第6話 私の初恋 月姫の思い出
私を最初にツッキーと呼んだのは彼だった
学童野球に入ったのも一緒、小学校は学校が近い所を通うから当たり前かも知れないけど、歩いて15分ぐらいのご近所で、お父さんに買ってもらったグローブを馴染ませるために公園でキャッチボールをしている幼い記憶にも家に初めて呼んだのも呼ばれたのも彼が最初だった。
5年生の時監督は楽しむことを大切にする人でキャプテンは投票で決めることになった
女をキャプテンにしたら面白いという理由で私はキャプテンになった、副キャプテンは監督が決めるとのことで選ばれたのは蓮だった彼は5年生ながらレギュラーで1番のエースピッチャーとして選ばれてその年、関東大会へと6年生の先輩達を導いていた……
実績なら彼がキャプテンが適任だったが月姫で良かったと彼は私に投票したことを教えてくれた……
監督に後で聞いたら一票の僅差で選ばれたとのことで私は尊敬する彼に選ばれた気持ちで嬉しかった。私たち最後の年の野球は蓮が小学生ながら110キロにまで伸びていた球速のお陰で関東大会準優勝、全国大会負けても大会ベスト16位のところまで来ていた。
彼と部屋は違うけどお泊まりしたり、色んな県に行ったり、抽選会で緊張する私の手を握り付き添ってくれたり……彼の横顔を見てるとドキドキが止まらなかった。
もうその時には恋に落ちてたと思う……踏み込めなかったのは周りにからかわれるのが恥ずかしく結局……気持ちは伝えられなかった。
全国大会……私は7番彼は8番、真佑くんは4番の配置で私たち3人が打率は高く、何故私と蓮が後半の打席かと言うと意表をつくためと監督は言っていた。同じチームからは裏の3番4番と呼ばれていた。
流石に今までも危ない時は多かったけど全国16……お互い0対0で7回裏決まらなければ延長。
1アウト、一塁、打席は私だった……全国大会の緊張とそのレベルの違いから私の打率は3割を切っており、私はそのピンチにも奮闘したが三振だった、
私の打席で唯一良かったのはその時、6番の子が盗塁し2塁に進んだことだった……
打席は蓮、ホームランが学童新聞に乗るほど投げるだけじゃなくて蓮は打つのも強く二刀流だった。
今の試合もツーベース、ヒット、と来ており調子は良かった……彼なら決めてくれるそう思っていた……その時は……
相手チームのピッチャーは蓮に敬遠してきた……小学生でそれはあり得なかった。高校とかプロ野球を見ての知識としてはあったが学童野球で敬遠は今まで見たことがなかった……期待を思わぬ形で裏切られ、監督も子どもに何をさせてるんだと、言っていた。
彼はとぼとぼと一塁に進む、さっきの私の打席を含めて2アウト……9番は見事な三振だった。
次は守備に入るためベンチに戻ると蓮は監督に俺は敬遠しませんから楽しみたいです負けても……と笑顔でマウンドに向かっていた。
彼の他にもう1人ピッチャーはいるが他は変えがおらず、時折球が速かったりコントロールが比較的良い人が最初投げて最後に蓮が抑える形だったが全国ではほぼ蓮が投げていた……
今日だって80球は超えてる、しかも次の打席は相手の4番……まさに接戦だった。
2ストライク3ボール相手も粘り何度もファールになるが確実に蓮の球を掴んでいるのがわかった、でも蓮は相手のピッチャーのように、敬遠は最後までしなかった、最後まで戦うつもりで投げていた……「キーン」
途中ベンチが驚く程のいい音が響いた……。
ライト線上……入るか入らないか……入ったらホームランのような球だった……高くあがったたまに私は祈った……入らないでと……その想いは届いたのかこのままいけばギリギリ入らないかと言うところで……
強い風が吹いた……それは外れてた筈の玉をスタンドに入れた……みんな見るからに力が抜けているのがわかるけど蓮は「ナイバッチ」と相手を褒めていたそのあと5、6、7番と彼は三振を取った……
私たちの打席は1番から……せめて同点……それか勝ち越しを狙いたいところ、4番にはキャッチャーの真佑くんがいる……彼まで回れば疲れたピッチャー相手なら点が取れる可能性が高い……
だけど現実は3者凡退で真佑くんまで回らず……私たちは16位で終わった……
「うぅグスッ私が出てれば……真佑くんにも回っていや満塁に……だってなってたのに」
涙が止まらなかった……彼は優しく私の帽子を取り後ろポケから出したハンカチで私の涙を拭き……「キャプテンのおかげでここまでこれた、泣くなっ誇れよキャプテンっ!相手チーム強くて楽しかったぞ俺は?打たれた奴が何言ってるんだて感じだけどなっ……」
晴れやかな笑顔だった相手チームとも礼が終わった後相手の4番に対して握手し応援の言葉をかけていた……
相手ピッチャーに対しても頑張ってくれと声をかけていた……憎まれ口もなく。勇ましい彼への思いは負けた辛さよりも勝っていた。
帰りの車…お母さんの車で寝ている彼の横顔を見て悪いと思いつつ……同じように寝たふりをして少しきついカーブに差しかかったところで身体を寄せ、こっそり彼の唇に‥‥
私の強く勇ましい英雄に誰も見られていない車内で私のファストキスをあげた……
ファストキスはレモネードの味がした。
「好きだよ蓮」誰にも聞こえない小さな声で呟きながら。
中学校も変わらず彼は野球を続けた、私は選手じゃなくてマネジャーとして入部した。
中学校の野球は正直あまり強くなく監督もいやいや任された経験のない若い先生だった……。
小学校と違い、先輩とのやりとりなど、違いを感じつつ、彼は1年生の最後から大会で投げて結果を出していた……先輩からは憎まれ口が何度か聞かれていたのを覚えている……。
その時私から見ても肩は冷やしてるけど、1年生の彼ばかり投げてオーバーワークだった……真佑も色々言っていたが通らなかった……でも1年の時は何も起きず2年生になった。
それが起こったのは中学生の夏の大会……運も悪くベスト8の所だった……その日炎天下でもう110球は投げていた……相手のチームは打席がとても強く抑えられてるのが奇跡だった。変わらず彼は口元に笑みを零ながら投げていた……その時だった「蓮!」「蓮くんっ」彼は肩を押さえて苦しみ倒れ、病院に運ばれた……熱中症に、オーバーワークが祟り肩を壊していた……
医者からは以前のようには投げられないと言われたらしい……その試合は負けて、先輩達の大会は終わった、残りもあるけど小さい大会だけ……だった。
肩を壊した蓮は以前の鬱憤を晴らすかのように、いじめというには……扱きと言われたら終わりだけど、他の人よりあたりは強く、投げられなくなった彼は夜中まで公園でバットを振り、野球を続けようとしていたが……
ポジション争いで、監督も自分の所為だと陰で私たちの同級生が言ってたのを聞いていたのか色々当たりが強く、できそうなポジション、代打ですら大会には出してもらえず……投げられないならと結局一度もやることはない代走として使う時のために走れと後半は走り込みばかりで……彼は退部届を出し、野球をやめた……
何故やめたのか無神経にその時聞いてしまったがそれだけ私も彼が野球を辞めるのを信じられなかった。
そんな私に彼は‥‥
蓮「もう楽しい野球はなくなったから。打つよりも…投げるのが好きだった……指から放たれてどこまでも伸びる球ミットに入る音、後ろと前には頼れる仲間達……今はそれがないから……」
蓮「ツッキー……お前と真佑とやってた野球が1番楽しかったもう野球に未練はないよ」と
……未練がない人がそんな悲しい顔で楽しかったなんて言わないよ……彼がその場から立ち去り、彼の前では泣かないと元気な私でいるんだと我慢をしていたけど、彼がいない今は溢れる気持ちが瞳から止まらず
私は1人涙を流した……。
野球をやめた彼は坊主から髪が伸びたこと、第二次成長も合わさってその時ですら174センチはあり戯けなさがあるも彼の容姿は完成されていっていた。
そんな彼に私は少し焦りつつも……勇気がです、中学3年になり……私は今度こそ彼に中学を卒業するまでに告白しようと決めていた……
彼の近くにようもなくいたり、ボディタッチも……恥ずかしいけどしたり、苦手な勉強も頑張り、入る高校もたわいない会話から聞き出し、高校も受かった。
本当にわたしは頑張った、過去の自分を褒めてあげたいくらいに。
あとは……告白して
告白が成功したら高校入るまでにいろんな所に行きたいと1人思いを巡らせていた……
だけどそんな時だった、何気なく街中を歩いていると……オレンジがかったロングの髪…見た目は可憐という言葉が相応しい容姿で少し気が強そうだけど……誰が見ても美少女と呼べる人と彼は親しく話していた。
私に向こうは気づかず、聞きたくないのに、会話が聞こえてくる。
陽花「ふーん蓮はそんなこと言うんだ……私のこと大好きなクセにっ次はこっち行こう」
蓮「おい引っ張るなよ陽花」
腕を絡め下の名前で呼び合いまるで恋人のように歩いている姿に、自分は遅かったと人目も憚らず泣きながら家に帰った……。
だけど……このモヤモヤを晴らさないでいいの……ファストキスをあげた相手に対して……自問自答を何度も繰り返し……伝えず終わるのは嫌だと言う思いに1日かけて至った。
ドキドキしながら当たって砕けろ月姫とっ彼に連絡をし次の日に、よく小学生の頃キャッチボールをした思い出の公園に伝えたいことがあると連絡した。
蓮は「いいよっ?用なら電話ですればいいのに……」と連絡が来るが
私は直接伝えたいの……と送る。
「わかった何時?絶対行く」
と返信が来た……。
ドキドキは止まらないけど明日は学校も休み日、彼女さんとの時間もあることも考え……夕方18時に時間を指定した……。
公園は私たちの家から10分ほどのところにある大きなカブトムシの滑り台がある公園。
待ち合わせの日、17時過ぎくらいに街中が停電して携帯も使えなくなる事件はあったが私は待ち合わせの場所にきた……
そこにはまだ誰もいなかった……とりあえずベンチに座りまった……10分30分1時間……19時の門限も過ぎた……でも彼が来るかもと淡い期待をして待った……。ここで帰ったら……全てが終わる気がしたから……。
19時30分を過ぎて流石にお母さんから連絡が来て場所を伝えた……。
お母さんが迎えに来た時にはもう終わったような気がして瞳から雫が溢れた
月姫「お母さん……失恋しちゃったよ……ずっとずーと好きだったのに」
母「………………」
お母さんは隣に寄り添って抱きしめてくれた……。
どれくらい泣いたのだろうか……お母さんは口を開いて私は驚いた……母は私の思いに……思い人についても理解してくれていた。
「ずっと見てたもの……全国大会の帰り…助席に乗ってて車がカーブに入った時……女の子になるあなたを見て……いつ小さい彼が彼氏としてくるか待ってたのよ」
「でも……まだ出会いはあるわ……若いもの」
その後はまた泣き出してしまいつられながら家に帰った……それからして彼は学校にも来なかった学校では…体調不良とそれだけ……結局卒業式にも来なかった。
その時私たち先輩に花を渡してくれる役目をしている後輩の中に彼の……妹さんの姿が見えて、私は声をかけ……始めて真実を知った……
結花「お兄ちゃんあの停電した時から意識戻らないの……今は入院してて」
月姫「…………」
月姫「お見舞いは言ってもいい?……」
結花「もう…もうね……身体も細くてこのまま起きないのかもしれないの……あんなお兄ちゃんになるならうぅ」
泣き出す妹さんの背中を撫でて周りからは卒業を悲しんでいる後輩のように映ったかも知れないが……そんな彼女に対してそれ以上私は言葉は出なかった……
それから少しして入学前に意識が戻ってリハビリしていると妹さんから連絡があった。
ただ……
「様子が変だから合わない方がいい、学校で会うと思うからその時はよろしくねツッキー」と連絡が来た何かあったのでは?と色々勘繰ったが私は入学した後も彼を待った。
そして彼の初登校の日……妹さんから聞き出して待ち伏せする。7時からずっと通るであろう道で彼を待った。すると妹さんが手を振っているのが遠目でもわかる……。そしてその隣には同じ制服の男の子が近づいてくる……。
「お、おはようございます、蓮も久しぶり……」
「て……何その目?」
何故か敬語になってしまい、恥ずかしく伏せていた顔の先に革靴が見えて……やっと彼に会えたお彼の顔を見る…………
………………初恋の彼は何故か、目が逝っていた……それは殆ど白目で、途中途中目の焦点が合わない様子の彼……私は驚きで固まってしまった。話は私のことになり……
結花「何言ってるのっ仲良くしてたじゃんっ小学野球も一緒で、中学でもマネージャーしてた待宵月姫ちゃんだよ?忘れたの?」
「お、おぅ……覚えてないんだなーこれがははは」
結花ちゃんがわかりやすく私と蓮のことを説明してくれたことに対して……そう答える彼……
最初わざと忘れてるのかと……もしかして嫌われた?しつこく彼の周りにいたり……野球のことも無作法に聞いたから?と思っていたが……。
蓮「あぁ、つきめちゃんでいいのかな?思い出せなくてごめんねー」
もう彼がつけてくれたツッキーというあだ名すら呼んでくれず……声調から本当に記憶がないのだとなわかった……わかったがそれがとてもショックだった。私と彼の9年が……何もなかったなんて……。
ショックなことは続き……彼は高校生になるのに中二病を発症し……妹さんが私に連絡したように、以前親しくしていた人に合わせるのをためらい……喋り方も、雰囲気も以前とまるで別人のようで、しかも私を見ると目が逝ってしまう……
終始「そんな…」と心の声が出ていた……。
私の初恋を捧げた彼は確かにそこにいるのに……今やっと会えたのに……この9年間の気持ちを伝えたいのに……
目の前の彼を見ていると……もう以前の彼はいないように感じとても胸が苦しくなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者余談欄
ここまで読んでくださりありがとうございます♪
よければハート等貰えると嬉しいです。
長文を読んで頂きありがとうございました。白が月姫を遠ざける理由は何か、何故他の恋を探すように促しているのか今後のエピソードで追加しようと思いますがとりあえず他のヒロイン達優先にこれからは書いていきます。
オレンジ髪の可憐な容姿の彼女についても今後登場させていきます。
手探りで頑張っていきます。
応援よろしくお願いします。
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