第19話 嫉妬したでしょ   ルディウス視点

「今夜エルミナちゃんと食事する約束したよ」


食堂に戻り、クリスと食事を始めた途端そんな爆弾が降ってきた。


「な…なんで…」


うまく笑えない。いや、笑うところじゃないのか。エルミナは了承したのか。


「僕と、ルディウスとイブとエルミナちゃんの4人ね」


付け加えられた言葉にクリスを見ると、余裕そうな顔でこちらの様子を見ている。


「…わざと後出ししただろ」

「これでエルミナちゃんと食事する口実ができただろ」


俺の言葉を無視してふふん、と笑ってピースサインをしてみせる。

さっきの食堂でのサインはそういうことだったのか。


「ん」


自分がクリスに嫉妬していたことがいたたまれない。


「嫉妬してた?」

「!!」


一瞬心を読まれたのかと思った。


「君さ、エルミナちゃん来てから顔に出すぎ。いやむしろそっちが本当の君なのかな。そっちのほうがいいよ。すごくいい」


こいつはいつも何か見透かしているような言い方をする。だけど悪い気はしない。


「それに心配しなくても、君とエルミナちゃんの邪魔したりしないよ。安心して。僕好きな人いるし」

「え…そうなのか?」



初耳だ。

そういえばこいつは男女ともに友人は多いし、よくそういった誘いも受けているが色恋沙汰は聞いたことがない。


「今はもう他の男のものだけれどね…毎晩僕以外の男に抱かれているのかと思うと気が狂いそうだよ…」


クリスの見たことのない悲しげな表情に、もしそれが自分だったらと想像してしまう。

とてもかける言葉が見つからない。

そんな重苦しい空気を払拭するかのようにいつもの緩い雰囲気を出して笑顔を作る。


「まぁ、僕は相手の顔を知らないし。知らないうちは現実感ないのが救いだよ。それに想うだけなら僕の自由だろ?だからルディウス、自分の気持ちに正直になったほうがいい。今同じ場所で、同じ時を過ごすことがどれだけ奇跡なのか。一緒にご飯を食べれるなんて、すごく幸せなことなんだからさ」




ふと、前にクリスが言った『自分が泣かせたならいいじゃないか』という言葉が甦った。


「ん。ありがとう、クリス」


俺はいつかこいつの力にもなりたい、そう思った。

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