決着

 クレアが彼の中にある魔力の結晶を砕き、彼は動かなくなると同時に攻撃が止む。


「終わった?」

「うん、魔結晶を壊したから……だけど……」


 クレアは可哀そうな顔をしてウェルサを見ている。


「彼、もう目覚めないかもしれない」

「それって?」

「殺してはいない、だけど結晶は魔力核の近くだったから目覚めないかもしれない」


 魔力核……命の源にして魔法を使う上で欠かさないものだ。

 それに魔力の核はそうそう壊れるものじゃない。

 魔力核は魔法でしか破壊できないが、破壊そうとすれば肉体が先に壊れてしまうのだ。


「どうなるかはわからないけど」


 あのまま行けば、僕らの魔力も底をつき蹂躙されていただろう。


「よう」

「……パパ……お父さん」


 クレアが振り返ると、ナオトさんが鈍い足取りでこちらに来ている。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、少しやられただけだ……問題ない」


 ハナさんが駆け寄り、彼に魔法をかける。


「すまない……」

「喋らないで、安静に」


 そう言って彼女は詠唱する。

 この詠唱は……。

 かつて前世で何度も聞いた懐かしい言葉、日本語だ。

 彼女が詠唱を終え、魔法を発動する皆の身体はここに来た時の綺麗な

服装に戻っていた。

 全体回復……それも見たこともないような高位の魔法だった。





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