第28回ベールセルナ世界大会決勝戦

ベールセルナは全世界の競技人口約10,000人のスポーツである。

第28回ベールセルナ世界大会は、シュピニッチア共和国の首都ニュルツベルグンで行われた。


ベールセルナは2人の選手が向かい合わせになり、『ジュゴダ』という名称の専用の長棒を用いて行われる。

選手は互いにジュゴダを振り回し、先端の『ビンラ』と呼ばれる打突用の部分を、相手選手が両脚に着けた防具『ベルセット』に当てる。

ジュゴダのビンラをベルセットに一度当てるごとに1ポイントが加算され、先に5ポイント先取した方がそのセットの勝者となる。

このセットを4本先取で最大7回繰り返すのが、世界ベールセルナ協会によって取り決められている現在の公式ルールとなっている。


第28回ベールセルナ世界大会の決勝は、シングリ・ナバタリ選手とジューデッサ・ボウロニカ選手の対戦となった。

シングリ・ナバタリ選手はタバラチア王国の出身で、世界大会への出場は今回が初となるルーキー。

一方のジューデッサ・ボウロニカ選手はユーランギニカ連邦の選手であり、世界大会の優勝を過去3度経験している実力者だ。

2人の公式試合は今回が初だった。


決勝1セット目はジューデッサ・ボウロニカ選手の優勢で始まった。

立て続けにボウロニカ選手のジュゴダのビンラが、ナバタリ選手のベルセットに当たり、3点先取。

その後ナバタリ選手も一度打突を決めて返すも、再びボウロニカ選手が2ポイント連続で取り、このセットを勝利した。

さらに続く2セット目もボウロニカ選手が勝利した。

これでセットカウントは0-2。


だが、第3セット目に波乱が起こった。

3セット目もやはりボウロニカ選手が有利だったのだが、ポイントが2-3の時、ボウロニカ選手は『ピールナック』の反則を取られた。

『ピールナック』はベルセット以外の場所に打撃を計3回当ててしまった場合に取られる反則であり、その瞬間に相手選手に2ポイントが入る。

これにより、ポイントは4-3となりナバタリ選手が逆転。

その後1ポイントを取り、第3セットはナバタリ選手の勝利となった。

セットカウント1-2。


第4セットは、ボウロニカ選手が先程のピールナックのミスによって調子を崩したのか、消極的な戦い方が目立った。

ナバタリ選手は対照的に積極的に攻め立て、ポイントカウントは4-2。

さらに、ボウロニカ選手がナバタリ選手の攻撃に圧され、試合フィールドから場外に出てしまう反則『ノッキンアンゲイト』を2度繰り返し、ペナルティとして1ポイントがナバタリ選手に入る。

これが決め手になり、このセットもナバタリ選手が制した。


だが、第5セットはボウロニカ選手が調子を取り戻した。

ナバタリ選手のジュゴダを捌きながら、的確にベルセットに打撃を当てていく。

最終的にはポイントカウント1-5の大差で、このセットをボウロニカ選手が取った。

これでセットカウントは2-3、ボウロニカ選手の優勝にリーチがかかる。


運命の第6セット。

両選手ともに果敢に攻め、互いに相手に圧されることでノッキンアンゲイトの反則も2度ずつ取られた。

ポイントカウントが3-3。

後がないナバタリ選手はジュゴダを激しく振り続けたが、それが裏目に出たか、ベルセットでない部分に3度当て、ピールナックの反則を取られた。

一度に2失点したことで、ポイントカウントは3-5。

ボウロニカ選手の優勝が決まった。


ピールナックが決め手となって優勝が決まったのは、第2回世界大会以来のこと。

第28回ベールセルナ世界大会決勝戦は、歴史に残る名勝負として、ベールセルナファンの間で語り継がれている。




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