30話 ミナ
暫らくして光が収まるとミナはサウルを見つめる。
「流石に避けたようですね」
「子供相手に大人げないです」
「私とあなたは六つしか違いませんよ?」
サウルは驚く。
自身と六つしか違わないのに先程の魔法を見ただけで格の違いが分かったからだ。
「それにしても流石師匠の息子ですね。 いうだけのことはありますね」
「それはどうもです」
感心しているミナを悔しそうに見る。
「これなら合格としても大丈夫でしょう。 あとは貴方の気持ち次第だけど」
「僕は……」
「いいんです。 貴方の事情は師匠から聞いています」
「………すみません」
まだ迷っているサウル。
リラやルラにもまだ話せてないし、気持ちの整理がまだできないでいる。
「こういうことは大事だと思うし、後に尾を引かないのならやっておくべきだと思います」
顔を赤くして言うミナに疑問を覚える。
「……母様からなんて聞いてます?」
「えっとその、恋愛関係だと聞いてます」
「はぁ~」
もう突っ込むのも面倒なのでそういうことにしておく。
「少し、時間をもらえればっと思っているのですが、どのくらい猶予がありますか?」
「特に制限はありませんが、そうですね一般試験とかの最終発表があるので二か月後くらいがちょうどいいかと私は思います」
二か月後か……。
二か月という猶予が与えられたので訓練をしつつ、リラとルラに話すタイミングを伺えばいい。
「それじゃあ戻りましょうか」
「はい」
「その年で三角関係なんてやりますね」
家に帰ろうと歩き出すとミナがからかうように言う。
「だからそんなんじゃないですよ」
「どんな子なんですか?」
「どんな子って……あれ?」
目の前を見ると、リラとルラがいる。
彼女達に声をかけようとしたが、次の瞬間にリラが笑顔になる。
え、怖い怖い。
右手には帯刀している木刀が目に入る。
目の前に現れ、木刀を横に振りかざす。
油断していたので、そのまま野球のボールのように後ろに吹き飛ばされる。
そのまま転げ落ちるボールのようにバウンドする。
意識は受け身を取ったので一応はあったが、痛みで動くことができない。
リラの方を見ると鬼の様な形相で追撃しようとしているのをルラが必死に抑え込んでいる。
「落ち着いてリラ」
「落ち着いてられないわよルラ、問い詰めないと!」
ミナが二人の前に行くと二人は警戒する。
優しそうな表情で二人を見つめる。
「初めまして、私はミナ。 彼の師匠を任された者です」
「リラです」
「ルラです」
ミナは二人の耳元で何かささやいている。
二人の顔が見る見るうちに夕焼けのように紅く染まっていく。
リラはわなわなしてルラは下を向いている。
サウルは痛みがマシになり、立ち上がる。
「うぅ……」
「話し合いは終わりました。 サウル、皆で戻りましょうか」
「あ、はい」
「貴方達も来るよね? 訓練あるし」
二人は首を縦に振る。
皆でサウルの家に向かって歩き出す。
顔が真っ赤で黙っている双子を見る。
何言ったんだミナ。
「何言ったんですか?」
「いえいえ、私は何も言ってませんよ。 ただ、貴方達の
言い方に疑問を覚えたが、ミナのことだから上手くはぐらかすだろう。
歩いていくと、帰路につく。
「試験は合格です。 流石師匠の息子といった所ですね」
「そりゃそうよ、自慢の息子なんだから」
「試験? 何の事?」
「あ、二人とも……これは……」
ミナの間抜け!
そう思っていると二人はミリーに近づく。
ここはサウルから言うべきだ。
ミリーはサウルを見る。
サウルは意を決したように二人に近づき、話そうとするのだった。
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