第11話 反省と過去① ルディウス視点
(どうしよう…泣かせてしまった)
入学歓迎パーティーで、男たちがエルミナに話しかける機会を狙っているのは遠目から見ていても明らかだった。
パーティー終盤の暗黙の了解、なんて言われているらしいがエルミナは対象外だ。
相手はもう俺と決まってる、昔から。
早く会場から出て部屋に連れて行きたい気持ちと、せっかく楽しんでいるのを邪魔したくない気持ちで、時間ギリギリになってしまった。
ここぞとばかりにわかりやすく誘ってくる女を全員クリスに押し付けて、エルミナを連れ出した。
今思えば、もうここでだいぶ頭に血が昇っていたのだろう。
足早にホールを抜けた後にエルミナを見ると、彼女は顔を真っ赤にして震えていた。
大きな瞳には涙がたまって、今にも零れ落ちそうだった。
ざぁっと血の気が引いた。
強く手を握ってしまったかもしれない。
早く歩きすぎたかもしれない。
気持ちを、無視してしまったのかもしれない。
俺が怖かったのかもしれない。
なんとか絞り出した謝罪の言葉に、彼女は俯いたままだった。
そしてそのまま…別れてしまった。
俺は、俺だけは彼女を泣かせないと決めていたのに。
***
俺は侯爵家の三男として生まれた。
年の離れた兄二人はとても優秀で、我が家は安泰だと両親も領民もみんながそう思っていた。
だから俺はそんな後継のプレッシャーもなく、やりたいことをやりたいようにやっていた。
勉強は好きじゃない。それより外で遊びたい。
ダンスは楽しくない。それより馬に乗っていたい。
侯爵の息子としてやるべきことより、子どもとしてのびのびと――そんな生活が誰からも許されていた。
ある日、俺に婚約の話が出た。それも婿入りだ。
俺は10歳だった。
兄二人にもまだそんな話はないのに、どうして俺が――簡単だ。
俺はこの家にはいなくてもいい、そんな駒だったんだろう。
俺は確かに両親に、家族に愛されていた。それを疑ったことはない。
だが、侯爵家の子どもとして期待されてはいなかったのだ。
ショックは受けたが、納得もした。
今まで好き勝手やってきたツケが回ってきたのだと、そう思った。
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