43話 打開すべく
教師らしき人物がそう言うと、複数のフードを被った者が入ってきた。
「動くな! ここは俺達が占領する……俺達に従え」
立てこもりか?
この学校はセキュリティーは完璧で、入れるとすれば相当な実力か、若しくは試験かどちらかだろう。
相手の実力がわかるまで様子を見るのが鉄則だ。
しかし、それがわからないものもいる。
「へへっ! 俺達に勝てると思ってるのか!? 雷閃!」
一人の生徒が偽教師に向かって中級魔法雷閃を放つ。
生徒は言うだけあって中級を使えるのはある程度の魔法教育を受けているのがわかる。
しかし、雷閃は腕一振りで簡単に弾き飛ばされる。
弾き飛ばした偽教師は一直線に生徒へ向かい、腹に膝蹴りを食らわせる。
「人の話を聞けよ……殺すぞ」
生徒は後ろの壁に叩きつけられ、意識を失う。
何人かはそれを見て腰を抜かすか、恐怖で泣き喚いているものもいる。
サウルは周りを見ると、セシアとウェルサ、ミリスと先程サウルと入学式にいた男女コロナとオットーの計六人は冷静に状況を見ていた。
敵は見る限り全部で十人……何処かに隠れている可能性もあるのでうかつには動けない。
それに偽教師のようにて誰だった場合、一気に制圧されてしまったら全員の命が危ない。
「お前ら、席に着け」
言われた通りサウル達生徒は席に着く。
魔力の膜が出ないように指先に魔力を込める。
魔力の文字を作り、セシアの方へ飛ばす。
「こちらを向かないで、僕は外であいつらを叩く……君はこいつらを頼めるかな? はいの場合は首をかく。無理な場合は頭をかく」
セシアは指示通りこちらを見ずに黒く長い髪をかきあげ、首をかいていた。
「あの、すみません……少しトイレいいですか?」
「あ? あぁ、まぁいい……おい」
フードの男がサウルについて行く。
男は便所の外で待機する。
サウルは外の壁に手を当てる。
魔力を指先に込める。
円を描く。
内側を解析魔法と錬魔法の分解で目の前を砂と化す。
幸いなことにここの個室は天井まで壁でできているため、気づかれるまでに時間がある。
加えて先程、ドアの方の鍵は強化魔法でガッチリ固定している。
魔法の風脚を発動し、ゆっくりと降りる。
さて、ここからどうするかな……。
とりあえず、教室に近い屋上に空脚で飛ぶ。
一歩一歩蹴る瞬間に魔法障壁を展開する。
屋上に着くと、教室に向かって歩き出す。
とにかく敵の人数の把握だ。
「どこへ行く気だ? 少年」
屋上のドアに手を離し、後ろを見る。
気だるそうな顔をしながら、男はこちらを見ていた。
「あなたは?」
「あ、うん……名乗る程のものじゃあない」
「そうですか、では……」
「っておい!」
立ち去ろうとすると、呼び止められる。
「なんですか?」
「いやいや、俺の素性聞かないのか?」
「はい、仲間の命が最優先ですので」
歩き出そうとすると、殺気を感じ振り返る。
手には先程まで持ってなかった刀を手にしていた。
「ふむ……ここに来たばかりに奴は気がつかんのに君、何者?」
「…………」
「まぁ、いい……お手並み拝見とさせてもらおうか」
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