31話 宴

「ヤダヤダヤダ!」


 リラは話を聞くなり癇癪を起した。

 ルラはいつものようにリラをなだめることなく、ぼーっとこちらを見ている。

 リラはというと僕の胸倉を掴み、前後に押したり引いたりしている。

 首が揺らされ、脳が揺さぶられたのか、視界がぐるぐる回る。


「落ち着いて、リラちゃん」

「これが落ち着いていられるわけないでしょ!」

「そうは言っても話を聞くなら、話してあげた方が良いんじゃない?」


 ミリーにそう言われ渋々手を放す。

 未だに少しフラフラする。

 何とふらつく足を必死に耐えると、二人を見る。


「二人にも話そうと思ったのですが、中々話しだせなくて」

「ふーん、それでもちろんいかないわよね?」

 

 何故いかない前提なのかと突っ込みたくなるが、まぁ気持ちはわかる。

 二人が僕以外と遊んでいるところをあまり見た事がないからだ。 


「僕は今後の為に魔法科に行きたいと思ってます」

「なんで!?」

「魔法の勉強してみたくて」

「ここでも出来るじゃない」

「リラは僕の固有魔法知ってますよね?」

「………知らない」

「教えておきます。 投影です」

「………」

「僕は投影を学んでみたいのです」

「………そう」


 リラは背を向ける。


「いいんじゃない、好きにすれば?」


 声は少し震えていた。

 普通の子どもなら泣くはずなのに彼女は泣くのを我慢していた。

 もう決めた事だとわかっているからだろう。

 

「ありがとう」


 視線を向けると、リラとは反対で何故か穏やかそうな顔でこちら見ている。


「私ね、なんとなくそんな気がしてたの」

「……え?」

「サウルここの所なんか上の空だったし、おかしいなって思ってたんだ。それに……ううん、何でもない」

「遅くなってごめん」


 頭を下げるとルラは首を左右に振る。


「ううん、それはいいの。 それより出発はいつ?」

「父と母は五日後で僕は二か月ここに残ろうと思います。 いいですよね?二人とも」


 二人を見ると、笑顔で見てくる。


「私は別に構わないわよ」

「俺もお前が良いならそれでいい」

「ありがとうございます」

「それじゃあ今からパーティーだ! 皆、準備手伝ってくれるか?」

「「「はーい」」」

「じゃあ、長老の所に行ってくる」

 

 ウオラは長老の家の方向に向かって行く。

 魔法科入学の報告だろう。

 この村は何かお祝い事があると、皆でお祝いするという風習がある。


 今日は賑やかになりそうだなぁ~。



 ―――――――――――――


「それにしても王立魔法科か、流石二人の息子だな」

「あはは」

「それにしても二人とも、王都に戻っちまうのか」

「あぁ、依頼されちまってな」

「大変だろうけど、達者に暮らせよ」

「あぁ、お前もな」


 男にそういうと、僕達の元から離れていく。

 村中の人達に挨拶を済ませると席を外し、風に当たりに外へ出る。

 村の人混みに当てられ熱くなった身体が、少しずつ冷やされ心地良くなっていく。

 

「サウル、ここにいたんだ」


 振り返ると、ルラがいた。

 

「ルラも涼みに?」


 ルラは首を横に振る。


「皆がいたから話しかけにくくて」


 ルラは抱き着いてきた。 

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