73話 学院最強の護衛?

「…ウ……サ…ル…」

 

 起こす声に気づき、目を覚まそうとする。


「起きなさい!」


 その声と共に鳩尾みぞおちに激痛が走る。

 痛みでのたうち回りしばらくして目を向けるとセシアがトレーニング服でこちらを見ていた。


「こんな早くに何さ……」

「これから朝練よ! 起きなさい!」


 涙ながら言うと、セシアは当たり前のような顔で言ってくる。

 まず殴った事を謝ってもらえませんかね?


「朝練って突然なんですか……」

「私の朝練に付き合いなさいよ」

「いえ、僕は寝ます」


 そう言い布団に包まり再び寝ようとすると、


「火よ、我に力を貸せ」

「行きます! 行かせてください!」


 その声で僕は飛び起き、返事をする。

 目の前には火鳥という彼女の魔法で生み出した火の鳥がスタンバイしていた。

 彼女は僕に対して相変わらず容赦がない……だけど……。


「早くしなさい、待っててあげるから……」


 ここ最近、どこか柔らかくなったような?気がする。

 ため息をつき着替えて下に降りると、セシア以外に両親と師匠、ミリスの五人が集まっていた。


「おはよう、サウル」


 ミリスに言われ「おはよう」っと返すと外に出る。

 朝日が登る直前なのか、辺りはまだ少し暗い。

 ルートは適当でウオラが先頭を走り、それについて行くと言った感じだ。

 

「みんなを置いていかないでよ?」

「みんな着いて来れるだろ? な?」

「………」


 皆はコクリと頷くが、僕と師匠は彼が体力が化け物なのを知っているので項垂れる。

 そうしてウオラを先頭に走り出す。

 先頭から順番に少し後ろにミリス・ミナ、その後ろにセシア・僕・ミリーの順番で走る。

 そういえば朝から走るのここ来て初めてだな……。

 ここにくる以前は毎日走っていたのに学院に入ってから走っていないせいか、久しぶりの朝ランは懐かしく、そして心地いい。

 そう思っていると、セシアが「ねぇ、」っと声をかけてくる。

 

「その、昨日はありがとう……」

「助けになれたのなら良かったよ」

「………次は私が助けるから、困ったことがあるなら言いなさい」


 笑顔でそう言う彼女に「ありがとう」と伝えると再び先を走る。

 二時間ほど走りおえると、着替えて朝食を食べると学院へ行く準備をするのだった。

 









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