第21話 一緒に食事を②   ルディウス視点

座ったのは食堂の端、柱がうまい具合にあって周りの視線が気にならない場所だ。

端なので注文した料理を運ぶのが大変だったりするが、落ち着いて食事ができると人気の場所だ。

テーブルは4人掛け。

今夜はなんとなく男女分かれて座る形になった。



俺の目の前でエルミナが食事をする。そのことに内心かなり浮かれている。


「あ、ナフキン忘れちゃった。ちょっと取ってくるね」


各々食事を注文して着席したとき、エルミナが忘れ物に気付き、一人席を外した。

その瞬間を狙ったかのように、イブ・エスターが俺のほうへ身を乗り出して小声で話しかけてくる。


「あたしたち、ずっとクラスメイトだったけど接点なかったじゃない?でもなんかあんた見てたら仲良くなれそうな気がしてきたの」

「はぁ…」


こいつは貴族ではないのは知っている。

男女問わず、こういった口調で話しかけられるのはここでは珍しい。

自分もあまり本来は丁寧な口調じゃないから、むしろ気構えずにすんでラクではある。

しかし、いきなりなんだ。何が言いたいんだ。


「だから、これから仲良くしてもらう手土産に――」


さらに身を乗り出して、さらに声を抑えている。

思わず少し、聞く体勢になってしまった。


「エルがどんな寝巻きで眠るか、教えてあげようか…?あとはそうね、下着の…色とか――」

「!!」


何を言い出すのかとびっくりしてイブを見るとニヤけた笑みを向けて、こちらを伺っている。

俺は次にイブが何か言う前に、目をギュッとつぶり、耳を両手でふさいで小声で叫んだ。


「ダメだダメだやめろ!眠れなくなってしまう!!」

「いや冗談だって。頼まれても教えないよ」

「うわぁイブいじわるだ~」

「やばいね、この子ちょーおもしろい」


全ての情報を遮断したおかげで妄想をリアルにせずにすんだが、イブとクリスが何か言っていた内容までは聞き取れなかった。



もういいだろうかと耳はそのままに、目を開ける。

すると目の前に耳を両手でふさいで面白そうに俺を至近距離で見つめるエルミナの姿があった。

俺のマネをしているのか。めちゃめちゃ可愛い。

ちょっと肩がびくついたが、大丈夫。落ち着け俺。取り戻せ紳士。


「みんなで何話してたの?怖い話?」

「別に――」


表情を取り繕って、元の正しい姿勢に戻るとイブとクリスが声を殺して笑いを堪えていた。


「ルディウスが近くにいないときには、エルはあたしのだからって話」


笑いが引いたイブがそうエルミナに話す――いや、そんな話はしていない。


「えぇ?なにそれイブかっこいい」


エルミナもまんざらでもなさそうだ。


「ほらほら冷めるから食べよう~」



そしてはじめての4人の食事はとても和やかに進んでいった。

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