壊れた少女


 この時、私は運命を感じた。

 なぜか分からないだけど、私はそう思ってしまった。

 いつも両親に殴られたられたかのような痛みが体を支配する。


「役立たず共が……」


 彼の言葉が私の心に深く突き刺さる。

 役立たず使えない散々言われてきたはずなのに、彼に言われるのが一番心に辛かった。

 どうしてこうなったのか無邪気に笑い、人の気持ちがわかる良い人だった。

 いまはどうだ、彼を見ているとまるで別人の何か悪いものでも取り付いたと思えてしまう。

 悪魔が乗り移ったに違いない。

 じゃなければあの優しかったウェルサがこんな誰彼構わず暴力をふるったりしない。

 きっと私では彼は救えないだろう。

 だったら寄り添うしかない。

 大丈夫、私は慣れている。

 何度も殺されかけたことはあるから大丈夫。

 

 私にできるのは彼に寄り添うことだけ、力だけでなく心まで私は落ちこぼれになりたくない。

 周りは愚かだとと思ってしまうかもしれない。

 殺されそうになっているのにそれでもいるなんて狂っていると。

 昔の彼が戻って来てくれるとなぜか思ってしまうのだ。

 バカだと思うこれだけ殴られて蹴られもなお、彼のことは信じられるなんておかしい。

 殴られすぎて皆の言う通りおかしくなっているのかもしれない。

 だけど私はね彼を支えたいどれだけ傷つこうとけられようと、昔の彼に戻ってくれたら私はそれでいいんだ。

 生きている限り希望はある。

 そしてノック音で扉越しに声が聞こえる。

 決勝戦だ。


「行くぞ」


 そう言って彼は全員に回復魔法をかける。

 身体の傷がなくなる。

 痛みも薄れていく。

 剣技科の男は恐怖に怯えながら彼についていく。

 そうして私達は決勝戦の会場に向かった。



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