98話 探し人

 僕達は試合を終え、各自観光や訓練、商談などに勤しんでいた。

 まぁ、僕は特にすることもないし、ブラブラしていた。

 

「これください」

「はいよ!」


 焼きそばを買い、食べながら歩く。

 賑わってるなぁ〜。

 まぁ、各学院の練習試合という事もあるのだろう、先日よりも人が多い様に思えた。


「この人、知りませんか〜!!」


 大きい声で何か叫んでいる少女が走りながら何かを掲げている。


「またあの子よ……健気ね……」

「ねぇ〜、それにしても行方をくらませるなんて、酷い男だ」


 街の人達が囁いているのを聞いていると少女と目が合う。


「すみません! この顔の人にピンっと来ませんか?」


 久々に聴いたなぁ、その言葉……。


 しかし、それよりも子供の落書きなので、全然わからない。


「僕、ここの人間ではないので……」

「そっか……ごめんなさい」

「いいよ、それよりその人の名前聞いてもいいかな?」

「確か、ティオ……ティオレ・フェリオ……」

「え……」

「しってるの!?」


 王都で出会った男がそんな名前だった。


「いや、その……」


 近い近い……。


「何でもいいの! 情報を教えて!」

「えっと、その名前の人なら王都で僕が案内したことがあります……もしかしたら人違いかもしれませんが……」


 もしかすると同姓同名って事もあるしな……。


「王都って?」

「あぁ、アルス王国……僕はそこから来たんです」

「なら、私も連れてって!」


 手を合わせ、僕にお願いしてくる。

 強引だな、この子……。


「君にだって家族がいるだろ?」

「ううん、いない……皆死んじゃって、私にとってティオレだけが家族なの!」

「君は今、何処に住んでるの?」

「今は、孤児院……」


 あの男、実の娘を捨てたのか!!


 前世で子供もいなかった僕だが、ニュース等で色々見てきたので、それを思い出し怒りが込み上げてくる。


「……わかりました、ですが今は決められません……大人しく待っていてもらえますか?」


 先ずはしばかないと……。


「……うん、わかった」


 貼り繕った笑顔でいうと僕の元から離れる。

 健気な子だ……。

 そうして僕は宿に戻った。



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