(四)-3(了)

 そしておつりを受け取ると、彼女は席に戻っていった。

 本当なら、そのセリフを言うのは、私のはずだった。本当なら彼の隣にいるのは私のはずだった。本当ならあのベビーカーに乗っているのは、私と彼の子どもだったはずだった。それなのに……。

「ありがとうございました」

 同時に、私の口から出たその言葉とは裏腹に、私の目からは、涙が流れ落ちていた。

 次のお客さんがカウンターの前に来て、注文しようとしていた。

 でも、流れ出る涙を止めることはできなかった。カウンターの上に涙の水滴がいくつもこぼれた。

 「いらっしゃいませ」と言おうとしたのに、喉の奥で何かが詰まっていて、声が出なかった。


(了)

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このまま 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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