第22話 一緒に食事を③ ルディウス視点
「ところで、昼みたいなことは初めて?」
食事を終え、あとは食後にお茶を飲みながら談笑していたとき。
話の切れ目にクリスが少し真剣な声音でそう言った。
「?」
なんのことかわからない。
クリスは二人を見て話しているし、きっと俺のいない間の出来事なのだろう。
「あぁ、あれね。あたし、知らない男に突き飛ばされたのよ。それをエルが受け止めてくれて、さらにクリスが受け止めてくれたの」
イブがいなかった俺に事情を説明してくれた。あれはそういうことだったのか…イブもいたのか。
「あの人、私と一緒に入学した人だと思うの。私がうるさかったのかもしれないわ」
「だから知らない顔だったのね…」
「エルミナちゃんは彼と話をしたことは?」
「いいえ。顔を知っているだけで名前も覚えてないの。ごめんなさい」
「クリス、何かあるのか?」
俺の質問にクリスは少し雰囲気を和らげる。
「いや、そうじゃないんだけど。彼、ダニエル・クロウっていうんだ。僕も話をしたことはないけれど、クロウってクロウ商会かなって」
「最近業績を伸ばしている商会か」
古くからこの国を支えているエスター商会と違って、クロウ商会はここ数年で急に名を上げた商会だ。
「もしかしたらイブのことを知っていて、ライバル視しているのかなって思ったんだ」
「それで一緒に食事をしてくれたの?」
イブが合点がいったような顔をする。
「学院内で何か起こるとは考えにくいけど、相手は男だし注意するに越したことないだろう?普通の感覚…ましてや商人の息子なら公爵家と侯爵家、三つの家と懇意にしている人に簡単に手を出したりはしないだろうからね」
「ありがとう…」
「いえいえ。これからも時間が合うときはまた一緒に食事しよう。ルディウスもエルミナちゃんと少しでも一緒にいたいだろうし」
クリスの最後のセリフに反応すべきなのかもしれないが、正直嬉しい。否定はしない。
「イブのことは私が守るわ!まかせて!」
胸を張るエルミナが可愛い。可愛いがお前を守るのは俺だ。
「それに4人の食事会とっても楽しかった!」
満面の笑みを浮かべるエルミナを見て全員が微笑んだ。
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