40話 ミナとルミリナ

 会場に入り、受付へ向かう。


「はい、新入生はサウル・ラットさんとミリス・レインさんですね、ようこそ王立魔法学院魔法科へ……ミナさん、せっかくですのでサウルさんと一緒の席にミリスさんを同席させてもよろしいですか?」

「えぇ、私もそのつもりです……なんなら合格者全員こちらの席に来ていただいてもいいでよ」

「え、いいんですか?」


 ミナの返答にキョトンっとした顔で男子生徒は見ている。

 いや、どちらかといえば動揺していた顔だ。


「いいですよ。 どうせ、私が断れば苦労するのはあの子達でしょう? 全く、こういう所は本当に吐き気がする」


 怒りに満ちた表情をするミナに、近くにいた生徒までもが振り返る。


「じゃ、じゃあまだ来ていないのでこちらでお待ちください」

 

 受付の男子生徒は三人を受付の奥へと案内する。

 入ると六人の男女がいた。

 

「お~、ミナじゃないか……どうしてここに?」

「はぁ、貴方でしたかルミリナ……生徒会長の仕事?」

「うん、そうだよ~。 貴方がならないから私がやらなきゃいけないんだよ~」

「断ればいいじゃない……大体古いのよ、主席が生徒会長努めないといけないなんて伝統」

「あはは~、私も断りたかったけど家がねぇ~」

「貴方も大変ね」

「あはは、君が受けてくれれば私はならなくて済んだんだよ?」

「知らないわ。 嫌なものは嫌当たり前の事でしょ?」

「その割には師匠の子供を弟子エネクトにしたんだ?」

「まぁ、私を育ててくれた師匠だし……それにこの子、実力はあるわよ」

 

 そう言うと、サウルを前に出す。

 ルミリナとその他数名が驚く。


「本気かい? そんな小さい子」

「私だってこのぐらいの年だったわよ?」


 小さい子とは失礼な! 君より精神年齢は年上だぞ!


 サウルはそう思ったが、この身体はまだ十歳……大人というのには無理がある。

 ルミリナは大きく息を吸うとサウルの方を向き直る。

 暫らくサウルを見つめると、何かを考えている。

 

「………」


 少しの沈黙の後、ルミリナは何か納得したようにサウルを見る。


「君、陰魔法適性だな、次に得意なのは雷で聖・火・水……最も低い魔法は風か」

「どうしたんですか?」

「ルミリナは適性を見るだけで読み取る眼を持っているのよ」

「加護……ですか……」


 加護とはこの世に生まれた者の一部が持つ神からの賜物ギフト

 それぞれ種類があり、ルミリナの場合適性を見るもの。

 加護持ちは初めて見た。


「えぇ、私の加護は適性を見るだけみたいだけど、それだけで戦い方はいくつもできるから私にとっては良い物ね」

「他の適性は見れないのですか?」

「見えてるけど言わない方が良いでしょ?」


 いやいや、得意魔法から苦手な魔法まで言われたら十分個人情報漏れてますよっと思ったが、サウルは黙る。


「でも安心して、この学校に来たら嫌でも晒されるから私なんてかわいい方よ」

「何か、今すぐに帰りたくなってきました」

「あら、この学校色々あるけど楽しいわよ?」

「はぁ……」

「まぁ、とにかく! この二人お願いできる?」


 そう言うと、二人の男女が前に出る。


「この子達とあと一人お願いね」

「はぁ、珍しいわね……貴方が受けるなんて、最初は一般入試組なんて! って言ってたのに」

「その、あの頃の私は無知だったのよ……」


 過去の事を思い出したのか、空を見ている。

 黒歴史という奴だろうか。

 

「無知ねぇ~、私の事も最初は無能とか庶民とか散々言ってたものね」

「わ、悪かったわよ……でも、そうね……貴方がいなかったら自分の傲慢さに気づけなかったかも、それは感謝してるわ」

「だから、その償い?」

「いいえ、私は純粋に私がそうしたいからしてるだけ」

「そう……」


 ミナは二人に目を向けるのだった。

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