドッシリした腰の強いロボットじゃなきゃ二足歩行で実体弾系の大砲はまともに撃てねえ。動きながら無理に撃っても、あらぬ方向に弾が飛んだあげくに反動でスッ転ぶことになる。
<ガンドールチーム! ぼちぼちじゃ、今回も生きて帰ってこいよ!>
リスタート二回目の戦場か。これまで二回目は楽な場合が多かったが、どうなるか。
ガンドールに参加する限りは戦場の設定権はオレには
ゴチャゴチャとデータ上の区別のためにクソ長いコードがついちゃいるが、オレからすりゃゲートの向こうの望遠映像だけで十分だ。
タイトルは『謎の研究所跡』ってところか? よくあんな怪しさ全開のステージに行こうとしたな先代さんよ。オレなら絶対選ばねえ。
電磁カタパルトで段階的に加速され打ち出される
ぼちぼちタイムリミット。本格的に殺す算段をつけねえと不良整備士が底辺層に行っちまうな。生きて帰ったらその足で殺しに行くか。
生きて帰れたら、な。
<放送中>
降下するほど見えてくる禍々しい廃墟に雉森は無意識に喉を鳴らした。
思えば二ヵ月前、身に感じた危険の気配を信じ切れず、基地のしつこい要請にウンザリして言われるままにここに来たのが間違いだった。
(何が私のカンに間違いは無いよ、あのヒゲ)
日常生活の中でもお構いなしで、昼も夜もなく説得という恫喝に近い要請をしつこくしつこくしてきたあの長官。そのせいで雉森がノイローゼになりかけ、見かねた弟が『一回だけ』と姉を守るために要求を受けてしまったのが最大の失敗だったのだ。
もっと自分が毅然と跳ねのけていれば、今も弟は生きていたかもしれないと思うと蹲りたくなる。
500.<MORI、降下はオレの後ろだろ?>
降下を速めてサンダーバードが
装甲の厚い
大抵の場合において対空攻撃はまず大きな目標を狙って放たれる。サンダーバード機が盾とカナリアの役目を果たし、残りのメンバーが発射地点を割り出し攻撃するのが降下における一番被害の少ない戦法だった。
「ごめん、変な事を考えてた」
(きれいな降下……わずかにもヨタつかない)
スーパーロボットの凹凸だらけの機体は大気の膜と気流の流れとの相性が最悪に近い。機体が自動で行う姿勢制御だけでは完全には姿勢を保持できず、パイロット側で微調整してやらないと降下地点が逸れてしまうことはザラだ。下手くそに至っては一時的に機体をコントロールできなくなり、墜落に近い落ち方をすることもあるくらいだ。
玉鍵の操る
久々の四機での出撃。しかし、機体に乗るメンバーは違っていると嫌でも分かる。
45.<そんなに気負わなくても敵がいたら玉鍵が警告してくれるさ>
花鳥はこちらの気落ちを敵への警戒と考えたようだ。
もうひとりの弟は玉鍵が予知能力者と断定しているらしい。その能力の全容が明かされているわけではないと再三注意しているというのに。よほど模擬戦で完封された事が悔しかったらしい。
たとえ予知能力があろうと3対1で負けては技量そのものが隔絶しているということ。雉森からすると悔しいも無いと思っている。三機で囲んでたった一発も有効打が入らなかったのだから。
38.<散開! BREAK! BREAK!>
咄嗟に
「玉鍵さん!?」
網の目のようになった空の下、その発砲炎に向けて二丁の
38.<露払いは任せ、て>
急激な降下で受ける加圧に顔を歪ませた玉鍵が、それでも力強く宣言した通り次々と地上で爆発が起きていく。
必殺にして必中とでも言うのか。ほんの数秒の射撃によって12もの小型目標に対してオペレーターから破壊判定が下る。
あっという間に火線の網の目が消え、点の射撃となった地上にさらにスピードローダーで瞬時にリロードを終えた
500.<ONESHOT ONEKILLってか……>
45.<ミドルクラスも2機……ひとりで撃破しちゃったよ>
小型機12と中型が2。敵の殺し間に飛び込んだはずのガンドールチームは、気付けば降下が終わる前に基地の撃破レコードを更新していた。
(違うわね。ガンドール
自分たちはせいぜい火線を分断する弾除けくらいの役割だった。これで自分たちの戦果と主張したら他のパイロットにも整備にも嘲笑されてしまう。
いち早く着地を終え、こちらの着地の援護についた
(やっぱ戦車は上からだとベコベコ抜けるな。
《対空タイプはそこまで装甲も厚くないしね。おまけに動きも鈍いとなったら低ちゃんのノーコンでもポンポン当たって草》
(地形も良かったな。廃墟のガレキが邪魔で横に動き難かったんだろ)
対空野郎は消しゴムみてえな平たい箱型の戦車タイプだった。上からだから装甲も
《中型も固いヤツじゃなかったから相性が良かったね。スーパー系と考えると
(あくまで汎用品と比べたら強いってだけだからなぁ。どのみち合体機に求める性能じゃ
二機いた中型はどっちもすばしっこい
開幕から6個しか
(ったく、せっかく良いロボットに乗ったってえのに。ステージ難度が激増し過ぎだろ。今の時点でもう14体だぞ)
《近くに敵の生産施設がある
(冗談じゃねえな。こりゃ早まったかもしれん……)
ガンドールチームが用のあるのがこの地区だ。だから危険だからって別地区は提案できねえ。それに加えて素早い索敵のためにあえて合体せず、小型機のまま散開して探すことになっているときたもんだ。困ったぞオイ。
(やられたぜ雉森。合体後ならオレが指示できるってえのに。合体前はどうにもできねえんだな、この契約)
《低ちゃんが契約の恐さが分かったところで、どうやらお代わりの気配ぞ》
(おいおい、今日だけで向こう数年分の生活費が稼げそうだぞ。他のメンバーが降りるまで待ってくれねえ?)
《無理っぽいナー。さっきので一番潰さなきゃいけない判定されたみたいだよ?》
(チーム内で弾の互換性が
《残弾も心配だけどさー、連射が過ぎて
(いやあ、よく当たるから楽しくなっちゃってっ)
《
高性能とはいえ、やっぱ火器が少なすぎるぞ
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