第17話 食堂で見たもの   ルディウス視点

教師に声を掛けられ、一人遅れて食堂に向かった。

特に約束しているわけではないが、食事はいつもクリスととっている。

なんだかんだ、あいつが一番気が合う。


あいつは適当に見えて、実は誰よりも空気が読める。

勉強だって運動だって、誰もあいつにはかなわない。

家柄だって公爵家の長男だ。

男の俺から見ても格好いいし、その温厚な人柄で友人にも恵まれている。もちろん女子にもモテる。


だから、一番恐れている。

エルミナがクリスを選んだら。クリスがエルミナを気に入ったら。


婚約しているとはいえ、公爵家が名乗りを上げたら俺程度ではどうにもならない。

クライン侯爵も、相手がレヴォーグ公爵家だったら婿を取ることを諦め、エルミナを嫁に出すのではないか。

エルミナを泣かせてしまったのが後を引いている。悪い想像をしてしまう。




食堂に着いた。今日も混雑している。クリスは席を確保できただろうか。

視線をめぐらせると、そこにはエルミナをその後ろで抱きとめたクリスの姿があった。


「!!」


思わず隠れてしまった。何が――何が起きているのか。




そっと物陰から様子を伺うと、もう二人は離れていた。

それでも二人にこやかに話している。

もう…もうあんなに打ち解けたのか。いつ、なにがあって。


エルミナがクリスに会釈をしている。

別れの挨拶だったのだろうか、クリスは食堂の中に、エルミナは食堂の外へ向かって歩いていく。



どうしたいのかわからないが、俺はエルミナを追いかけた。

チラと見たクリスも俺を見つけていて、なぜかピースサインをよこした。

なにがピースなのか。なんなんだ、なんなんだ一体。


(エルミナ…っ)


もう少しでその背中を捕まえられる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る