転生できるらしいので厨二全開で行きます。

 あれ?ここどこ?え、何、真っ暗なんだけど。


 さっきまで俺、久々の新刊出した好きな作家の本買いに外出てたんだけど……もしかして事故かなんかで植物人間状態とか?


 いやいや、それにしては意識はある。うん。


 手とか足は見えないから、本当に真っ暗だ。


 あれかな、死後の世界ってやつ?それか臨死体験?あるいは、身代金目的の誘拐とか?うーんわからない。



『ああ、ようやくお気づきになられましたか。』



 え、何?声?



『混乱しているところ申し訳ございません。少々わたくしの話に耳を傾けていただきたいのですが。』



 いいけど。とりあえず電気つけるなりして欲しいかな?真っ暗で結構不安なんだよね。



『……そのようには見えませんが……そういうことなら、少々お待ちを。今擬似的な肉体と視覚をお貸し致します。』



 え?肉体?視覚?


 って、うぉ!急に目が見えるように。って、オー、すっごい美人さん!



『あ、ありがとうございます……え、えっと、不備などはございませんか?不調や、違和感などは?』



 特にないかな?いやーそれにしても眼福眼福。いるんだねぇこんな美人さん。



『あの、あまり美人などと言わないでください、その、恥ずかしいので。』



 あ、はい、わかりました。あ、俺、遊真夕鶴人あそまゆづひとって言います。宜しくお願いします。



『これはご丁寧にどうも。遅ればせながら御挨拶を。お初にお目にかかります、第七十七統合次元内包十三番次元輪廻、生命、死、その他複合管理部門統括第壱柱、転生部門代表、ネヘモットと申します。以後お見知り置きを。』



 第七……えっと、とりあえずネヘモットさんね、うん、覚えた。宜しくお願いします。



『はい、宜しくお願い致します。』



 それでなんたらの代表のネヘモットさんが俺に何の用?誘拐とか?それに転生がどうとかって。失礼だけどアイタタな人?



『しょ、少々失礼な気がします……わたくしはアイタタな人ではありませんし、誘拐ではありません。………………………………………………………………………………強いて罪状を申し上げるなら、殺人?』



 それもっとやばいですやん。



『いえ、わたくしが直接なにかした訳ではありませんよ?わたくしはあくまでも補填と補償、それに損害に対する賠償。そして何より謝罪をしに来たのです。』



 ほう、なして謝罪なんかを?



『そのあたりの説明や今後のこともあるので少々お時間を頂きますがよろしいですか?』



 はい、よろしいですよ。



『では、まずは謝罪を。この度はわたくしの所属、管轄内にある十三番次元の住人の凶行を阻止できず、貴方様の生命活動を停止……すなわち、殺害してしまい……まことに申し訳ありませんでした。』



 は?え、やっぱり、俺死んでるの?なんで?



『こちらの次元……十三番次元の住人が力をつけ、愚かにも次元を超え世界を征服……次元全てを統合しようと行い、無理矢理次元の壁を切り裂き、それによって複数の次元に裂け目ができ、その裂け目に飲まれる、あるいは裂け目が体に現れ、その、切断されてしまう、など、様々な影響が現れ、都合十八の次元、そして三百名を超える男女が死亡、あるいは元の次元に戻れなくなってしまいました。』



 つまり、そっちの次元が世界征服しようとしてそれが関係ない俺たちに影響しちゃったと。



『そうなのです……本当に申し訳ない限りです……現在十三番次元は処罰として直接関与の存在は永劫の責め苦を、直接は関わりなくとも、同じ次元の住人に対し神罰による天変地異が実行されました。』



 いや、そんな事言われても……というか、おんなじ次元の人とばっちりですやん。



『もちろん、罰を説明して終わり、ではございません。』



 ふむ、今後のこと、ってところかな?



『はい、今後についてです。まず前提として、死んでしまっていること、はご理解頂いていますか?』



 まあ、一応は?実感ないけど。



『続いて、先程から何度か言っておりますが、複数の次元が存在し、それぞれ文明や能力が異なる、と理解してください。』



 ふむ、七十七あるんだっけ。つまり七十七通りの次元、文明なんかがあると。



『はい。そういう理解であっています。それで、遊真夕鶴人さんがいる世界は比較的古い世界、第六番次元で、科学技術が発展した世界です。』



 まあ確かに、色々便利になったよね、五年前と比べると進歩が目覚しいなって思う。



『それに対し、第十三番次元は魔法技術が発展し、遊真夕鶴人さんの世界以上に戦闘や暴力が多い世界でした。』



 なるほど、だから世界征服なんて小っ恥ずかしいこと本気で目指しちゃったんだ。



『お恥ずかしながら、そういうことです。』



 ま、原因はわかったけど、それで今後って?



『はい、先程理解頂いたように、七十七通りの次元があり、多様な組み合わせがあります。そして、ここからが本番ですが、今回死亡してしまった方たちには、大変申し訳ないのですが、蘇生、復活、といった措置ができないのです。』



 え、無理なの?なんか蘇らせてくれそうな感じだったのに。



『正確に言えば、遊真夕鶴人さんが、遊真夕鶴人さんとして、死亡する直前に戻す。あるいは死体を蘇生し直し、肉体に魂を戻す、というのができません。理由としては全てをお教えするわけには行かないのですが、一番の理由はわたくしなのです。』



 ネヘモットさんが理由?



『はい、わたくしは、すごく簡単に言ってしまえば転生を司る神なのです。』



 ほうほう



『そして死を司っています。』



 ふむふむ



『さらに生命も司っています。』



 結構お偉い感じ?



『まあ、これでも主神クラスですので。』



 おぉー



『……おほん。で、ですね。生命の能力は生きているものへの祝福、死の能力は死せるものの安息、そして転生の能力は罪を償い、安息を得た魂を新たな命として顕現させる、と言ったものです。』



 そこだけ聞くと正しく神様って印象だな。



『ただここで重要なのが、死者の安息、なのです。あとは転生もですね。』



 死者の安息って言うと、想像するのは天国とか極楽浄土だな



『そういうイメージであっていますが、生きているものは基本罪を重ねます。その罪を浄化し、安息を与えられるよう、それなりの罰などを受けていただきます。』



 天国と地獄が合体してる感じかな?



『まあ、大雑把ですがそういう認識で構いません』



 ……それで?



『生命は既に生きているものを、死は罪をすべて浄化したものを。つまり、蘇生、復活のように死者を蘇らせる能力はわたくしにはないのです。』



 え、でも転生もあるんじゃ?



『はい、転生も司っております。そしてこれが厄介なところで、転生はあくまでも、そちらでいう輪廻転生と同じで、巡っていくのを補助するものでして。』



 あー、つまりよくあるパターンなのか……



『はい、そちらでいうふぁんたじぃや物語における転生、ではないですね。できない訳では無いのですが、お互いの次元にはできうる限り干渉しないというのが暗黙の了解な上、基本的に外へ行こうとする魂もほとんどいないので。』



 ふむふむ。つまり外の世界のやつだから蘇生は無理と。で、できるのはその言い方だと転生ってところ?



『その通りです。簡単に言いますと、転生にいくつかの特典を付けさせていただきます。あとは、お好きな次元に転生する権利もあります。』



 特典?それって自分で決めれるの?



『はい、例えば、お金持ちの家に生まれる。異性に好感を持たれやすくなる。スポーツで名を残す。そういった転生後の人生に関しての特典ですね。もちろん、病気や怪我などからもお守りいたします。』



 おぉ、それってかなりすごいな。



『ただし、それらは魂の容量……希望される方のキャパシティの範囲をほんの少し超える程度までしかできないのです。超えすぎると歪な結果を招いてしまいますので。』



 なるほどね……ちなみに俺だったら大金持ちになれたりする?



『そうですね……ええっと……ふむ、遊真夕鶴人さんの魂の容量だと……かなり裕福な家庭になれますね。』



 おお、具体的な金額とかはわかるんですか?



『具体的な……ええと、遊真夕鶴人様が三十五歳での資産は……千七百億となっておりますね。』



 せ、せんななひゃく……そ、それマジですか?



『はい、事実です。ただ、容姿や家族関係など、あらゆる要素を排除した結果ですので、詳細はわかりませんが。』



 あー、まあ、たしかに、金だけ持ってても幸せかどうかまでは……そういえば、転生後って記憶があるの?



『転生前の記憶は基本的に遺さないようになっております。無用な混乱を避けるための措置です。』



 じゃあ金持ちになる条件とか聞いても意味が無い気がするんだけど。



『そこは因果律などを影響のない範囲でいじるんですよ。遊真夕鶴人さんの望む詳細な希望を遊真夕鶴人さんの魂の容量で決めるので基本的には影響もありませんからね。』



 そういうものなんだ。



『それと、必要事項なのでもう一つのパターンも説明しますね。』



 もう一つ?



『はい、ここ最近では異世界に転生を希望される方が多いのです。ここではあくまでも次元ですが。まあ、異世界と言えば異世界ですね。』



 ほほう。まあ、ファンタジーの王道だもんな。正直俺も興味あります。



『いくつかの次元が受け入れを許可しているので、それらの世界に関し説明をさせていただきますね。受け入れを許可している次元の数は七、第二次元、第七次元、第二十八次元、第三十三次元、第三十八次元、第五十六次元、第七十四次元。』



 結構少ないんですね。受け入れしてるとこ



『先程も述べたように、基本は干渉しないので。ただ、この七つの次元は例外でして、魂の損耗が激しいのです。』



 損耗?



『はい、転生には、神の力に加え魂のエネルギーが本の少しが必要で、魂は次第に摩耗していくのです。で、この七つの次元は、過酷な環境や死生観、あるいは戦闘が常の日常、巨悪との戦いなど、様々な理由で輪廻の速度がかなり早いのです。』



 へぇ、なるほど、いろいろあるわけね。でも、そんなところに行って、俺たち大丈夫なわけ?特典があるの?



『もちろん、特典はあります。ただ、他の次元に移るため、必ずしも英雄や勇者のようになれるわけではございませんし、何より、それぞれの次元の管理者も度が過ぎたものは受け入れを拒否しているので。』



 あー、まあ、よそから来たのがいきなり魔王倒したりしても冷めるだけだもんね。



『ちょっと違いますけど、まあ、そのような認識でも構いません。』



 いいんだ、結構適当に言っちゃったけど……



『実際、元からその世界に生きるものからすれば、知ってる知らないを抜きにして決して面白い話ではないですからね。まあそれでも多少は優遇されますが。』



 なるほどねー。ちなみに俺だとどれ位優遇されるの?



『そうですね。せいぜいスキルや身体能力に補正があるくらいです、かね?あ、幸運の値がそこそこ高いですね。他には……そうですね、魔剣クラスの装備であれば初期装備で与えることもできますね。ただまあ、平均より少し上程度の特典となってしまうでしょう。』



 ふむ……それはいいのか悪いのか……



『他のお方で、別次元での転生を希望された方の中ではそこそこのほうかと。お一人だけずば抜けた実力者がいらっしゃいましたが……』



 ほう?ちなみにどんな特典が?



『言ってしまえば神剣クラスの剣を装備することが可能かと。』



 バケモノじゃん。



『まあ、相当な魂容量をお持ちですね。聖人に連なる系譜なのかも知れませんね。』



 そういう血族みたいなのもあるんだ……



 あ、気になったんだけど、魔剣装備できたとして、俺って剣術とかできるようになるの?



『剣術ですか?そうですね、転生後の次元で修業を積んだり、対応するスキルや技能を身につければ問題ないかと。』



 それってすっごく強くなれたりは?



『努力次第かと』



 ふむ……剣かぁ……俺絶対修行とか無理だよ。あ、じゃあ、特典を魔剣と、それを扱うためのスキルにしたらどう?



『出来なくはないですが、それ以外がかなり制限される可能性がありますよ?』



 む、そうなんだ



『と言いますか、その様子ですと、他の皆さんが希望されたような世界観を持つ次元がよろしいのでしょうか?』



 え?あ、次元の説明聞くの忘れてた。でも、まあ、そうかな?剣と魔法のファンタジー!そういう世界がいいね。魔物とか倒したりする冒険者!憧れるよね!



『でしたら第五十六次元、魔物や魔獣、悪魔などが存在し、冒険者、魔法使い、傭兵などが職業として存在するこの次元がオススメですね。』



 おおおお、そうそれ!そういう世界!



『では、今回の被害を受けた三十一名全員の転生先が決まりました。あとは特典を決めるだけです。と言っても、あとは遊真夕鶴人さんだけですが。』



 あ、それはごめんなさい、お手数かけます。



『いえ、こちらに非があるのですから、どうか謝らないでください。とりあえずそちらの次元での転生を希望される十五名を先にお送り致します。それまでの間に特典についてお考えください。こちらが遊真夕鶴人さんが受け取れる特典です。戻ってきても決まっていないようでしたら残りのお方を先にお送りさせていただく場合が御座いますが宜しいですか?』



 まあ、俺のために縛り付けちゃうのもね。問題ないですよ。



『ではそのように。それでは少し席を外します……』



 おぉ、消えちゃった。



 さて、手渡されたのは分厚い冊子だ。見開き一ページで一つの特典について説明がされてる。



 うーん、多いね。予想以上に多い。これで平均よりちょっと上なんでしょ?一番いいヤツってどんなだよ。これ辞典くらいは普通にあるよ。



 とにかく見てみる。お、なんか検索機能がついてる。変なとこでハイテクだなぁ。



 とりあえず、剣は無しかな。使える気しないしスキル?とかがもったいない。できるだけ多くとるか、一点集中がいい。



 正直なところ、目的もなんもない。ただ、ファンタジーな世界を楽しみたい!それだけ。



 いっそ内政チートみたいなもの目指す……?いや、無理だな。そんな知識も実力もない。



 ただの本好きな美大生にそんなことが出来るかっての。



 っとと、特典特典



 お、容量との計算もやってくれるんだ。



 うーん、魔法、魔法とろう!いっそもう厨二全開な感じで!



 …………………………………………………………………………



 …………………………………………………………



 ……………………………………



『それで、まだ決まってないのですね?』



 はい……面目ないです。



『まあ、いつまでも考えていただくのは問題ありませんが……あまり時間がかかりすぎるとわたくしの業務にも差し支えますし……』



 うぅ、すいません……でもどうしても、取ろうとしたスキルが容量の関係上取れないんですよね。



『ふむ……どれを選んだのか伺っても?あ、それよりも先に残りの方を先に送ってきますね。』



 あ、いってらっしゃいです



 ………………



 ……



『それで、どのスキルやアイテムですか?』



 えっと、《魔装・闇》《魔力強化》《魔力操作》《魔力回復強化》《血肉化》《捕食》《生命力回復強化》《行動速度上昇》《危機察知》《隠密行動》《体術》《格闘術》《気功術》《跳躍》《軽業》《器用値強化》《敏捷値強化》《投擲》《収納庫》《身体強化》《日常魔法》《異世界言語》《異世界記述》



 一応こんな所かな?



『……取りすぎですよね……?あ、あと、異世界言語系はサービス内容に入ってるので入れなくても大丈夫です。』



 うむ!……あ、そうなの?じゃあその分なんか追加しよう……



『うむ!じゃないです!それに追加なんて出来ません!遊真夕鶴人さん、後はあなただけなんですよ!それなのに、容量を大幅にオーバーして悩むなんて……!』



 あ、これに加えてポーションとかも欲しいなって



『容量をオーバーしていると言ってるじゃないですか!』



 あ、あはは……ごめんなさい……



『まったく……いいですか、《魔装》《血肉化》《捕食》《気功術》《収納庫》、これが特に容量を使います。それは理解していますか?』



 はい……



『続いて《魔力》関連のものが高く、次に《体術》《格闘術》です。そして、挙げたものの中から《魔装》《血肉化》《気功術》《魔力》関連、《体術》《格闘術》、これらを抜いて許容範囲内なんです。』



 うわ、俺が欲しいやつほぼ全部ないじゃん。



『それがあなたの容量なんです。』



 えー……うーん。容量って、増やせないの?



『え、容量を、ですか?』



 うん、なんか、要らないものを代償にしたりしてさ。右腕を差し出して隻腕になる代わりに、とか。



『なるほど……そういう事ならば……ゴースト系のモンスターなど、いかがでしょう?』



 え、なんで急にモンスター?



『正確には肉体を代償に、魔法に特化させるのです。最も、その場合魂だけでの行動が必然となり、扱いとしてはゴーストなどの死霊系モンスターとなってしまいますが。』



 モンスター、うーん、モンスター扱いかぁ…………



 あ



『どうかなさいましたか?』



 そうだよ、ゴースト系、いいじゃん



『ほう?』



 えっと、魂だけの状態で、人間と接触したらどうなる?



『え、討伐されたり……でしょうか?』




 あー、じゃなくて……え、こわ……いや、そうじゃなくって、こう、こっちでいう霊障だったり、ポルターガイストとかみたいなやつだったり、憑依だったりできる?



『ああ、はい、できますよ。自分より格が低い相手、同格の相手に取り憑く、なんてのはそこそこありますね。』



 それでさ、憑依能力に特化したらさ、強いひととかに乗り移ってその体俺の物にできたりしないかな?



『……な、なんと恐ろしいことを……で、ですがまあ、不可能ではないですね……』



 じゃあ、こういう能力ってどう?憑依して、一定時間が経って、別のいい肉体を見つけたとする。で、今もってる体を捨てて、その新しいターゲットに取り憑く!こんな感じで宿主を変えていくの。もちろん魂はできるだけ保護するし、基本は悪人だけにするから。ね?どう?



『ふむ……なら、こういうのはどうでしょう?いくつかの制限を与えた上で、対象に憑依し、精神を抑え、肉体を乗っ取る、というのは。制限はそうですね……では。こうしましょう。一、最も最初に取り付いたもの、その単一の種族、存在にのみ取り憑くことができる。二、宿主が死亡、あるいは肉体が破損、崩壊した場合、強制的に憑依状態となる。三、一定期間内に次の肉体に宿らなかった場合、パラメーターやスキルのレベルが一定時間ごとに減少する。四、肉体の持つスキルは憑依状態ではいくつか使えない、あるいは制限がかかる。』



 ふむ。一はつまり、人に憑依した場合、犬や猫には憑依できず、人にしか憑依できないと。犬ならずっと犬、猫ならずっと猫、と。



『そうですね。ちなみに、武器などの物品にとりついた場合は、そのカテゴリーの道具類で固定されます。』



 まあ、人に取り憑ければどうにかなるし、まあ、いいかな。



『では二つ目はどうです?』



 これはしょうがないでしょ。憑依先が死んじゃったら、その体を使えないってことだからね。ゾンビとかになりたいわけじゃないし、これは当然な制限でしょ。



『三つ目も大丈夫ですか?』



 うん、これも問題なし。結局のところ、憑依する先がないと弱体化していく、ってことでしょ?まあ、結構強力な能力になるわけだしな。これ認めてもらえるならその制限は受けないとだよね。



『じゃあ最後の制限はどうですか?』



 これもまあしょうがないかな。でも、憑依状態……って、魂だよね?その時に、俺が個人で習得したスキルなんかはそのまま使えるのかしら?



『一応、肉体が習得したスキルでもあるので、経験値のいくらかは肉体の方に行きますが……魂だけの状態で、物理的な能力は基本使えませんよ?魔法などは別ですが。』



 ふむ、まあ、勝手に体借りるわけだし、それくらいはある意味恩返しってことで。憑依状態だと物理的な行動はほとんどできないのはある意味当然だし、気にならないかな。



『では、この方向でいいですか?』



 うん、魂だけの存在になるぜ!あ、もちろん、さっき言ってたスキルは取りたいけど。あーでも、いくつかは魂状態じゃ使えないし……


 よし!《魔装・闇》《血肉化》《魔力操作》《魔力強化》《魔力回復上昇》《危機察知》《隠密行動》を《隠蔽》にして……んー、あと何が取れますか?



『そうですね……《魔装・闇》《魔力強化》《魔力操作》《魔力回復強化》《血肉化》《生命力回復強化》《危機察知》《隠蔽》《体術》《器用値強化》《敏捷値強化》《投擲》《日常魔法》、でしょうか?ここに《特殊憑依》《憑依解除》が加わります。それと、霊体時に怨霊化、輪廻に帰る、といったのを防ぐ【転生神の加護】を加えたものが遊真夕鶴人さんの特典になるかと。』



 ふむ……敏捷値と器用値を捨てたら、体術系って復帰できる?



『《格闘技》と《跳躍》か《気功術》のどちらか、ですかね。』



 それじゃあ……気功術って、あとからも習得できる?



『基本的に、魂を持つものはスキルを後天的に習得できますよ。』



 んー……それじゃあとりあえず、《格闘術》《跳躍》にして。



『わかりました。では、改めて特典の方の確認をします。

 スキルが

《魔装・闇》《魔力強化》《魔力操作》《魔力回復強化》《血肉化》《生命力回復強化》《危機察知》《隠蔽》《体術》《格闘技》《跳躍》《投擲》《日常魔法》

 固有スキルが

《特殊憑依》《憑依解除》

 加護が

【転生神の加護】

 以上が特典となります。』



 うん、あってます……って、あ、重要なこと忘れてた!



『なんでしょうか?』



 スキルがあるってことは、ステータスあるよね?それ見るための鑑定とかあるの!?



『ご心配には及びません。《異世界言語》《異世界記述》《異世界常識》《状態確認》この四つはサービス内容ですのでご安心を。ただし、自分以外のパラメーターを知りたい場合などは《鑑定》《識別》と言ったスキルが別途必要となります。そちらはご自身で習得をお願いします。』



 わかりました。あ、そうだ、代償に関してなんだけど



『……まだ何かあるのですか?』



 こう、記憶とか、名前とか、そういうのも代償にならないかなーって



『ふむ、出来なくはないですが、かなり厳しいですね。特に記憶はまずいかと。魂だけの存在になってしまうところに記憶が無い。詰まるところ自我のない亡霊みたいなものになる可能性が高いですね。名前に関しては、まあ、そうですね。遊真夕鶴人さんがいた次元で、遊真夕鶴人がいた、という認識が消えてしまいますが、それでも良い、というのであれば、多少の補填にはなるかと。』



 想像以上に重要なポイントなのね……うーん、なら、いいや。このままでいいよ。鑑定とか欲しかったけど。



『あ、鑑定とるには記憶と名前じゃ足りないのでダメですね。』



 あ、まじ?じゃあもういいや。いや、あれだ、ステータス。ステータスポイント振りたい。



『ステータスポイントに関しましても、サービス内容に含まれていいますのでご安心を。全員一律で100となっております。……………………………………………………では、ようやく決まりました。遊真夕鶴人さん、この度は本当に、申し訳ありませんでした。これからのあなたの新たなる人生……霊生?をお楽しみください。』



 あ、ちょ……ああもう、はい!ありがとうございました!





 返事をしたと同時に




 視界が強い光に潰され




 そんな中で、一瞬だけ微笑んでくれたような姿を見て




 そこで意識が途切れた。

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