3話 お披露目、そして友達……
四歳になり言語も話せるようになった。
練習の賜物なのか千鳥足だが、歩けるようにもなった……。
「サウル~準備できたか?」
「は~い、準備できましたよ~」
母が自分の代わりにそう言う。
外に出ると周りは村だからか、無差別に家が立ち並んでいる。
歩いていくと畑仕事を行っている老若男女。
「ウオラじゃねぇか!」
「おう! 爺さんも元気か?」
ウオラは老人に笑顔で言った。
「見ての通りピンピンしてるぞ!」
「今日はお披露目か?」
「あぁ、サウルも四つになったしな……」
老人は感慨深そうに見ている。
「あの時の赤子が大きくなったの~」
老人は頭に触れ、撫でてくる。
撫でられるのはいつぶりだろう。
悪い気分ではないな……。
「そうだろ!」
「ほら、サウル……」
「はじめまして、サウルと申します……」
「ウオラより賢いじゃねぇか、本当に息子か?」
老人がそう言うと、ウオラはばつの悪そうな顔になる。
「うるっせ、正真正銘俺の息子だ!!」
「そうは言ってもな、昔のお前とは大違いじゃ」
「それを言うのは無しだぜ……」
「そろそろ行くわ……」
「儂が言うのもなんじゃが気を付けてな~」
手を振り別れ、再び歩いていく。
歩いていくうちに気づいたことがある。
二人は元冒険者みたいだ……。
父が偶に出ていく時がある。
その日は魔獣の調査に行ってたからだとか……。
そうして色々な人に挨拶をしながら進んで行くと、一際大きい屋敷の前でウオラが立ち止まる。
「ここが村長の家だ……」
普通の民家の5倍ほどの大きな屋敷だった。
流石村長、いい家に住んでるね~!!
「ここにお前くらいの年の子達が上は六歳で下は四歳、一年に一度この年齢の子達の顔合わせという名のお披露目ってのがあるんだ……」
まさか踊ったりしないよな……。
お披露目っていうと異世界ものではダンスが定番だ。
まぁ、田舎で貴族じゃない家ならそんなことはないだろう。
因みに僕の家は貴族というわけではない。
ごくごく平凡な一家だ。
冒険者という肩書があるくらいだ。
「つってもわかんないか、取り敢えず入るぞ~」
ミリーに手を引かれる。
扉の前に着くと何やら騒がしい声が聞こえる。
子供の泣き声やら叫び声が聞こえる。
子供の頃ってどうして叫んだり意味も分からず泣くのだろうか……。
まぁそれは子供の頃にしかわからない事だな。
「うるさいなぁ~」
「まぁ、我慢よ……これも大事な行事なんだから」
「いらっしゃい、もう大体は集まってるわ……さぁ、こっちに……」
出てきたお年寄りの女性がそう言って案内される。
僕達は中に入っていく……。
見た所、子どもが15人程いた……。
この中に蒼が……。
周りを見るがそれらしい子は見当たらない。
それはそうだ。
見た目が違うのだから話してみない事にはわかるわけがない……。
歩いていくと僕達用の席に着き座る……
「さて、サウル……」
ウオラは座るとこちらを見る。
「何? 父様……」
「ここはお披露目だ」
「………はい……」
「重要な事がある!」
その表情はとても真剣な顔だった。
そんなに大事なことがあるのか!?
内心驚きながら平静を装う。
「重要な事?」
「あぁ、これはお前にとって今後を左右する大事なことだ……」
そんなに大事な事ってあるのか?
そうなら前持っていって欲しかった……。
「大事な事って……」
「大事な事………それは……」
「それは?」
緊張感のある感じでそう言う。
僕は固唾をのみ込む。
言うなら早くしてくれ!
心の準備があるから!!
今更だが覚悟を決める猶予がまだある。
今なら諦めがつくというものだ。
「嫁さんを見つけることだ!!」
「んなわけないでしょ!!」
ミリーがウオラの頭を叩く。
勢いよくウオラの頭が下がる。
「痛いな! 何するんだよ!」
頭を押さえながらウオラはミリーを見る。
「馬鹿なこと言う君が悪いんだよ! 君は少し黙り給え!」
あら?
ミリーさんいつもと言葉遣いが違うぞ?
いつもなら「馬鹿なこと言ってないで」とか、「貴方が悪いんでしょ?」というはずだ。
「素が出てるぞ」
「誰の所為よ全く……」
呆れたようにウオラから視線を背ける。
これが彼女の素ですか、実に可愛らしい……。
そして視線を僕の方に向ける。
「ここはお披露目、あいさつ回りみたいなものだから安心して……」
「はい、わかりました……」
なんだ、挨拶だけか。
ウオラが変な緊張感出すから緊張しちゃったじゃないか。
ほっとしていると中心に40代くらいの男が現れる。
あれが村長か……。
男は真ん中に立つと周りは子供と静かになる。
「え~、皆さんこんにちわ! 村長のハイスです!」
村長が言うと皆拍手を行う
「初めての子もいれば今年最後の子もいますね、存分に楽しんで行って下さい」
村長はそう言うとそれぞれ名前を呼ぶ。
そうして次々、挨拶を済ましていく。
個性的な挨拶や端的な挨拶、様々だ……。
「え~、次はサウル君……」
遂に名前が呼ばれる。
立ち上がると、皆の視線が刺さる。
「初めましてサウルです。 僕は今日が初めてですが、よろしくお願いします!」
そう言って拍手が起こると、頭を下げ座る。
暫らくしてお披露目は無事に終わり、目まぐるしいあいさつ回りは終わった。
五歳になった。
「サウル~!!」
少女の声に振り向くと二人の銀髪の少女がこちらに向かってきていた。
丸い目をした方がルラつり目の方がリラという名前だ。
二人とも綺麗な白銀の眼を持った美少女だ。
双子の少女たちが僕の前で止まる。
「やぁ、リラにルラ」
後ろに隠れているルラにも声をかける
「こんにちわ、サウル……」
照れくさそうにルラが言う。
「あそぼ~!!」
対照的にリラは元気よく僕の方を見て言う。
「いいよ、何して遊ぶ?」
リラは「う~ん」っと考える
「ルラは何がしたい?」
「え、私?」
「何かしたい遊びはない?」
そう言われルラは胸に抱いている本を握りしめ、
「じゃ、じゃあ本読みたい……」
持っていた本を掲げる。
「それ、遊びじゃないでしょ!!」
リラが突っ込む。
ルラはオドオドしながら、
「あ、そうだった……じゃあ追っ駆けっこ……」
リラは納得したのか僕の方を向き、
「サウルもそれでいい?」
「あ、うん大丈夫!!」
そうしてジャンケンをする
「ジャンケン、ポン!」
グーを出すと二人がパーを出していた。
流石双子……。
じゃんけんの結果、捕まえる役になった……。
「じゃあ始めるぞ~」
木の方に向き、目を閉じる。
「い~ち、に~い……」
二人は走り出した音が聞こえた。
「にじゅうきゅ~う、さんじゅ~う!」
30数え終えると目を開け、辺りを見渡す。
「さてと……」
目の前の木の後ろの方を見る。
木の裏に顔をのぞかせるとそこにはリラが隠れていた。
「わかりやす過ぎるだろリラ」
驚いたようにこちらを見ている。
「え、どうして!?」
「足音が途中から一つしかなかったから」
はじめの方足音は二つあったが、途中で一つの足音が奥に歩いて行ったのはわかっていた。
リラは見つかると笑顔で見る。
観念したか……。
そう思っていると全力で逃げだす。
「逃がすか!」
予測していたので直ぐに追いかける。
しかし、リラは何かに躓き体勢を崩した。
「きゃっ……」
「リラ!」
彼女の手を引っ張ると体勢を立て直した。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
「全く、リラは危なっかしいな……」
「あはは~」
照れくさそうに顔をかく彼女。
「さて、」
見渡すが、ルラの姿が見当たらない。
「どこに隠れているんだ?」
そうして歩いて行った方を探すがいない……。
耳を澄ますが、流れるのは風の音で草木が揺れた音だけだ。
まるで完全に気配を消した忍者のようにじっと息をひそめていた。
そう思って探していると、近くでぺらっと紙が擦り切れる音がした。
「ん?」
音の方を探すと本を開き寝転がっているルラがいた
気配を消しているわけじゃなかった。
本に集中して消えていたのだ。
「ふむ、白か……」
その発言に気が付いたのかこちらを見る。
顔を見るとみるみる真っ赤になっていき、スカートを抑えるルラ。
「な、なな……」
リラは状況を見ていたのか、呆れた感じでルラを見る。
「これはルラが悪いよ、なんて体勢で読んでるのよ……」
「だって隠れないとだから……」
「だからって……」
呆れた顔をしているリラを無視してルラはジト目で見てくる。
「がっつり見てた……」
「すみません……」
まぁ、餓鬼のパンツに興奮するほどそっち側の人間ではない……はず……。
「変態!」
恥じらいながら吐き捨てたルラ。
夕方まで彼女達と遊び、帰路に着く。
「ただいま~」
「おかえり~」
「お、今日もあの子達と遊んできたのか~?」
「あ、はい……」
「仲いいな、将来の嫁さんはあの子達だったりしてな!」
「そうね、あの子達ならいいかもね~」
「まだ早いですって~」
六歳に何を言ってるんだか……。
「はは、いいじゃないか……あの子達は将来美人になるぞ!!」
「あはは~お風呂行ってきま~す」
「おう、行って来い!」
風呂に入り、夕食を食べる。
その後自室に入り、本を開く。
読んでいる本は魔法の本だ。
この世界は前の世界の異世界転生物の小説と同じく魔法が存在する。
ただ違うのはこの世界は魔法の種類が多いのだ。
それぞれ得意な魔法の特性がありそれによって威力が変わってくる。
大まかに分けると、この世界の魔法は自然魔法・錬成魔法・治療魔法・特殊魔法の四大魔法に分けられる。
そこから自然魔法は火・水・雷・風・聖・陰の6つに分かれ、錬成魔法は錬金・投影・錬成・魔術の4つ分けられ、さらに固有の名称で分れる。
魔法を使う際には適性があるらしく、それによって魔力消費や扱いは異なってくるのだ。
魔法適性は六歳で冒険者ギルドで測るそうだ。
後一年で適性魔法がわかるまでは無理せず、魔法の知識を勉強するのだった。
1月12日訂正
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます