第14話 吐くまで特訓!! 熱血コーチ!!(なお本人が吐いた模様)

 50メートル級スーパーロボット『銃撃巨弾ガンドール』。四機の有人小型ロボットが変形合体するタイプで、胴体部のロボットは30メートル級に匹敵するサイズだ。


 ガンドールチームと呼ばれるパイロットたちは、元は単機で戦うスタイルでそれぞれ比較的活躍していた面々だったようだ。彼らは有能なパイロットとして評価され、ガンドールの建造に合わせてチームとして結成された。しかし、驚いたことに結成後に『全員が同じ父を持つ異母兄弟』と判明したらしい。


 こりゃかなり異色な経歴だな。主に父親のおイタのせいで。


 年長は今年18歳になる予定のサンダーバードとかいう冗談みたいな名前の大男。いわゆるネイティブアメリカン、インディオの血が入っているらしい。


 サブリーダーは雉森という女でこっちは17歳。整備長の爺の話ではこいつが知己の爺経由でオレに交渉を持ち掛けてきた相手だ。サブリーダーっぽく交渉ネゴシエイトを請け負っているのかね。


 最後のひとりは課長、じゃなくて花鳥かちょうという男。こいつは16のメガネ君。外見を裏切らずテック関連に詳しいいわゆるメカオタクのようだ。


 そして四人目、登録上チームリーダーだった・・・最年少の少年だが、こいつは二か月前に戦死している。


 母親が違うとはいえ全員まったく似てねえな。体格からして大小が過ぎるぜ。親父は腰は軽くて遺伝子の弱い男だったようだ。爺の話では父親の事は全員の禁句らしい。兄弟姉妹と知った初めの頃はかなり喧嘩もしたそうだ。


 まあ複雑だわなぁ。自分たちの母親置いて別の女のところでパコパコやった成果が目の前にいちゃあよ。当人のせいじゃないと頭で分かっていても発作的に殴りたくなったりするだろう。特にそのせいで母親が苦しんでいたりしたら猶更だ。


(二ヶ月の間は3人チームで固まって受け持ちの小型ロボットで戦うスタイルで凌いでいたみてえだな)


《正確には一ヶ月くらい前からだね。チームメイトの戦死でしばらく戦う気力が出なかったみたい》


(半分は血を分けた兄弟だし、一番年下の14歳が戦死しちゃな)


 逃げる敵の最後っ屁みたいな攻撃でメインパイロットのいるコクピット周りを損傷して、その際に操縦席内部に飛び散った破片が腹を傷つけたのが死因と書かれている。失血死だ。


 運の悪いことに少年は帰還直後までは生きていて、通信で苦しむ姿を見たのがチームメイトのトラウマになったようだ。


 他人にはなんとも言えん。運が無かったな。


(それでチームメイト募集か。二ヶ月もすれば45日も過ぎたろうし、踏ん切りつけたか)


 それ以前にも基地側から稼ぎ頭としてせっつかれていたようだな。50メートル級はスーパーロボットの花形、デカブツも倒せるからどうしても戦果を期待されちまう。


 おっかねえ『Fever!!』様の手前強くは言われねえが、パイロットの事情だけで強力なスーパーロボットを遊ばせておくのも勿体ねえって話だろうよ。


《稼ぎが悪くなって本人たちが困っただけかもしれないけどねー》


(それならそれでビジネスライクでいいさ。取り分さえ公平に貰えりゃな)


 チームの揉め事の双璧トラブルは金と異性だ。特に後者の時がひでえ。パイロットはガキばっかだからな。生死を共にするだけに目の前の異性がすべてってな感じで酔っちまうタコが存外多い。


 前者はイジメなんかもかかわってくるから深刻なヤツだと殺人もあるがよ。外野が見ててヒヤッとするのは共通だ。


 何せ殺人どころか地形さえ変えられる兵器に乗ってるんだ。それでみんな死んじまえって感じに自暴自棄な行動をするガキもたまーに出るんだよ。こういったクソガキは整備もパイロットも関係なく誰でもブチ殺していいことになっている。


 お優しく取り押さえようなんて悠長なことしてたら、本当に災害級の被害が出るからな。未成年だからって許されることじゃねえよ。地下都市で巨大兵器の火器でもブッ放された日には住人全員で生き埋めになりかねない。冗談じゃねえ。


 殺すならそいつだけ刃物で一突き、死ぬならひとりで首括ってくれ。他人様に迷惑かけんな。


 もしかしたらカタパルトで強引に基地から打ち出すのって、こういったアホが出撃のとき基地ごと吹っ飛ばそうとするのを予防するためかもな。


《なら勿体付けたら? 一度でホイホイ行ったらナメられるかもよ?》


(あー、爺にたけえケーキ奢られちまったからなぁ。食っちまったかぎり義理は通すよ)


 あの爺、頑固一徹かと思いきや絡め手も使いやがる。3個も頼んでこりゃとんだ甘党かと思いきや、爺が食うと思ってたケーキは奢りだと言って全部こっちに寄こしやがった。そして1切れ3万越えのうまそうなケーキが目の前に三個だ。冗談じゃねえぜ。


 さすがに気持ち悪くなりそうだから一個半にしたがな。


(生クリームたっぷりのケーキを一個半食っても胸焼けしない。十代って素晴らしい)


《先っぽばっかり食べてたからもあるんじゃない? 最初にフォークで前半分切って、後ろの美味しい所はお爺ちゃんに渡しちゃったし》


(チッチ。スーツちゃん、ケーキは前半分が一番味のバランスがいいんだよ。後ろの方はデコレーション飾りのクリームが偏重してスポンジとの調和が崩れちまう。だからケーキとしての完成体は先端なんだ)


《キモス》


 なにおう、そんなにクリームが食いたいならチューブでも吸ってろっての。土台のスポンジがケーキの骨格だろうが。外側のクリーム贅肉は余分なんだよ。自分で買ったら全部食うけどさ。


《まあ低ちゃんのキモいケーキ観は置いといて》


(キモくねーし、キモくねーしぃっ)


《感触が良ければそのままガンドールに参加するってことでOK?》


(OKだ。乗れるのはメインの38サーティエイトってロボットらしいしな)


 ガンドールは頭部担当の38サーティエイト、胴体の500ファイブハンドレッド、右足になる45フォーティファイブ、左足がナインの四機構成。合体後の操縦権は38の物になる。欠員はその38だ。


 やっぱ繰り上がりで他のメンバーが38の操縦をするってならこの話は蹴る。他人に命預けられるか。


 そういう意味でもさっさと決めねえといかん。機種転換訓練を考えると早いほうがいいからな。蹴ったら蹴ったでGARNETの慣熟訓練と火力増強プランを練らにゃあいかんのだ。


(明日の面談一回、一発で決めちまおう。最初の感触が悪けりゃ悩むだけ無駄だ。そういう迷い方は土壇場でも迷うからな。今日はもうカーゴの試験に集中だ)


《ウィ。今日中に終わらせて明日はカーゴで峠攻めだっ》


 クソ狭い地下都市でそんなことしたら銃撃付きでしょっ引かれるわ。




<放送中>


「パーラーのケーキを奢ってくれるというから来てみれば、いくら何でも食べ残しは失礼じゃないかい? 整備長」


 入場料を奢るしケーキも付ける、との連絡を受けて現れた大の甘党の三島は皮肉気に顔を顰めた。

 高級店のケーキなら余裕でホール丸々食べることさえある彼女だが、髭爺の食べ残しを食べるほどプライドは捨てていない。いっそ遠回しにケンカを売られているのではと訝しむ。


「儂は手をつけとらん。選り分けた物そのままじゃ。これを食わんなら別のモンを頼んでいいわい。約束じゃからな」


 見れば三つのケーキはいずれも前半分ほどがきれいにカットされている。そういう形のケーキと言われたら納得してしまいそうな鮮やかな断面をしていて、そこに三島は不思議と数学的な美を感じた。


 窓の外を眺める整備長、獅堂フロストの顔をまじまじと見た後で三島はまあいいかと結論して席に腰を下ろす。正面はすでに片づけられているが、少女は少し前に誰かが座っていた気配を感じて興味を持った。


 恐らくその人物は老人の眺める光景に関係のある、かの者だろう。


 給仕にミルクティー、それも追加サービスの純正の砂糖を要求する。そして老人の前にあった未使用のフォークを取り、彼に突きつける。


「老いらくの恋の話は聞きたくないんだがねえ」


「馬鹿野郎、違うわ。儂は随分と迷惑かけちまったと痛感しとるだけよ」


 さすがに三島も恋は冗談だったが、入れ込んでいるという意味では同じだなと思い降参のポーズを取る。老人は回りくどくていけない。


「ケーキを奢ってチャラにする作戦が失敗したってことかい? アレは玉鍵たまでなくても、パイロットなら怒るのは無理もない不祥事だものね」


「いいや、まったく怒っとらんかった。切り替えが早いんじゃろう。それどころか頼んだケーキを分けっこしてくれたわい」


 厳つい爺さんが分けっこという可愛いセリフを吐いたことに奇妙な感動を覚えつつ、目の前のケーキがなぜ自分の目を引き付けるのかの答えを知った三島は、ひとつ目の登頂部にそびえる苺に迷わずフォークを突き刺した。なにせ三つもあるのだ、ひとつくらいヤンチャな食べ方をしてもいいだろう。


「それは災難。甘いものが苦手なのに、全部のケーキで美味しいところを分けてくれた感想はどうなんだい?」


 たっぷりの白い生クリームと芸術的な色合いの赤い苺のコントラスト。ケーキの前半分など、このお菓子の中では口を馴染ませる前座に過ぎない。いずれのケーキも至福の時の核となるすべて・・・がここに残されている。


「甘ったるくて泣きそうじゃ。……どんな教育受けたらあんな良いええ子に育つんじゃろうな」


 全部食え、その一言が言えなかった。当たり前のように他人と分け合うその姿に、獅堂は胸が締め付けられるような気分になって最後まで口が開かなかった。開いたが最後、何十年かぶりに涙腺が大仕事をしただろう。


 老兵は生きてきた年数の分だけ嫌な経験もしている。時には己が生きるために他人を蹴落としたことさえある。墓場まで持っていく記憶は片手では足りないくらいだ。親方と言われようが整備長と言われようが、本当は決して褒められた人間ではない。


 そんな自分のすべてを見透かしているような面持ちで、少女はそれでも獅堂と分け合うのだ。相手に良い方を与えて。


 だからこそ老人の中で罪悪感が大きくなる。自分の怠慢であの子を殺しかけてしまったと。長官の事や不良整備士の愚行など言い訳にならない。


「玉鍵たまのプロフィールは調べたけどさ、曖昧なところが多すぎてボクでも追い切れなかったよ」


「……趣味の悪い事をしやがる」


 たっぷりと砂糖を溶かし込んだミルクティーを口にする少女に獅堂が顔を顰める。その理由は他人を根掘り葉掘り調べる行為を咎めたからか、あるいは老人では吐きそうになるほど甘くした飲み物を平気で飲む姿に胸やけを起こしたからか。


「ふふ、翼の君は未だ自由。今はそれでいいさ」


 翼の君? その言葉を問い正そうとした老人は、こってりとクリームのついた塊を一口に頬張る三島の顔を見て取りやめた。


 頭が良すぎて同世代から逸脱している少女。三島ミコトの子供らしい姿を、大人の疑問で打ち消すことが忍びなかったからである。






(原付かっ)


《ツッコミみたいなイントネーションww》


 試験っーから事前講習受けたのに原付レベル、いやそれ以下じゃねえか。筆記試験はまだしも、実地は基地のグラウンドで走って停めて曲がって、はい合格って。こんなレベルのヤツが免許持って街中走ってるかと思うとゾッとするわっ!!


《パイロットはスーパーロボット操縦してるからーって、簡略化されてるみたい》


(大雑把すぎるだろ。物が違えば全然違うと思うがなぁ?)


《まあまあ、実地はともかく低ちゃんは道路交通法とかの知識が前からあるし、それで簡単に思えるってところはあるでしょ?》


(まあなー。絶対ド忘れしてるところもあるはずなんだが、この体っつーか頭が習ったものをバッチリ思い出してくれるからよ)


 昔の体だったら破損して飛び飛びの音声みたいに悲惨な知識になったろうよ。若くて優秀な脳みそだわい。


 これで免許は電子記録として公布された。今後はミニカーゴ乗り放題だぜ。


《今日はもう半端に遅いし、予約だけ入れて明日納車してもらおう》


(うーん、思ったより使える時間が少ねえな。学校から基地まで移動して一時間の訓練。んで帰宅で17時半だろ。門限早すぎだろスーツちゃん)


《ダメダメッ!! 地下都市は17時に15分の夕焼け、その後は夜の部に入って真っ暗なんだから。節電エリアなんてホントに真っ暗なんだよ? 18時で犯罪発生確率が爆上がりって統計が出てるんやで?》


(やで? いや、30分あれば買い物くらい)


《スーツちゃんの! 目が! カートゥーンみたいに飛び出るあいだはっ!! 低ちゃんに夜遊びなんさせないっ!!》


 夜遊びじゃくて、買い物っってんじゃんよぉ……。


《日用品なら基地でも揃うでしょ。食事も基地のほうがまだ信用できるし》


(たまに別の店とか開拓したくなるじゃん)


《そーゆーのは金土にしなさい。日曜の出撃で潤ってからのほうが買い物の幅も広がるしねっ》


 へいへい、明日の納車が15分で済むといいですな。訓練は基本毎日続けるから平日は時間が出来そうにえや。今日はミニカーゴの試験で訓練パスってたから時間はまだちょっとだけあるけどよ。


 つーか試験が終わるのが早すぎなんだよ。拘束時間が1時間未満で取れる免許ってどういうこっちゃ。


 明日は明日でガンドールの連中と面接だ。納車と面接で潰れそうだなぁ。


《おー、低ちゃんアレアレ。トラックで女の子たちが訓練してるよっ。生足生足。うーん、フレッシュだねぇ》


(キモス)


《キモくねーし、キモくねーしぃぃぃっ!》


 マラソンか。小手先の技なんぞよりロボット乗りはまず体力だからなぁ。


 乗るロボットによっては戦闘機並みの重力加速、つまりGに耐える必要がある。これはもう本当にロボットによってピンキリで、どんな無茶な機動もまったく感じないくらい優秀な耐G制御機能を持つロボットも存在する。


 ただし、だからって強いとは限らねえのがスーパーロボットってヤツだ。


 ぶっちゃけパイロットに人の限界を要求するような、安全性が無茶苦茶なロボットのほうが強い傾向がある。これこそプロ仕様ってヤツかもしれねえな。乗り心地を気にするようじゃあ素人ってことだろう。


 それでも体の出来てないガキに重力加速に耐えろってのは酷だと思うがね。最低6Gは耐えられないと操縦席で失神だ。たしか成人で鍛えてりゃ8Gまでは生身でいけるらしいけどよ。


 だけどその先は生身じゃ無理だ。耐G機能のあるスーツやロボットの耐G制御機能の出番になる。


 オレはスーツちゃんのお陰で現行で最高級以上の耐Gスーツを使ってるのと変わらねえ。スーツちゃんがモーフィング機能を使うのはあくまで見た目だけで、コピーしなくても服のハイテク機能は何だって代行してくれるからな。


 こんなジャージの見た目でも血流制御や網膜への映像投射、筋力増強なんかもお手の物だ。瞬間的に硬化しての防弾防刃は12.7ミリの重機関銃でさえ貫通されない。


 さすがに通さないだけで中身のオレは衝撃でグチャグチャになるがよ。前回の死因でもある。うぅ、体がコナゴナになる感触のトラウマが……。


「遅ぉいッ!! とっととアップしろぉ玉鍵ぃッ!!」


(…………は? 今呼ばれたかオレ?)


《呼ばれたね。あのグラサンのオッサンに》


 誰だアイツ? 自慢じゃねえが基地に知り合いなんて爺くらいだぞ。それにしても―――


《(ダッセェグラサンだな)だね》


 顔の三分の二くらい隠れてんぞ。特注するにしたって店側がセンス疑われそうで断られそうなデザインだな。見てるほうが恥ずかしい気分になるわ。


(あー、スーツちゃん?)


《この基地の有料トレーナー、速水アキトだって。アダ名は鬼コーチww》


 ああはいはいトレーナーね。ご丁寧に竹刀まで持っちゃって、形から入るタイプか?


(そのコーチが何でオレを呼び止めんだよ。有料なんだよな? スーツちゃんが申請したのか?)


《してないよー。低ちゃんに男のコーチなんて近づけるものかぁ!》


 それはそれでどうなんだ。いや、いいけどよ。オレもムサいオッサンのトレーナーなんて勘弁だわ。ゴリゴリの女トレーナーもちょっと嫌だけどな。


「早くしろぉッ!! 10秒遅れるごとに基地マラソン1周追加だぁッ!! まずは10周!!」


 叫ばねえと死ぬのかコイツ。


「(うるせぇな、)頼んでない(だろ)」


「口答えするなッ!! 全員1周追加だ!!」


 メンドクセー、同じ言葉を話してるのに通じないタイプか。相手にするだけ無駄だな。


「た、玉鍵さんッ。早くして! もっと連帯になっちゃう!」


(たびたびスマン。スーツちゃん)


《星川マイム。クラスは違うけど低ちゃんと同期だね》


 ? 理解できねえ。後ろにいた他数人まで囃し立てやがる。なんだコレ?


(あー……、オレもスーツちゃんも頼んでねえ。つまりなんの義理も無い。OK?)


《|OK(うぉっけぃ)ッ!!》


 バカバカしい。帰ろう、夕飯は何がいいかねえ。


「どこへ行く玉鍵ぃッ!!」


《後方、振り下ろしの竹刀》


 あ゛!? 手を出してくるなら敵だぞテメエッ!


 振り下ろした竹刀の外側に回り込んで、無防備な横っ腹を斜め下から手の平でブッ叩く。ホントは拳で抉ってやりてえが、生憎と今は柔らかいやっこい体なんでな。次も絡んでくるならメリケンサックでも用意しといてやるよ。


「ぶぼぁッ!?」


《ナイスリバー。掌底なら手も傷めないから花丸をあげようっ♪》


 崩れ落ちてダバダバと汚ねえ噴水になったタコ。こっちに臭いにおいがつく前にオサバラだ。女どもの悲鳴が上がっているが知ったこっちゃねえ、無関係なんだからな。


「頼んでない(自分の生徒くらい確認しとけタコッ!!)」


 最後にもう一度念押ししてトラックを後にする。なんだったんだ?


 それと他人の事だからどうでもいいが、なんであいつらブルマなんてこっ恥ずかしいもの履いてんだ? ジャージにしとけジャージに。


(変なのに絡まれちまったなぁ。ゲンの悪い)


《ああいう変質者が出やすいから夜は危ないのだよ。分かってくれた?》


(基地で何を飼ってやがるんだか。買い物リストに護身用の武器も加えようぜ)


《意外と無いんだよねー、それこそスラム街にでも行かないと。だからダメでっす》


 犯罪と抗議デモ抑止にゃ牙を抜くのが一番だからな。工具辺りで自作するか。


 後ろからまだゲロゲロやってる音が聞こえてきて汚いったらねえな。今の時代でも他人様にお優しいことが言える絶滅危惧種にでも世話してもらうといいぜ。困ってる人がいたら助けてあげましょう、なんて真顔言われたらそいつをひっぱたきたくなるわ。


 オレは御免だ。世話なんざ自分の事だけで手いっぱいさ。


 どの道、金が尽きたら誰だって底辺層行きで人権ごとバイバイだ。そういう世界だろ、ここは。


《あ、あの子たち見て思い出したけど学校指定はブルマだから》


(キモス)


《キモくねーし、キモくねーしぃぃぃっ!》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る