第7話 本を読む、ただひたすらに

一限目が終わり二限目の数学の授業中


先生「であるからして……」

蓮「パラ……パラ」

先生「はいここの問題は……みない顔がいるなえーと」

蓮「パラ……パラ」

先生「八九鬼 蓮くんどうかなこの問題……」

蓮「パラ……パラ」

蓮は集中して授業に取り組むのではなく、本を読んでいる様子であり、先生の声も届いていない。


白「「蓮……蓮名指しされてるよ数式とかないと」」

暮羅須「あの……蓮くん?」

頭の中で白、隣の女子が声をかけてくれるが彼の耳には届かない

蓮「…………」

先生「蓮くん?教科書を縦に持って熱心なのはいいができるのか?できないのかくらいは答えて欲しい」

蓮「……」

先生「うん?……」

数学の教科書を持ち、そちらに集中して何も答えないことを不審に思い彼に近づこうとする先生。


軍曹「heh hehmrスウシキジュンバンダトコンドハAギョウカラデスヨ」

すると先生の左から外国人のカタコトが聞こえ先生の意識を逸らした。


先生「あぁ、リチャードくんあ行からと言いたいのかな?」

先生「でも今は蓮くんの実力も知りたいんだよだから蓮くんから」

課長「カチカチャ先生彼は今日初登校で緊張しているのとああやって追いつこうと教科書を読み込んでるんです」

すると今度は右側から声がし眼鏡の音とともにとてもか弱そうな無敵の言葉が先生の意識を逸らす。


先生「無敵くん……そうだねシャイな子なのかな?」

先生「じゃあ無敵くん答えてくれ」

他に刺す人を探すのは必然…眼鏡を(偏見)かけており勉強ができそうな彼に答えてもらおうと名指しする。


課長「カチャカチャ……はいっ先生っもちろん――わかりません!」


先生の期待とは裏腹に……そんな答えが返ってきた……この子は1ヶ月授業出てたよなと思いつつ。この余り難しくなく…教科書の問題を少しいじっただけの式に……

先生「はい?どこら辺からかな?この公式に当てはめて計算を……」

課長「先生?僕見た目通り体育会系なんです」

その言葉に彼の容姿を見るが骨と皮しかなさそうな手足、こけたほほ…頭部は…私と同じくらい円形脱毛症が進行してる……。

先生「うーん?どこら辺かな?全くそうは見えないんだけど」

そう言いつつ30代後半で進行した進撃の円形脱毛症の辛さはわかる……だけど彼はまだ15歳じゃないか……そう考えると彼のこれからの頭皮は……少し涙ぐみながら

先生「授業進まないしじゃあ……リチャードくん」

先ほどカタコトだけど熱弁してくれた先程とは打って変わり日本人離れした容姿の彼に質問すると……


軍曹「I don't know at all」 


(訳:全くわからない)


先生「うん……なんで都合悪い時英語?オールの発音いいのが妙に腹立たしいよ先生は」

すると今度は中央の席から手を上げるとともに元気な声が聞こえる。


真佑「先生!ここは俺が答えますよっ」

先生「おおっ真佑くんありがとうね」

「トントントントンっ」

先生「うん見事な答えだねっありがとうじゃあ次は……」

彼は問題なく問題を説き席に戻る……やっと授業が進むと黒板に戻り授業が再開する。


蓮「パラ……パラ」

暮羅須「ちょっと?ヤバいよ?しまいなって」

暮羅須「聞いてないし……」

隣の女子がシャーペンで横腹を突きながら注意するが彼の見惚れるような横顔は教科書に隠されたラノベから視点をハ外さない……。

熱中「うん良くないねこれは……」

それを窓側の席から見ていた1人の熱い男が見ていた。

熱中「蓮くん!授業中にそれは良くない!」

先生「どうしたんだい?熱中くん」

突然立ち上がり誰かに注意する赤い髪の男の子の目線の先を見ると1ヶ月遅れできた生徒に視点が向いている。

先生「あれ……授業中に何を……」

それを気にしないことを不思議に思い彼へと足を向ける、軍曹は胸元で心臓を捧げており、課長は心なしか眼鏡が曇っている。

「パラ……パラ」

熱中「僕も一緒に謝るから先生に謝ろう蓮くん」

熱中も彼に近づき教科書を取り上げる。

蓮「あ……」

蓮は目の前のバリケードが取られ熱中に視線を向けようとすると違う声が斜め前から聞こえてくる。


先生「私の授業は聞くに値しないと言うのかな?蓮くん」

先生のその問いに……授業……授業とは……

蓮「……?授業とはなんでしょう先生」

先生「?」

蓮「授業とはなんでしょう……」


俯きながら先生に聞き返す。


先生「うん?目的を持って勉強すること、先生と教材を持って君たち生徒に学習してもらうことだよ」


とても至極真っ当な答えが返ってくる。


蓮「とてもいい答えです流石数学の先生……」

数学の模範的な答えを告げる先生……。

先生と教材と生徒……それは、それは……


蓮「でも、私はこの!教材を持って!作者の心に触れてキャラ達に学び感動と熱いバトルを感じ共有し生き様を学んでいるんです!」


先生「屁理屈にもなってないし他の生徒に迷惑でしょ?それに今やることじゃない」

蓮「謝りませんよ、いつ読むか……今しかないんです熱い展開なんです今は!」

至極当たり前な先生と、頭がおかしい生徒のやりとりを見ていた熱中は……


熱中「熱い……そうか蓮くん君は目指すことに対して全力なんだね!」

熱いという言葉に反応していた……。


熱中「先生彼を止めないでやって下さい」

先生「それは授業中だしダメだよ」

熱中「全力で反対する!熱い心を失うのは死んでるのと同じ!彼は彼の授業をしてるんです」


先生「うん……本当にどうかしてるよ君たち」

この子だけ変だと思ったが、注意してきた子が全力で今度は反対してきてこの子も変な子だと認識する先生。


先生「はぁでもこれは没収するよ学校に必要ないものは……」

蓮の手から禁断シリーズのラノベが取り上げられそうになった時どこかから風を切る音と共に先生の手に何かが命中した。


先生「イテっ誰だいこの消しゴムの弾丸を先生に……」

軍曹「YESrail gun」

小さい英語の発音とともに軍曹の声が聞こえる……軍曹お前……やはり仲間思いだよ……。


先生「あー!君!イテ誰だい!消しゴム先生に飛ばしてくるの」

俺は本を抱きしめ廊下へと走る。途中止めようとした先生のうなじと、荒廃した頭皮に2発の消しゴム弾が命中し気がそられる。


蓮「先生!1時間ほどトイレに行ってきます……」

先生「ちょっとはぁ……足速いななんなんだあの子は後で職員室の議題に出さないと、というかそこまでなのかい……」

 

先生「で!誰だい先生に消しゴム飛ばした人!痛いんですけど」


軍曹「O o…It's your pain or my painor somebody's pain」

軍曹は誰にも聞こえない声で目を瞑り首を振りながら呟く……。


(訳:それは君の痛みかもしれない 僕の痛みかもしれない 誰かの痛みかもしれない) 


月姫「蓮のバカ……本当にどうしちゃったの?」

月姫は……あんなことする人じゃなかったのにとトイレへと向かう初恋の人を見つめていた。

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