激昂のエレナ

 そして試合が始まろうとしていた。

 ミナ達が先に会場入りする。

 しかし、他の試合の時とは違い真剣な表情で反対入場口を見ている。

 

 カエラの声と共にウェルサのチームが会場に現れる。

 堂々と前に歩きながら壇上に向かっていくウェルサ。

 エレナは彼らを見るなり、怒りを露わにする。

 それはそうだ、身体の傷は回復魔法で見えずとも服などが所々汚れていたのだ。


「お前……!!」

「あぁ? なんだ? 首席の腰巾着」


 お前には興味ないといった感じでエレナを見る。

 いつもの明るい笑顔の絶えないはずのエレナがブチ切れている。

 こんなエレナを見るのは初めてだった。


「それではいいですか?」


 カエラがそう言うと、ミナがエレナの方を見て溜息を吐く。

 

「危なくなったら、交代ですからね」


 今のウェルサは正直、何をするかわからない。

 三人は後ろへ下がる。

 ウェルサも視線を三人に移すと怯えたような顔をしている。

 それはまるで恐怖でも刻まれたような怯え方だった。

 

「はじめ!」


 三人が下がると、ウェルサとエレナが前に出る。 


「今すぐ首席と変われ」

「お前なんて 首席様ミナが出る必要なんてないわ」


 馬鹿にしたような顔でウェルサを見て言い放つと、ウェルサの表情が変わる。


「後悔しても遅いぞ」

「いいから早く来い」


 そう言うと互いに動き、戦闘が始まった。





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