第20話 一緒に食事を① エルミナ視点
「あたしも一緒でほんとにいいの?」
一日の授業を全て終え、クリスに言われた夕食の時間だ。
イブが微妙な顔で食堂へ向かう。
「クリスは二人一緒に、って言っていたし…私一人は寂しいわ」
「んー」
イブが難しい顔をしている。
「あたし、レヴォーグとは同期だしヴィクトールとも普通に話せるけどさ。ぶっちゃけそんな接点ないんだよねー。正直、お邪魔虫になる未来しか見えない」
憂鬱そうなイブに悪い気持ちと、ルディと食事できる楽しみで私の心は揺れている。
「あ、二人とも。来てくれてよかった~」
クリスとルディウスも食堂に入るところで出くわした。
「あっちの端の席、さっき取っといたんだ~」
「え、取っとくとかできるの?」
イブが自分の知らない方法に食いつく。
「んー?真剣な顔して『席を確保しておきたいんです』って言ったらOKしてくれたよ」
「えぇ…それあんたしか使えないやつじゃん」
「今日だけ今日だけ~」
先に入っていく二人の後についていく形で、私とルディが横に並んだ。
さっきの距離を思い出して、恥ずかしくなってしまった私はルディを正面から見れずに、表情を盗み見た。
ルディは意を決したような真剣な顔をしていた。
「ルディ?どうかしたの?」
「エルミナ…その…昨日と、さっきも…ごめん…」
食堂は賑やかだったし、後のほうは声がしぼんでしまって、よく聞こえなかった。
なんとなく真剣な様子だったから聞き返しづらい。
「私、ルディと食事できるなんて嬉しい」
違うなら違うと、ルディなら言うだろう。そう思って私の言いたいことを言った。
「そ、そっか…」
話がかみ合ってないと怒られるのを覚悟していたが、怒られることはなくルディは私とは反対のほうを向いてしまった。これでは顔が見えない。
「ルディ?大丈夫?」
「…なんでもない」
そうしてチラッと私を見て、食堂の席を目指して歩いていく。
「ほら、エルミナ何食べるんだ」
「あ、えっと…」
「――ねぇ、ヴィクトールってあんな愉快なヤツだったの?」
「うん。あれで隠せてると思ってるみたい。僕も最近知った」
「やばい。楽しくなりそう」
「でしょ。僕たちもご飯選ぼ~」
こうして4人一緒の夕食が始まった。
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