97話 一方で……

「うぅっ……あぁ……」


 体が焼ける様に熱い……。


 もう少し、あともう少しで僕は……。

 

 朦朧とする意識の中、ウェルサが歩いている。

 

 くそ、どんどん使う度に身体が重くなる……。


 意識朦朧とした中、例の商人と名乗る男が僕を受け止める。


「あぁ、やっぱりこうなりましたか……」

「お…前……し…って…て……」

「いや、大体の人はここまで早くはなかったのですが、これをどうぞ……」


 口を無理やり開けられ流し込まれる。


「……え……?」


 先程までとは嘘の様に元通りだった。


「あるならさっさと寄越せよ! 商人風情が!」

「おっと、怖い怖い……それよりも飲んでいただけて如何でしたか?」

「これはすごいが副作用がな……でも今は……」


 魔法大会の出場しなければいけない……なんとしてでも……。


「何か事情がお有りの様で……でしたらこれもお付けしましょう」

「あぁ……」

「ですが、これは一日に一度の物です……欲をかけば大変なことになりますよ?」

「大変な事?」

「えぇ、使いすぎなければ持つでしょう……では、私はこれで……」

「あ、おい!」


 そう言うと彼は消えていった。


「………」


 この薬で僕……いや、俺は……。


 一人高笑いを浮かべていたのだった。









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