42話 洗礼
教室に入ると、妙な緊張感に包まれる。
気にしないように入ると、一人の男子生徒がサウルを歩みを遮る形で前に立つ。
「ここはいつから子どもを預かる場所になったのだろうな」
「………僕に何か御用ですか?」
何だこいつ、失礼な奴だなっと思うサウル。
そのままサウルはムカついたように言う。
「いや、君みたいなどこぞの馬の骨……いや、田舎者がこの学園に良くこれたなっと感心しているのさ」
「そうですか」
ストレートに物を言う失礼極まりない発言に、サウルの笑顔は引き攣る。
一部の生徒はそれを聞き、嘲笑うような顔をしてクスクスっと笑っている。
陰気臭い場所だな……っとこの先やっていけるか早速心配になる。
「用が無いのならこれで……」
「まぁ、待ち給えよ……」
「何でしょうか?」
「君の名前を聞いておこうか」
「………サウル・ラットです」
「まぁ、精々退学にならんように精進することだな」
そう言って生徒はウザい感じ極まりなく去っていく。
そうして席順を確認する。
サウルは最後列でミリスは真ん中の方っと、見事に四人は席がバラバラになってしまった。
因みに先程絡んできた生徒は最前列で、少なくとも授業中は関わることはなさそうだ。
席に着き、辺りを見渡す。
ここに蒼はいるのだろうか?
転生前の記憶……サウルは必ず見つけ出すと言ったが、10年経っても彼女はどこにいるのか足取りがつかめない。
彼女が行くとすれば、ここの可能性もっと期待していたのだが……。
そう簡単に上手くいくわけないか……。
「そんなにキョロキョロして、さっきのでビビっちゃった?」
「………? そんなわけないじゃないですか」
「そう? まぁ、私も同い年だし敬語なしでいいよ」
「私? 私はね、セシア・マックハートっていうの」
長い黒髪をなびかせそう言う少女。
「年上だと思ってました」
「あはは、よく言われる」
「僕の名前はサウル・ラットです」
「サウル、これからよろしくね。 それよりさっきウェルサに絡まれてたでしょ?」
「さっきの男の人ですか?」
「うん、あいつに目をつけられるなんて災難だね~」
そんなにやばい奴なのか?
今から壮絶な虐めとか勃発するとかそういう感じか……。
「彼の事を知ってるんですか?」
「えぇ、正直嫌というほど知ってるわ……」
彼女は何処か絶望を受け入れるかの如く清々しい感じで遠くを見ている気がした。
「なんか、大変そうですね……」
「まぁ、兄妹ですからね……あれの」
「あ、そうなんですか」
この魔法学院に年齢は関係ない……。
理由は明白、この学院は実力の世界だから。
置いて行かれた者はずっと同じ学期生で、上に行けるものはどんどん上に行く。
そういう学校なので歳がどうとかではない。
ウェルサもどうなのか分からないが、妹と同級生とはまた複雑だろうな。
「まぁ、会いたくなければ早く上に行くことね」
「はぁ……」
今の発言から推測するにウェルサは今年が初めてではないようだ。
サウルはセシアに向かって握手を求める。
「これからよろしくね、セシア」
「こちらこそ、サウル」
そう言うと、講師が入ってくる。
「え~、それでは出席を取る前に……お前達には死んでもらう」
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