第3話 いつもの朝② 自分とは誰か‥‥
蓮は洗面台にいた。
そこで鏡と向き合う形になり蓮は自分の容姿を観察していた。
所々寝癖は飛んでいるがショートヘアーの青年。二重の青い瞳に左下にある泣き黒子が目に視点を集中させる。身体、顔共に全体的にすらっとしており筋肉は着くところにはついており、細すぎるわけではない、自分で見てもルックスは良いとの自覚はある。
だが不思議と感覚に近い何かであるが、何処か客観的に自分を見てしまう。
まだおぼつかない頭で蛇口から水を出しタオルを準備していると頭の中に声が聞こえてきた。
白「ぷぷぷっ起きるだけで目潰しされるとか蓮は往生際悪いんだからぷぷぷ」
蓮「おいこら白さんよーおもしろくないぞ、こっちは目を負傷したんだからな」
今のやりとりまで無干渉を貫いていた白がさっきのやりとりを思い出し堪えきれなくなったのか笑う。
白「自業自得っ!妹さん、お兄ちゃん想いでいいよねー」
蓮「何がいいんだか……」
白と会話をしながら顔を洗い、歯を磨く。蓮はふと白との会話から、いつから妹は今のようになったのか記憶を遡る、
一つ離れた妹とは途中までは中が良かったのは覚えていた。
けれどそれは蓮が肩を壊し野球をやめてから変わった。
(気持ち悪い近づかないで)
中学生に上がったばかりの妹は思春期もあったと思うが……野球の熱意がなくなり逃げるようにアニメを見続ける連絡を嫌悪していた。
だけど3ヶ月前にそれは変わった……。
蓮は自分でも思うが意識不明になる前よりポンコツになった自覚がある。
蓮自身でも言葉では表現できないが頭が以前のように働かない時があるのだ……。
顕著にそれを感じたのは2ヶ月前…………病室に来た家族たちに対して何故だが遠い記憶の中で八九鬼 蓮が見た記憶の中の人のように感じていた。
蓮は今までどう接していたか思い出せなくなっていた……。
結花「お兄ちゃん……お兄ちゃんぅうう良かったよぉおお」
病室で横になっている蓮の傍でなく妹……、それを遠くから見守る母親。
母「良かったわ蓮目が覚めて……お父さんは仕事でこれないらしくてね」
蓮「…………」
妹と母親に蓮はその時なんて言葉をかけていいかが浮かばなかった。
それどころか以前どう付き合っていたか記憶にはあるが……肝心な所……関わり方だけは何故か思い出せなかった。
誰かを見本にしていたような気もするが……その記憶を思い出せない。
白「心配かけたなとか、言ってあげなよずっとお見舞い来てたよ?」
当たり前のように頭の中で声が聞こえる。白とは先に目が覚めて状況の整理がある程度できた後に話をしていた。
白が獏であること、何故か俺に住み着いたこと、夢の好みや、自分のせいで一部の記憶がないこと……他にも色々と白とは話した。
そのためか、混乱はあったが最初頭に声が聞こえて来た時程の驚きはなかった。
蓮は冷静に白の声は自分以外には聞こえていないことをその時再確認していた。
目線を病室にある床頭台に移す。
そこには週刊少年誌が束になって置いてある。
八九鬼 蓮が毎週買ってた本……。
視線を傍で泣いている少女に目を移す……どうか泣かないでほしい……。
蓮は手を伸ばし頭を撫でる。
蓮はどうしたら良いかポンコツなりに考えていた。そんな時蓮の頭の中でとあるセリフが浮かぶ。
それは頭の中だけでなく、口から言葉として出ていた。
蓮「ダメージがだいぶ蓄積されているようだな...。とりあえず俺の治療魔法を受けてくれ。解放……!!ヒーリングエクスプロージョン!!」
(訳:頭の中で浮かんだセリフ……とりあえず泣かないで)
結花「へぇあ?……」
喋ってる途中で蓮は少し気持ちよくなり後半は声を出しいることに気づき張り切った効果が確かにあった。
涙は止みスットンキョンな声を出す結花。
母「………………」
視線を母親に向ける。
さっき会った時より憐れむようにまた暖かく見守るように優しく見つめてくれる母がそこにいた。
白「ぷー!!ヒーリングエクスプロージョンてなに!なんなのよーふふぷ……ぶっはははは!!」
頭の中では獏のバカみたいな笑い声が響いていた。
蓮「………………」
不思議と蓮に恥ずかしさはなかった。
記憶と一緒に何か大切なものまで失ったのかも知れないが……それよりも蓮は結花が泣き止んでくれたことが嬉しくもあり、沈黙は少し苦しかった。
蓮「私を召喚したのは、貴様か?我を召喚する霊媒は……。言うまでもない……。褒美をくれてやりたいくらいだ」
(訳:心配させたね、今まで育ててくれた母さんもだけど特に結花……お前には迷惑かけた、何か欲しいものとかない?)
結花「お、お兄ちゃんが壊れた……何言ってるか分からないけどとりあえず良かったよぉおおおお」
また泣き出す妹……
母「中二病も乙なものよね」
何かを悟った母……
白「笑殺しにしないでぶふー!顔が整ってるだけに尚更面白いぶふーふはははっ」
さっきより笑い声がうるさい白。
そんなこんなで二次元大好き中二病になってしまった現在の蓮に至る。
結花「お兄ちゃん!髪もセットするんだよ!顔はいいんだから顔は!」
ハッと意識が鏡の前の自分に戻る。
元気な声は妹がいるリビングから聞こえた。きっと言われた通り顔を洗って、歯磨きしかしてないのがバレたのだろう。
蓮「はぁー辛いわ〜」
顔顔連呼される自分……両親の賜物で送りものだからなんか自分を褒められてる気はしないが悪い気もしない。
せめて髪型くらいは頑張るかと、挑戦したが寝癖が悪化しスーパーサイヤ人ヘアーのようになっているがこれ以上悪くなることはないだろうと諦めながらリビングに行く……
そんな蓮を見てリビングでくつろいでいた結花はコーヒーを吹き出しダメ出しをする。
結花「どうやったらそれで出てこようと思うの?ポンコツお兄!」
結局妹にナチュラル系のショートヘアーにセットされた。
結花「冗談は言葉だけにしてよねはぁー」
そんなことを言いつつワックスのついた手を洗いリビングに戻る妹……。
そこは顔だけにじゃないんかーいっ!とツッコミはせず、鏡でセットされた髪を蓮は見る。
妹は多才だなと蓮は感心しつつ視線を下に落とすとワックスが入っていた洗面台の引き出しに眼帯が入った箱を見つけ蓮は装着した。
結花「お兄ちゃん遅いよ?……てなにそれ?」
蓮「俺の目は特殊でな、電磁波や人には見えない感情が見えるからこの眼帯で封印してるんだ」
結花「はぁーなんかツッコミも疲れたよ……それなら両目やらないといけないんじゃないの?」
蓮「……結花は天才か!」
急いで洗面台に戻ろうとする蓮の肩を誰かが掴む。
母「蓮?結花を困らせるのはそれまでよ?」
蓮は結花かと思い振り返るが、ソファーでくつろいでいる妹が一瞬で側に来れるはずもなく、途中聞こえてきた凍てつくような声で掴んでいる相手を蓮は理解したのであった。
振り向いた先には口元には笑みを、目元は優しいが……蓮を映すその瞳の奥は微塵も笑っていない母親がいた。
結花「お母さんっお兄ちゃんがね……」
蓮「はい、グランドマザーいただきます」
あの目は本気でやばいと妹の言葉を遮り蓮は席につく。
母「私は、蓮と結花のお母さんなのそんなたいそれたものじゃないわふふふっ蓮はいい子ね頂きましょう」
蓮「………本当に怖いわ、なんでもないよてあれ?父さんは?」
食卓につきご飯を食べながら……ふと食卓にいない父について尋ねると、母親からすぐに答えが帰ってくる。
母「なよなよぐちぐち言ってたからスーツ着せて仕事行かせたわよ」
ご飯を家族と食べずにとは蓮は言わなかった。
蓮も含めて家では男の立場は弱かった。
母「蓮制服似合ってるじゃないっこれは彼女もすぐできちゃうわね」
朝の食事の席で母親からそんな言葉が聞かれる。
結花「ねー!お兄ちゃん似合ってるよっ本当に黙ってれば完璧っ」
それに続くように妹がパンを食べながら蓮の制服姿を褒めてくる。
蓮(黙ってればは余計だけど……)
制服着ただけで彼女できる。それは蓮は私服のセンスがないことを暗示していた。
お母さん……先週洗濯に出したア○顔Tシャツ帰ってこないんだけど……あれ海外で人気あるってバイト先のリチャードがくれた物だから持ってたら返して……とは口が裂けても言えない蓮であった。
いつもの朝を迎えた。少し違うのは蓮が高校の制服を着てこれから登校することただそれだけ‥‥‥のはずだった。
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作者余談欄
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