異世界転生
目を開けると一瞬、巨人かと思ってしまうほどの大きな二人の男女が目に入ってくる。
でっけぇ~!! なんだこの人達は……。
手を見ると、思った以上に細く小さい手だったので。
目の前の男女を見つめる。
黑の短い髪に勝気な瞳の男性とポニーテールが印象的な女性が僕を見ていた。
これが、新しい両親か……。
両親は笑顔で僕の顔を見て何かを話している。
当然言葉は自分たちのいた世界とは違う。
なにをいっているのかさっぱりだ。
取り敢えず早く、大きくなって彼女を探さないと……。
ウルクスの話では世界の近くの場所に転生させると言っていた。
まずは大きくならないといけないな……。
目を開けて数秒なのに身体が疲れる。
そして急に眠気が襲って来て、目を閉じると再び眠りに着いた……。
数週間後
何もすることがない。
何もできない。
うまく体が動かない。
退屈で死にそうだ……。
赤子は寝るのが仕事と言うが、前世の記憶がある僕にとっては退屈に尽きる……。
身体は動かしにくい。
そうしてしばらく起きているとまた眠くなる。
一日の大半は眠っている。
体は動かないし、上手く喋れない。
見えるのは天井ばかりだ。
時折、両親に絵本を読んでもらって寝ることもあるが、何言ってるかさっぱりときたもんだ……。
早く動けるように喋れるようにならないかなぁ〜。
何より嫌なのは赤子なので耐える力が無いのかすぐに……はぁ~。
身体が震えるとともに、下半身が生ぬるい感触がする。
また漏らしてしまった……。
普通の赤子なら、気持ち悪くて泣くのだろうが耐える……。
お漏らしだなんて恥ずかしくて言えない。
ただ物凄く気持ち悪くなってくる。
めっちゃかゆい……。
「あ~! うぅ~!」
耐えきれず、大声をあげる。
叫び声を聞きつけ、女性が駆け寄ってくる。
「―――――――~」
おむつを取り換える。
「――――――」
「―――――」
両親は何かを話している。
全く分からん……。
ただ一つ言えることは、穏やかそうな顔で見て話している。
そうしておむつを履き替え終わると、二人はいちゃつき始めた。
畜生! なんて羨ましいんだ! こっちとらまだチェリーだぞ!
………そりゃそうか、生まれ変わったのだから……。
それにしても若いな、見た感じ前世の年齢とそんなに変わらない……。
どうでもいいことを思いながら、来たるべき日までゆっくり眠るのだった。
数ヶ月後
ようやく首が座ってきてハイハイが出来るくらいにはなった。
といっても外出は出来ず家を回るだけなのだが……。
それでもあの頃のようにただ天井を見ているだけよりかは新鮮味溢れた。
言葉も最近ではわかるようになってきた……。
赤子だからだろうか……。
前世の時もそうだったが、アメリカ人の両親は英語、日本は日本語とそれぞれの国の言語は両親の会話によって覚えるのだろう。
彼らが話していることは少しずつではあるがわかってきた。
やはり赤子の頃というのは物覚えが良い……。
話が判るようになり、この世界のことが少しずつわかってきた。
この国はアルス王国のフィワル領の中の村だそうだ……。
名前はフラ村という。
この身体の名前はサウルと言うらしい。
父はウオラ、母はミリーというそうだ。
因みに世界は魔王と勇者という存在がいる。
とはいってもこの世界の魔王は少し違う。
魔王は魔族の統治、勇者は人間や多種族の管理を主に行う。
例えば、戦争が起こった際には鎮圧又は無力化をする。
多種族間で戦いが起こった際の抑止力なのだ。
この世界って平和なんだなぁ〜。
アニメの世界だとさ魔王と勇者が戦いお互いが壮絶な人生ってのが鉄板なんだろうけどさ……。
平和ならそれはそれで嬉しい限りなのだが……。
そう思いながら過ごしていると3歳になった……。
時間が流れるのが速い……。
やることが多いからだろう。
まだふらつくが歩けるようになった。
「ぅあっ……がぁ……」
喋りにくいな……。
喋るのもまだ下が発達していないので話すのもおぼつかない。
まぁもうあと少ししたら、外に出れるかな。
5歳になれれば近所なら歩けるだろう。
蒼と再会できる。
あと二年の辛抱だ。
その前にまず歩けるようにならないとな……。
今日も歩く訓練を続けるのだった。
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