第13話 地獄の淵
7月9日 7:30
数日前にアルジェリア空軍・エジプト空軍がカメルーンの当該地域を攻撃、昨日はCB-L防衛隊であるトランクス大隊が到着後沿岸部をできる限り要塞化し、そこでスプリント島から上陸してくる敵兵士をアサルトライフルで相手したり、前線でヘイトを買い弾受けをするMBT。その後方700mでは禿げた森が有り、狙撃兵がスプリント島から向かってくる上陸艇に乗り込んでいる兵士の頭を次々と容赦なく殺していった。
前線の上空では別のCB-L防衛隊であるヘリコプターを運用しているジャガー中隊が味方地上部隊のけが人を後方の安全な場所まで連れていき軍医に応急手当をさせ、敵艦艇から離陸したと思われる対地武装をしたヘリコプターと空中戦を繰り広げたり、直接スプリント島に近づき対地ロケットで敵地上部隊を制圧したり...
いたるところで自分たちの役割を存分に発揮している。
そして彼女らは現在リベリアに停泊している大型空母セイニャールに乗艦していた。
空母から眺める太陽は空とは別の特別感があるように感じた。
甲板上では機体の武装を取り換えていたり、整備をしていたりと一人一人自分の役割をこなしていた。
彼女らの機体も甲板にあった。
ちょうどキャノピーを拭いているところのようだ。
武装はラニーニャが指示した通りとなっている。
タリバリン4とタリバリン6であるディビレットとグスコーニュに任せるため彼らの機体のパイロンには250kg爆弾が6発と、もし敵機が割り込んできた時用の30G熱線誘導式近距離空対空ミサイルのAIM-211Jを2発装備していた。
そして敵航空機と戦闘するラニーニャらは38Gレーダー誘導式中距離空対空ミサイルのAIM-504Aを2発に30G熱線誘導式近距離空対空ミサイルのAIM-211Jを4発装備している。
8:00
甲板に上がってから30分経過すると上からの出撃命令が下りたため、急いで出撃準備を進めた。
甲板上で仕事をするカタパルトオフィサーのハンドシグナルに従って機体をカタパルトまで徐行させ、止まれというハンドシグナルと共に機体を停止させた。
前脚が装置に装着されたことが確認されると、機体後方に先ほどまで平らだった甲板から長方形のジェットブラストディフレクターが上方に展開され始めた。
コックピットからは右下で黄色のベストを着たレインボーギャングのカタパルトオフィサー「シューター」がハンドサインで自機周囲の安全確認を呼び掛けていたようだった。
そろそろ準備ができたようなのでこちらも射出に備える。
シューターが私にハンドシグナルで最大出力にするようにと促したのでスロットルレバーを最大まで押し込んでアフターバーナーを出力した。
高速でエンジンノズルから排出されるジェット排気は超高温でジェットブラストディフレクターに直撃する。
機体は少しだけ前のめりな状態となって発艦の時を待つ。
シューターは私に準備完了の合図としてハンドサインをした。
こちらも同じハンドサインで返答するとシューターはCAT担当に発艦指示を促し、CAT担当のカウントに合わせて、あと一秒のところでシューターが射出ポーズをとった。
次の瞬間、機体と共に私の体は前へと押し出され、急加速によってコックピット内のシートに思い切り押し付けられる。
キャノピーの内側につけられた取っ手を右手でしっかり掴んで容赦なく襲い掛かるGに抵抗する。
艦首まで加速した機体はカタパルトから離れると一度機体が少し高度を落とすがすぐに揚力を確保し、ランディングギアを格納した。
空母の周囲で中隊員全機が揃うと私は仲間を引き連れてそのままカメルーンへと向かい始めた。
9:20
発艦してから約一時間。
現在ギニア湾上空5000mを時速1300km、マッハ1.05で飛行していると薄っすらとスプリント島が見えてきた。
「タリバリン4、6は対地戦闘に集中せよ。それ以外のものは私に着いてこい。エイを狩りに行くぞ!」
全員がウィルコと返答し、タリバリン4と6は徐々に高度を落としながらスプリント島南東地域へと向かった。
エイ狩りに向かったラニーニャ少尉達5機はスプリント島上空を素通りし、CB-Lの手前まで飛行した。
タリバリン4、6は先に敵の地上部隊に爆弾と機銃の雨を降らせていた。
しかし予想外にも敵軽巡洋艦6隻中4隻がスプリント島に近い場所で停止していたため、1度攻撃を仕掛けるにしてもリスクがかなり大きかった。
何故なら軽巡洋艦級の殆どが防空仕様だったからだ。
敵対空砲火の弾幕の量が多く、何度か攻撃を中止せざるを得なかったのだ。
「タリバリン6、1度私と空母に戻るぞ」
そういったのはタリバリン4のディビィレットだった。
「なんで引き返すんッスか?」
グスコーニュの質問に呆れてしまったディビィレットは"はぁ…"とため息を出すが、続けて質問に答えた。
「あのまま何度も攻撃に失敗するくらいなら装備を変えてきた方が速い。あの弾幕の中に飛び込むのはお前でも厳しいものがある。例え1度くぐりぬけたとしても次も成功するとは限らないからな。まだ始まったばかりだ、ここでリスクを取るのは早すぎるってもんだ。」
「アレが噂の"地獄の淵"って奴ッスね。危険な時に選択をミスると生きて帰って来れない…。今回もディビィレットに助けられちまったな!」
グスコーニュは陽気だ。
だからこそどんな時でも明るくなれるし、希望が持てる。
どんな絶望にも光を刺せそうな、そんな感じがする。
2機は装備を換装するために空母が停泊するリベリアへと進路を変え、無駄に燃料を消費しないように飛行を続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます