横文字と造語の多い物語

空殻

カルマニアン朝ペネシュッピ暦のクーデター

カルマニアン朝ペネシュッピ暦七年のこと。

コルスティカ・シュビライ・カルマニアンⅢ世の統治下において、叔父であるフンメイ・ボドルスキ・ムンメライはクーデターを起こした。


クーデターの原因は表向きには、コルスティカ・シュビライ・カルマニアンⅢ世が、フンメイ・ボドルスキ・ムンメライの息子であるクンダラ・ナホペッテ・ムンメライを、謀反の疑いありとして処刑したことへの反抗であるとされている。

(つまり、クンダラ・ナホペッテ・ムンメライはコルスティカ・シュビライ・カルマニアンⅢ世のいとこにあたる)

しかし、実際は別の原因があるという。


その年のナウタナの祭りにおいて、祭事のフィナーレとして行われる『キュビリダナの舞』が中止されるという事件があった。

『キュビリダナの舞』はエウコス山に棲むとされる雷神キジリガバに捧げる舞であり、ナウタナの祭りにおける最も重要な儀式である。

しかし、その年の祭りでは、キュビリダナの舞で使用される祭儀用の冠が紛失し、急遽メインイベントであるはずのキュビリダナの舞は中止となった。

問題は、冠が紛失した件について語られている噂である。

冠には大きなトパーズとダイヤモンドがそれぞれ2つずつついていたとされている。一方、同時期にコルスティカ・シュビライ・カルマニアンⅢ世が職人に作らせたとされているブレスレットとアンクレットには、それぞれ大きなトパーズとダイヤモンドがついていたという。

そのため、カルマニアンⅢ世は、キュビリダナの舞の冠を秘密裏に壊し、その宝石を自らのアクセサリーに利用したのではないかと噂されている。

この疑惑が真実だと仮定した場合、先祖代々雷神キジリガバを信仰してきたフンメイ・ボドルスキ・ムンメライはこの暴挙を許さず、そのためにクーデターを起こしたのではないかというのだ。


さて、経緯はともかくとして、フンメイ・ボドルスキ・ムンメライが起こしたクーデーターは王国全土を巻き込んで、国を大きく二分した。

各地の権力者と貴族を巻き込み、国の各地で小規模な戦が頻発した。

しかし、カルマニアンⅢ世の王国軍の最高指揮官ゲルニッツァ・ピューバラ将軍が戦死したことで、戦局は大きく傾く。

そして、最終局面では、ムンメライ率いる反乱軍が宮廷を取り囲み、籠城戦が行われた。

七日七晩、両軍は膠着状態を維持した。

しかし、七日目の晩、宮廷に雷が落ち、火災が発生した。

宮廷はほとんど全焼し、焼け跡からはコルスティカ・シュビライ・カルマニアンⅢ世の遺体も見つかったという。

こうして、カルマニアン朝ペネシュッピ暦のクーデターは幕を閉じた。

伝説では、この時落ちた雷こそが雷神キジリガバによる天罰であるとされ、その日エウコス山はキジリガバの威光によって煌々と輝いたという。

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