第2話初夏から夏・賑やかな季節

五月六日

締め切りが終わり、私は少し遅いゴールデンウィークを楽しんでいた。

「ねえ、せっかく休みなんだからどこかにいこうよ!!」

陽さんが私に言った、ここは付き合ってあげよう・・・。

それにしても陽さんの明るさは相変わらずだ、兄と離婚して私と結婚するまでかなり急な出来事だったはずた。

それなのにまるで女子高生みたいなテンション、壊れているんじゃないかと心配になった。

陽さんはスーパーへ服を買いに行った、私はただの荷物係と付き合い。

買い物を満喫した陽さんは、レストランで昼食を食べた。

ナポリタンを食べる陽さんに、私は質問した。

「あの・・・、急に私と結婚することになってしまったけど、陽さんは大丈夫なのか?」

すると陽さんは少し暗い表情で言った。

「そりゃ、理不尽だよ。このまま一人で生きていこうと思っていたのに、勝手に決めちゃってさ・・・・。でも、私は宗助くんのこと好きだよ。」

最後の言葉は 、パッと明るい笑顔になっていた。








五月三十日

気温が上がってきたこの頃、松永が私の家に来た。

「やあ、出田。結婚おめでとう!」

「ありがとう、上がっていってよ。」

松永が リビングの椅子に腰かけた。陽さんがクッキーと紅茶を、持ってきた。

「紹介するよ、陽さんだ。」

「初めまして、出田陽です。よろしくね!」

陽さんはいつもの笑顔で言った。

陽さんがキッチンへ引っ込むと、松永が私に言った。

「明るくて可愛い嫁さんじゃないか!!なあ、一体どんな出会いをしたんだよ?」

松永が私に興味深々にたずねてきた、話す価値もない出会いなのに・・・。

私は話すことを渋ったが、松永は「余計に気になる」としつこいので、陽さんとの出会いを話した。

「えっ・・・、ハハハハハ。そりゃ、複雑だなあ・・・。」

案の定、松永は苦笑いをしながら引いていた。













六月四日

陽さんが週三で、水泳を始めた。

元々泳ぐのは好きなようで、夏に向けてのダイエットの意味もあるようだ。

「それでね、新婚旅行に海に行きたいな。あーっ、今から楽しみだなあ・・・。」

陽さんは背伸びをしながら言った、これから暑くなる季節だというのに陽さんは元気いっぱいだった。








六月十二日

今日は新作「エレメント・ボーイ」の発刊日だ。

これは不思議な力によって炎や水を操る、少年少女たちを描いた小説だ。

陽さんは今日買ったようでじっくり読んでいた。

「ふふふ、面白ーい!!さすが小説家だね、すごいーっ!!」

陽さんはまるで、読み聞かせをしてもらった小さな子どものような答えを言った。

でも、やはり自分の作品を褒めてもらうのは嬉しかった。









六月十九日

今日は陽さんがスイミングをしにプールへ行っているため、昼間の家には私だけだ。

いつもの読書を終え昼食を作ろうとキッチンに行くと、ラップのかけてある焼きそばの皿が目に付いた。

「陽さん・・・、ありがとう。」

やっぱり、陽さんはいい人だ・・・。









六月三十日

今日は印税が入る日だ、出版社から綾瀬がやってきた。

「はい、今月おつかれさま。来月もこの調子でよろしく!それから、締切日は気をつけてね。」

綾瀬は含みのある言い方をして帰っていった、今日はのんびりしょうと思ったが仕事をすることにした・・・。








七月七日

今日は七夕ということで、陽さんが短冊を私に渡してきた。

「お願い書こうよ。私はね、このままの生活が続けばいいなあ・・・。」

短冊にお願いを書くなんて、子どもの頃以来だな・・・。

だが夢を叶えた私は、短冊に何を書けばいいのか・・・。

原稿を書くように、スラスラ書くことは出来なかった。










七月十四日

今日は締め切りで疲れ果てた・・・。

パートから帰って来た陽さんが、アイスクリームを買ってきた。

「さあ、どうぞ!」

しかし陽さんが買ってきたのは、私の分だけだ。

「陽さんは食べないの?」

「うん、いつも小説書いてるあなたにプレゼント。それに、あたしダイエット中だから。」

やっぱり陽さんは、優しい。

こんな陽さんの何が不満なんだったんだと、兄に疑問を向けた。









七月二十八日

私と陽さんは内海海水浴場へやってきた。

「暑いなあ、やっぱり外には出たくなかった・・・。」

「宗山、お待たせーっ!」

「ああ、陽さん・・・!!」

私の目が釘付けになった、そこには美しいスタイルの陽さんが「ヤッホー!」と言いながらこちらへ走って来た。

白にカラフルなハイビスカス柄の水着が、夏らしさを感じださせていた。

「どう?私、可愛いでしょ?」

「ああ・・・、可愛いよ・・・。」

私はその刺激的な姿に見とれて、あまり言葉が出なかった。

「それじゃあ、泳ごうか!!」

陽さんは私の手を握ると、そのまま海へと向かって行った。

波打ち際で私と遊ぶ陽さんは、紛れもなく可愛かった。

暑くて少し恥ずかしかったが、賑やかで楽しい海水浴で私は楽しかった。

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