第15話 イブ・エスター   エルミナ視点

入学歓迎パーティーの効果は絶大だった。

初めてだらけの学院生活だけれどクラスメイトの顔を知っているだけで、すんなり馴染むことができた。

恥ずかしい姿を見せてしまったけれど、同室のイブと仲良くなれたのが一番大きい。

彼女はとても自由だった。



小柄な彼女は、まるで小動物のように可愛い。

桃色の髪はくるくるとしていて、女性では珍しく肩につかないほど短い。

それでも体つきはしっかりと女性でいて、そのスタイルがとてもよく似合っている。

小さな頃から同じような姿で過ごしている私にはイブという存在がとても衝撃的で、とても魅力的だった。

そんな彼女は『淑女』『令嬢』という概念に固められた貴族令嬢たちにとって、とても眩しい存在だった。

学院内でのみ許された束の間の自由生活を満喫するお手本だった。


もちろん私もイブに惹かれた。

ほんの一日話しただけで、私はイブのことが大好きになっていた。



彼女は7歳から入学している満期生なのだとか。それはとてもすごいことだ。

この国に学校はここだけではない。家から学校へ毎日通って勉強することだってできる。

7歳の子が親から離れて、身の回りのことをすべて自分でしつつ、勉強までするのだ。

それを10年も。

続けられる子もすごいが、それを支え続けることが可能な家もすごい。



イブの家はエスター商会という老舗の商会なんだそう。

貴族ではないが、この国の物資は必ずどこかでエスター商会が絡んでいるといっても過言ではないくらい有名な家だ。


「商売のことはよく知らない。あたしには兄と弟がいるから。私は私のやりたいことをして家を支えるの!」


そういう彼女は本当に輝いているように生き生きとしていた。

イブは学院内で流行っているものや、これから流行りそうな物事を実家に伝えているのだとか。

逆に外での流行も、学院内に持ち込む。

それが家の利益になっているから、10年も在学することが許されているのかもしれない。



家に、家族に、両親に必要とされているイブが羨ましかった。

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